一方、ネタニヤフ首相は散発的な戦闘が続く北部のレバノンとの国境地帯を視察し、南部ではハマスと、北部ではイスラム教シーア派組織ヒズボラという2つの戦線で戦っていると強調しました。
※23日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
《軍事的な動き》
双方の死者6000人超える
今月7日以降のイスラエルとイスラム組織ハマスとの一連の衝突では、イスラエル側で少なくとも1400人が死亡し、外国人を含む200人以上が人質にとられている一方、ガザ地区では4651人が死亡し、双方の死者は6000人を超えています。
イスラエル軍の報道官は22日「政治レベルの決定に従い次の段階に移行するだろう」と述べ、地上侵攻を含む大規模な軍事作戦への準備が整っていると強調しました。
南部アシュケロンの郊外で22日にNHKが取材した際には、軍の拠点に戦車や装甲車などの軍用車両が集まっているのが確認できました。1週間前と比べて、がれきの撤去などに使われる軍用のブルドーザーが増えていて、地上侵攻を進める際に空爆で破壊された建物のがれきを撤去するなどの目的で展開しているものとみられます。
また、イスラエル軍はガザ地区で高い建物やトンネルなどハマスの拠点を狙った激しい空爆を続けていて、ハマスの武器製造拠点や指揮所を破壊したとしています。
これについてガザ地区の保健当局は22日午後にかけての24時間で266人が死亡したほか、ガザ地区の住宅の半数が空爆などの被害を受けたとしています。
北部でヒズボラとも戦闘「われわれは2つの戦闘のさなか」
イスラエルのネタニヤフ首相は22日、イスラエル北部のレバノンとの国境付近に展開する前線の部隊を視察しました。
レバノンとの国境付近では今月7日以降、ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃に呼応するように、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラによるロケット弾の攻撃などが相次ぎ、イスラエル軍との間で散発的な戦闘が続いています。これまでにイスラエル側で8人が死亡、レバノン側で少なくとも30人が死亡し、緊張が高まっています。
前線の部隊を視察したネタニヤフ首相は「われわれは2つの戦闘のさなかにある」と述べ、南部ではハマスと北部ではヒズボラと戦っているという認識を示しました。
そのうえで「もしヒズボラがイスラエルとの戦争を始めると決めれば、大きな過ちとなるだろう。われわれは彼らが想像できないような兵力で攻撃する。いかなるシナリオにも備えはできている」と述べ、ヒズボラを強くけん制しました。
イスラエル政府はレバノンとの国境線から5キロ以内の範囲で暮らすおよそ4万人の住民に退避を呼びかけています。イスラエル軍がガザ地区への大規模な地上侵攻の準備を進めるなか、ハマスを上回る兵力を持つとされるヒズボラが本格的に参戦すれば2正面での戦いを強いられることになり、今後のヒズボラの動きが注視されています。
イスラエル軍の戦車 エジプト側の監視塔を誤って砲撃
イスラエル軍は22日、エジプトとの国境付近でイスラエル軍の戦車がエジプト側の監視塔を誤って砲撃したと発表しました。イスラエル軍は誤射について遺憾の意を表明し、原因を調査中だとしています。これに対しエジプト軍の広報官はSNSに「イスラエル軍の誤射によって、エジプト兵数人が軽傷を負った。イスラエル側は誤射について即時に謝罪した」と投稿しました。
誤射があった場所はイスラエル側からガザ地区に物資を運び込むのに使われていたケレム・シャロームの検問所の近くです。ここはエジプトとガザ地区との境界にあるラファ検問所とも近く、直線距離で3.5キロほどのところです。
米国防長官「市街地での戦闘は非常に難しい」
アメリカのオースティン国防長官は22日、ABCテレビのインタビューで、イスラエル軍が準備を進めるガザ地区への地上侵攻について「市街地での戦闘は非常に難しい。ゆっくりとしたペースで進んでいくものだ」と指摘しました。
その上で2016年から2017年にかけてイラク軍が過激派組織IS=イスラミックステートに対する軍事作戦によって、イラク北部のモスルを解放するのに9か月かかったことを挙げて「今回の戦闘はハマスが地下トンネル網を築き、戦闘準備に長い時間をかけてきたことからもう少し難しいかもしれない」と述べて、難しい作戦になるという認識を示しました。
またブリンケン国務長官は、NBCテレビのインタビューで人質の解放のためにイスラエル軍の地上侵攻を遅らせるべきかと問われたのに対し「われわれは連れ去られた多くの人質が戻ってくることを望んでおり、取り組んでいるが、これらはイスラエルが決断しなければならないことだ。私たちは最善の助言をすることができる」と述べるにとどまりました。
