※12日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
双方の死者は計2300人に
イスラム組織ハマスが、今月7日にイスラエル側に大規模な攻撃を開始して以降、攻撃の応酬が続いていて、死者の数は、イスラエル側で1200人、ガザ地区で1100人と、双方で2300人にのぼっています。
イスラエルは、ハマスへの報復作戦としてガザ地区への攻撃を続けていて、11日には、ハマスの軍事拠点だとして地元の大学などを空爆したり、長距離ミサイルなどで破壊したりしたとする映像を公開しました。
ガザ地区では、報復作戦によって市民の犠牲が増え続けていて、パレスチナ暫定自治政府は、人体に大やけどを負わせることから非人道的だと国際的に批判されている「白リン弾」が使用されていると主張しています。
またパレスチナのメディアは、イスラエル側がガザ地区を封鎖した影響で、地区で唯一の発電所が燃料不足に陥り、操業ができなくなっていると伝えています。
WHOは、地区にある病院でも数日中に燃料がなくなる可能性があるとして、必要な物資などを届けるための人道回廊を設けるべきだと訴えていて、人道的な危機が広がることへの懸念が高まっています。
イスラエル“通常の内閣と別に「戦争管理内閣」立ち上げる”発表
イスラエルのネタニヤフ首相は、11日、野党党首であるガンツ前国防相と会談し、挙国一致に向けた緊急政府を樹立することで合意したと発表しました。
発表によりますと、ネタニヤフ首相とガンツ前国防相、それに現在のガラント国防相の3人が参加し、通常の内閣とは別に、イスラム組織ハマスとの戦闘の対応にあたる「戦争管理内閣」を立ち上げるとしています。またハマスとの戦闘が続いている間は戦闘と無関係の法案の審議は進めないとしています。
極右政党や宗教政党との連立政権を率いるネタニヤフ首相は、司法制度改革などの内政をめぐって対立していた野党とも連携を図って体制を盤石とし、事態の対応にあたる狙いがあるとみられます。
ガザ地区のパレスチナ赤新月社 スタッフ4人が救急活動中に死亡
IFRC=国際赤十字・赤新月社連盟は11日、ガザ地区にあるパレスチナ赤新月社のスタッフ4人が救急活動中に死亡したと発表しました。
発表によりますと、亡くなった4人は11日ガザ地区で救急活動にあたっているさなか、救急車両が攻撃を受けたということです。イスラエルの空爆によるものかどうかは明らかにしていません。また7日には、IFRCに加盟するイスラエルの救急団体のスタッフ1人も救急車両を運転中に亡くなったとしています。
IFRCは声明で「国際法に従って、民間人や医療従事者、医療施設は常に尊重され、守られなければならない」と述べ、スタッフが攻撃され死亡したことに衝撃を受けているとしています。
UNRWA ガザ地区で職員やスタッフ11人死亡
パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は、11日、ガザ地区で職員やスタッフ11人が死亡したと発表しました。
発表によりますと、イスラム組織ハマスがイスラエル側に大規模な攻撃を開始した今月7日以降、攻撃の応酬が続く中、ガザ地区でUNRWAの学校の職員や支援スタッフなどあわせて11人が死亡したということです。中には、自宅で家族と一緒に亡くなった人もいるということです。
UNRWAは「国連の職員と民間人は常に守られなければならない。より多くの民間人の命が失われないよう、戦闘の終結を求める」として一刻も早い停戦を呼びかけています。
英ブリティッシュ・エアウェイズ 着陸取りやめ
イスラエルのテルアビブにあるベングリオン空港の当局によりますと、11日、空港に向けて着陸態勢に入っていたイギリスのブリティッシュ・エアウェイズの旅客機が、危険を回避するためパイロットの判断で着陸を取りやめ、出発地のヒースロー空港に引き返しました。
テルアビブ周辺では当時ロケット弾が飛び交い、防空警報が断続的に鳴っていたということで、イギリスのテレビ局・スカイニュースは、空港の敷地内にミサイルを着弾させたというイスラム組織ハマスの主張を伝えています。
この事態を受けブリティッシュ・エアウェイズは「安全を最優先させる必要がある」として、当面、テルアビブを発着するすべての便の運休を発表しました。また、同じイギリスのヴァージン・アトランティック航空も、テルアビブ発着便の運休を発表しました。
