原さんはスクリーンにユニフォーム姿の自分の写真を映し、筋肉のついた足と対照的に痩せ細った腕を示して、当時は厳しい体重管理をしていたため、163センチの身長で体重が41キロしかなく、食べて吐くことを繰り返す摂食障害を発症していたと明かしました。
そして、「早く走るためには“体重の管理”が仕事で、体重が増えるのは意志が弱いために、自分をコントロールできていないのだと思ってひたすら自分を責めていた」と当時を振り返りました。
病気という自覚がなかったために治療は遅れ、摂食障害と診断されたのは発症から10年後の28歳の時だったということです。摂食障害の影響もあり、引退したあとになっても万引きを繰り返し、「大切な人たちを傷つけてしまった」と話しました。
そして「引退したあとも人生は続く。それを見据えて競技に取り組んでほしい。もし食べては吐く症状が出たら、1人で悩まずに早めに信頼できる人に相談し、治療を受けてほしい」と訴えていました。
また摂食障害に詳しい精神科医の西園マーハ文さんも講演し「タイムや体重だけにこだわる指導は摂食障害につながりやすい。摂食障害の初期は体調不良でも休もうとしなかったり、体重を落とすために自己流の食事を続けたりすることがあり、指導者はこうした兆候も見逃さないでほしい」と話し、指導者も選手の状態に注意を払ってほしいと呼びかけていました。
原さん「中高生は特に自分の体を大切に」
シンポジウムのあと原さんは「10代や20代の若い頃は体重が軽くなると速く走れるなど、競技成績が伸びることがありますが、一時的なものにすぎません。そのあとに必ず反動があって、摂食障害を発症したりけがが増えたりして、選手寿命が短くなるおそれがあります」と話していました。
また「体を作る大切な時期にいる中学生や高校生は、特に自分の体を大切にしてほしい。指導者や家族も正しい知識をもって選手を支えてほしい」などと話し、周囲に人たちも摂食障害についての知識を持って選手に接してほしいと訴えていました。
西園さん「行動の変化あることも」
日本摂食障害協会の理事で精神科医の西園マーハ文さんは「海外の研究では、スポーツ選手は一般の人に比べて摂食障害を発症する割合が高いという結果が出ている」と話しました。
そのうえで、「摂食障害の兆候は行き過ぎた体重管理による無月経や骨粗しょう症のほか、選手が勝手に過剰な練習メニューをこなしたり、食事を隠れてひとりでとりたがったりするなど、行動に変化があることも多い。兆候があれば指導者や学校の教員家族など周囲が協力して医療機関への受診につなげてほしい」と話していました。