米国務省「中東地域で攻撃がエスカレートするおそれ」
アメリカ国務省は22日、イラクでアメリカ人に対する安全上の脅威が高まっているとして、20日付けで首都バグダッドにある大使館と、北部アルビルにある総領事館で緊急性のない政府職員と職員の家族に退避するよう命じたと発表しました。
その上で「イラクに滞在するアメリカ国民は暴力や誘拐の可能性を含め、安全と治安に対する高いリスクに直面している」として国民にイラクに渡航しないよう改めて求めました。
オースティン国防長官は22日、ABCテレビのインタビューで、イラクでアメリカ軍の駐留する基地にロケット弾などによる攻撃が行われたとして「中東地域でわれわれの部隊や国民に対する攻撃が大幅にエスカレートするおそれがある」と述べて懸念を示しました。
イスラエル 人質の家族ら 大統領と面会
イスラム組織ハマスの攻撃で外国人を含む200人以上が人質にとられる中、22日、およそ80世帯の人質の家族らがエルサレムでイスラエルのヘルツォグ大統領と面会し、人質の解放に全力を尽くすよう求めました。
大統領の公邸で行われた面会は、当初の1時間の予定を大幅に超えおよそ3時間にわたって行われました。面会を終えた家族らは集まった報道陣の取材に応じ、このうち23歳の息子を人質に取られている夫婦は「大統領は、人質の解放が最優先事項だと話してくれた」とした一方で「息子が腕をけがしている映像を確認した。手術が必要で、悲惨な状況だ」として一刻も早い解放を求めました。
またいとこ夫妻が人質に取られているシャニ・セガルさん(35)は「彼らが食事をとれているか、無事でいるか気がかりだ」と述べたうえで、イスラエル軍が地上侵攻の準備を進めていることについては「これはテロとの戦いだ。人質に何も起こらないことを心から願っているが確かなことは分からない」として、不安をのぞかせました。
《人道支援をめぐる動き》
ガザ地区では燃料や飲み水、医薬品の不足が著しく人道危機に陥っていて、継続的に支援物資をエジプト側から搬入できるかが課題となっています。
ガザ地区に支援物資載せたトラック入る 2日連続
OCHA(オチャ)=国連人道問題調整事務所のトップを務めるマーティン・グリフィス国連事務次長は22日夜、深刻な人道危機に陥っているパレスチナのガザ地区にエジプトとの境界の検問所から人道支援物資を載せたトラック14台が入ったとSNSで明らかにしました。
支援物資のトラックがガザ地区に入ったのは前日に続いて2日連続です。今月7日からの一連の衝突後、21日に初めてガザ地区に入った支援物資はトラック20台分で、国連機関は必要な支援には足りていないとしています。
人道状況の改善に向けて今後も継続的に支援物資を搬入できるかが焦点となっています。
ガザ地区の基幹病院 子どもなど次々運び込まれる
NHKガザ事務所のスタッフが入手したガザ地区北部の基幹病院で19日夜、撮影された映像には、空爆の被害を受けたとみられる子どもなどが抱きかかえられたり、ストレッチャーに乗せられたりして、次々に運び込まれる様子が確認できます。
また、22日に撮影された映像では病院の前に多くの人がいる様子も確認できます。
NHKガザ事務所のムハンマド・シェハダ氏によりますと「家を追われた人々が行き場もなく安全な場所を求めて、病院に集まっている」ということです。
病院の前で取材に応じたICRC=赤十字国際委員会の担当者は「大惨事に直面している。燃料や救命のための医薬品も不足している」と話していました。また、安全が確保できず、救急車が空爆の現場に近づけないとして救急活動の厳しい状況も明らかにしました。
イスラエル軍はこの病院があるガザ市を含むガザ地区北部の住民に対し、南部に退避するよう繰り返し通告していて、21日も軍のアラビア語の報道官が「ハマスはあなた方を人間の盾として利用している」などとSNSに投稿し、退避を呼びかけています。
一方でWHO=世界保健機関はイスラエル側の退避通告についてこれまでの声明で「現在の人道的・公衆衛生上の大惨事をさらに悪化させることになる。死刑宣告に等しいものだ」と強く非難しています。
UNRWA事務局長「人道的対応に不可欠な燃料 あと3日で尽きる」
パレスチナ難民を支援するUNRWA(あんるわ)=国連パレスチナ難民救済事業機関のフィリップ・ラザリーニ事務局長は、22日に発表した声明で「ガザ地区全域でUNRWAの人道的な対応に不可欠な燃料はあと3日で尽きる。燃料がなければ水も供給できないし、病院も機能しない。支援物資も必要な人々に届けられないし、人道支援もできない。ガザ地区の人々の首をさらに絞めることになる」として、深刻な燃料不足に直面している現状に危機感を示しました。