イスラエルとハマスの戦闘が続く中、これまでに各国の航空会社が相次いで欠航を決め、軍用機などを運航して現地から自国民を待避させる動きも出ています。
テルアビブから帰国した日本人男性「頻繁にミサイルの音」
ハマスによる攻撃が行われたイスラエルのテルアビブから帰国した日本人の男性がNHKの取材に応じ、現地の状況について「頻繁にドンドンドンというミサイルの音が鳴っていて、不安だった。早く争いがなくなってほしい」と話しました。
会社員の男性(30)は今月5日から観光でイスラエルに滞在し、7日に商業都市テルアビブを訪れていたときに、ハマスによる大規模な攻撃が始まったということです。
街中に空襲警報のサイレンが鳴り響き、シェルターに避難したという男性は、当時の状況について「ミサイルがガザの方から来るんですけども、それをイスラエル側が迎撃する形で、頻繁に深いドンドンドンという音が鳴っていました。本当にびっくりして、やはり不安でした」と振り返りました。
男性は予定をすべてキャンセルして、インドに向かう飛行機のチケットを確保し、8日、テルアビブの空港から出国して10日、日本に帰国しました。
男性は「欠航になっている便もあったので、出国できたときは、本当に本当に安心してほっとしました。イスラエルとパレスチナは数年前も何度か緊張状態になったことがあったと思うんですけど、早くそういう争いがなくなってほしい。戦争がなくなってほしいという思いです」と話していました。
《ガザ地区の状況は》
避難先の近くでも爆発続く
イスラエル軍によるガザ地区への激しい空爆が続いていてNHKガザ事務所の取材班が避難しているホテルの前の道路付近でも何度も爆発がありました。
ホテルのロビーからNHKのカメラマンが撮影した映像にはホテルの前の道路付近から大きな爆発音が繰り返し聞こえ、煙が高くあがっている様子が映っています。
ロビーにいた人々は爆発の被害を受けるのを避けるため窓や入り口から離れて、建物の奥に身を寄せていました。
また、煙を吸い込まないように鼻と口を覆っている人や大きな声で泣き叫ぶ子どもの姿もありました。
ホテルに避難をしているジャーナリストの男性は「ここは外国メディアのジャーナリストが多く避難しているホテルだが、イスラエル軍は突然、この近くに空爆を行った。インターネットもなく、電話をかけるのも難しく、何もできることがない」と話していました。
ガザ地区 病院も空爆で被害
世界各地で医療支援を行う国際NGO「国境なき医師団」は10日、ガザ地区で活動を支援している病院の1つがイスラエル軍の空爆で被害を受けたと発表しました。
また、国境なき医師団が活動していた別の病院の前でもけが人を乗せた救急車が空爆されたということです。そして、イスラエル政府によるガザ地区への電力や水の供給を止めるという措置により医療活動が難しくなっているとし「医療施設は尊重されるべきで攻撃の対象になってはならない」と訴えています。
ガザ地区の医療状況についてはWHO=世界保健機関も懸念を示しています。WHOは、10日発表した声明で「ガザ地区の病院は予備の発電機により電力をまかなっているが、燃料は数日中になくなる可能性がある。WHOが、以前配備した物資も底をついた」として人道危機にある人々に必要な物資などを届けるための「人道回廊」を設けるべきだと強調しています。
国連 グテーレス事務総長「迅速で妨げられない人道支援が必要」
人道状況が悪化しているガザ地区をめぐり、国連のグテーレス事務総長は11日、ニューヨークの国連本部で急きょ会見を開きました。この中でグテーレス事務総長は、ガザ地区にあるUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関の92の施設におよそ22万人のパレスチナの人たちが避難しているとして、「市民は常に保護されなければならない。国連の施設や病院、学校は標的にしてはならない」と訴えました。
その上で「ガザ地区に燃料や食料、それに水など、命を救う重要な物資を持ち込むことを許可しなければならない。迅速かつ、妨げられない人道支援がいま必要とされている」と述べ、イスラエルが「ガザ地区を完全に包囲する」としている中、市民を保護し、人道支援物資の搬入を認めるよう訴えました。
グテーレス事務総長は最後に「一刻の猶予もない。一瞬一瞬が大切だ」と述べ、事態のさらなる悪化を回避するためすべての当事者に対応を呼びかけました。
《外国人の死者・人質の状況》