またイスラエル軍が、ガソリンなどの燃料は軍事目的で使用される可能性があるとして支援物資に含めることを認めない考えを示していることについては「ガザ地区への燃料の供給を直ちに許可し、人道的な対応の崩壊を防ぐ目的で厳格に使用されるよう、すべての当事者と彼らに影響力を持つ人々に求める」として燃料の必要性を訴えています。
WFP=世界食糧計画やWHO=世界保健機関など5つの国連機関も21日に発表した共同声明で「医療機関にはもう燃料がなく現地で確保したわずかな燃料で運営している。これらも1日程度で尽きると予想されている。水の生産能力は通常の5%で、事前に配備されていた人道物資はすでに枯渇している」として燃料を含めた物資の不足が深刻だと指摘しました。
難民支援のUNRWA職員の死者29人に 避難所には40万人
パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は22日、ガザ地区で新たに職員13人が死亡しているのが確認されたと発表しました。これまでの死者はあわせて29人にのぼり、17人がけがをしているということです。
さらにガザ地区中部のほか、南部のハンユニスやラファでUNRWAが管理する学校などの91の避難所にはあわせて40万あまりが身を寄せているとしています。避難所は1か所あたり1500人から2000人を受け入れられる態勢が取られていますが、最も多い避難所には定員の11倍以上にあたる1万9600人が身を寄せるなど深刻な過密状態になっているということです。
ガザ地区南部のハンユニスやラファの避難所には給水トラックが水の輸送を続けていますが、トラックの台数が限られているほか、給水タンクへの水の補給は1日に1回しか出来ず、足りていない状況だとしています。
EU本部前で停戦や民間人保護訴えるデモ
イスラエル軍がガザ地区に激しい空爆を続ける中、ベルギーにあるEU=ヨーロッパ連合の本部前で22日停戦や民間人の保護などを訴えるデモが行われました。
デモはパレスチナの人々の権利擁護のために活動しているベルギーの団体の呼びかけで首都ブリュッセルにあるEU本部前で始まり、地元の市民など、警察発表でおよそ1万2000人主催者発表でおよそ4万人が参加しました。参加者たちはパレスチナの旗を掲げたり、「今すぐ停戦を」とか「殺りくをやめろ」などと書かれたプラカードを手にしたりしてEU本部周辺を行進しました。
デモに友人と参加したモロッコ系の女性は「パレスチナの人たちへの支持を示すために来ました。子どもたちが毎日空爆で殺されているのを見るとデモに参加することはいっそう重要です」と話していました。
また地元ブリュッセルの男性は「ハマスがしたことは容認できないがイスラエルも容認できないことをしている。EUにはパレスチナとイスラエル、双方のことを考えて行動してほしい」と話していました。
アラブ系とユダヤ系、双方の住民が多く暮らすヨーロッパ各国ではこうしたデモや集会が社会の緊張を高めかねないと警戒を強めていて、今回のデモの会場周辺にも大勢の警察官が配置され、警備にあたっていました。
《外交関連の動き》
バイデン大統領 ネタニヤフ首相と電話会談 継続的支援を確認
アメリカ・ホワイトハウスは22日、バイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相とガザ地区の情勢などをめぐって電話会談したと発表しました。
それによりますと、バイデン大統領は人道危機に陥っているガザ地区に支援物資を載せたトラックが入ったことを歓迎するとともに、ネタニヤフ首相との間で、今後も継続的に支援が入ることを確認したとしています。
また両首脳はハマスが拘束している人質全員の解放と、ガザ地区から出ることを希望しているアメリカ国民などが安全に移動できるようにする方策などについて協議したということです。
マクロン大統領 イスラエル訪問 ネタニヤフ首相と会談へ
フランス大統領府などによりますと、マクロン大統領は24日からイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相と会談を行うということです。
フランスは、今回の軍事衝突の当初、イスラエルの自衛権への支持を前面に打ち出していましたが、ガザ地区への空爆が続くなか、人道支援の必要性や国際人道法の順守も訴えていて、会談でこうした内容を直接伝えるものとみられます。
また、フランス国籍の複数の人質もガザ地区にいるとみられるなか、政府も人質の解放に向けた協議を関係国などと進めていて、今回の訪問でも焦点になるとみられます。
オランダ ルッテ首相もイスラエル訪問へ
オランダのメディアは、ルッテ首相も23日からイスラエルやパレスチナのヨルダン川西岸地区を訪れ、ネタニヤフ首相やアッバス議長とそれぞれ会談する予定だと伝えています。