アメリカ国務省の報道担当者は11日、ハマスによる攻撃でこれまでに22人のアメリカ人の死亡が確認されたと明らかにしました。
《各国の反応は》
米 国防長官「イスラエルに迎撃ミサイルを供与」
アメリカのオースティン国防長官は11日、訪問先のベルギーで記者会見し「イスラエルが自国民と都市を防衛できるよう迎撃ミサイルシステム『アイアンドーム』のミサイルを供与する」と述べ、イスラエルに対しイスラム組織ハマスが発射するロケット弾を迎撃するためのミサイルを供与する考えを示しました。
その上で「われわれは、イスラエルが自国と自国民の安全を守るために必要なものを確保し続ける」と述べ、支援の継続を強調しました。
英 外相 イスラエルに軍事などで全面的支援 伝える
イギリスのクレバリー外相は11日、イスラエルのエルサレムを訪れ、ヘルツォグ大統領、コーヘン外相と相次いで会談しました。
この中で、クレバリー外相はイスラエルへの攻撃を仕掛けたハマスを「テロリストだ」と非難するとともに、イスラエルには自国を守る権利があるとして、軍事や外交面などで全面的に支援することを伝えました。
このあとクレバリー外相は、ハマスに襲撃された南部の村を訪れ、攻撃を逃れた住民などと面会しましたが、滞在中、防空警報が鳴り、走って建物の中に避難する場面もありました。
クレバリー外相はSNSに「私はきょう、数百万人が毎日経験しているものをかいま見た。ハマスのロケット弾はイスラエルのすべての男女、そして子どもたちの脅威となり続けている」と投稿しました。
一方、イギリスのチャールズ国王も11日、ヘルツォグ大統領と電話で話し、イスラエル国民の苦しみへの懸念を表したことを明らかにしたほかイギリス王室は「国王陛下は野蛮なテロ行為にがく然とし、非難している」とする声明を発表しました。
アラブ連盟「国際社会は緊急かつ効果的な行動を」
アラブの国と地域でつくるアラブ連盟は緊急の外相会議を開き、双方を強く非難したうえで暴力の連鎖が拡大しないよう、国際社会が緊急かつ効果的な行動をとるよう訴えました。
エジプトの首都カイロで11日開かれた緊急の外相会議でアラブ連盟のアブルゲイト事務局長は「イスラエルによる報復は安定ではなくさらなる暴力の連鎖をもたらすだけだ。われわれはガザ地区のパレスチナ人に連帯を示す。虐殺はあってはならない」などと述べ、自制を求めました。
また、会議に出席したパレスチナ暫定自治政府のマリキ外相は、「これまでにパレスチナ側で1000人以上が犠牲になりその半分は女性や子どもだ。停戦と市民に対する攻撃の停止を求める。国際社会に対してガザへの支援の道を開くよう求める」と述べ、国際社会に対してガザ地区への支援を急ぐよう強く訴えました。
会議のあと、アラブ連盟は声明を発表し、「双方が市民を殺害し、標的にしている。国際法に反するすべての行為を非難する」としてイスラエルとハマス双方を強く非難したうえで、「国際社会は暴力の連鎖が拡大しないよう、緊急かつ効果的な行動をとらねばならない」と訴えました。
《人工衛星からの写真・データ》
ガザ地区 衛星写真では
人工衛星を運用するアメリカの企業「マクサー・テクノロジーズ」はイスラエル軍による激しい空爆が続くガザ地区を10日に撮影した衛星写真を公開しました。
このうち、ガザ地区の北部を撮影した写真では、400メートル以上の広い範囲にわたって建物が黒く焼け焦げていて、確認できるだけで少なくとも10以上の建物が原形をとどめていません。
被害があった地域は建物がひしめきあうように建つ人口密集地で、大学や銀行、それに、幼稚園などが集まっているほか、国際機関の事務所もあります。また、別の写真では、モスクがあったとみられる場所で建物が黒く焼け、跡形もなくなっているのが確認できます。
NASAの人工衛星が観測 地上の熱源データ
NASA=アメリカ航空宇宙局の人工衛星が観測した地上の熱源のデータからはイスラム組織ハマスが数千発のロケット弾を発射した7日、ガザ地区周辺の東部や北部の一帯で多くの熱源が観測されていることがわかります。
また、ガザ地区から▼およそ50キロ離れたエルサレム近郊や▼およそ40キロ離れた最大の商業都市、テルアビブ近郊でも熱源が確認されていて、ロケット弾が着弾したものと見られます。また、10日から11日にかけてはガザ地区に近いイスラエル南部の都市、アシュケロンなどで熱源が観測されています。
アシュケロンにはハマスが10日、大規模な攻撃を行うと警告した上で多くのロケット弾を発射していて、観測された熱源はこれに関連したものとみられます。