不正ふせいアクセスで個人こじん情報じょうほう漏ろうえい 被害ひがいが過去かこ最悪さいあくペースで増加ぞうか

ＮＰＯえぬぴ-お-法人ほうじんの日本にっぽんネットワークセキュリティ協会きょうかいの調査ちょうさでは、去年きょねん１いち年間ねんかんに国内こくないで起おきた不正ふせいアクセスによる個人こじん情報じょうほうの漏ろうえいは90件けんと、前まえの年としより23件けん増ふえ、調査ちょうさを行おこなったこの14年ねんで最悪さいあくのペースとなっています。10万まん人にん分ぶんを超こえる個人こじん情報じょうほうの漏ろうえいは６ろく件けん、最もっとも深刻しんこくなケースでは57万まん人にん分ぶんもの情報じょうほうが漏ろうえいしています。

被害ひがいが深刻しんこく化かしている要因よういんの１ひとつとして指摘してきされているのが、ボットと呼よばれる自動じどうプログラムによるサイバー攻撃こうげきの拡大かくだいです。

アメリカ大手おおてＩあいＴてぃ-企業きぎょうのアカマイ・テクノロジーズによりますと、ボットは、闇やみサイトで売買ばいばいされている数すう億おく件けんに上のぼるＩＤあいでぃ-やパスワードを悪用あくようして不正ふせいなログインを自動じどうで大量たいりょうに試こころみていて、そうした通信つうしんは、全ぜん世界せかいで１いち日にち当あたり１いち億おく1000万まん回かい以上いじょう観測かんそくされているということです。

しかも、目立めだたないように数すう分ふんおきにログインを試ためしたり、発信はっしん元もとを数すう万まん件けんに分散ぶんさんしたりするなど、発覚はっかくを防ふせぐ手口てぐちが巧妙こうみょう化かし、人ひとによるアクセスと区別くべつして見つけ出みつけだすことは困難こんなんになっているということです。

アカマイ・テクノロジーズの中西なかにし一博かずひろさんは「ボットも進化しんかしていて、最新さいしんの技術ぎじゅつを投入とうにゅうしないとボットの通信つうしんを見破みやぶることはほとんど不可能ふかのうになっている。さまざまな形かたちで流出りゅうしゅつした大量たいりょうのＩＤあいでぃ-やパスワードがボットに悪用あくようされて被害ひがいを広ひろげている」と話はなしています。

被害ひがいにあった企業きぎょうは

都内とないにある金融きんゆう会社かいしゃでは、去年きょねんの夏なつ、会員かいいん向むけのサイトが不正ふせいアクセスの被害ひがいを受うけました。

対応たいおうにあたった担当たんとう者しゃによりますと、不正ふせいアクセスの発信はっしん元もとは海外かいがいで、人手ひとででは難むずかしい数すう日間にちかんで数すう十じゅう万まん回かいに上のぼる大量たいりょうの通信つうしんが行おこなわれたことから、ボットによる攻撃こうげきとみられています。その結果けっか、会員かいいんになりすまされて会員かいいんの個人こじん情報じょうほうを盗み見ぬすみみられたほか、会員かいいんのポイントが勝手かってに使つかわれる被害ひがいも出でたということです。

担当たんとうした男性だんせい社員しゃいんは「別べつの担当たんとう者しゃから異常いじょうな量りょうの通信つうしんがあるとメールで知しらされ、それで気付きづいた時ときにはすでにログインされていた。ログインに何なん度どか失敗しっぱいするとロックする仕組しくみになっていたが、それもすり抜すりぬけられ、被害ひがいの拡大かくだいを防ふせぐために会員かいいんのアカウントを一時いちじ停止ていしする対応たいおうを行おこなった。本物ほんもののＩＤあいでぃ-やパスワードを悪用あくようされるので防御ぼうぎょが難むずかしい」と話はなしています。

二に段階だんかい認証にんしょうの普及ふきゅうに壁かべ

こうした不正ふせいアクセスを防ふせぐのに有効ゆうこうとされているのが、ＩＤあいでぃ-とパスワードのほかに、スマートフォンのアプリなどで別べつの数字すうじなどの入力にゅうりょくを求もとめる二に段階だんかい認証にんしょうです。

しかし、国内こくないの通販つうはんサイトなどでは、二に段階だんかい認証にんしょうの普及ふきゅうは進すすんでいません。業界ぎょうかい団体だんたいがことし２月にがつにネット通販つうはんなどを手てがける国内こくない企業きぎょう300社しゃを対象たいしょうに行いったアンケート調査ちょうさでは、二に段階だんかい認証にんしょうなどを導入どうにゅうしている企業きぎょうは20％にとどまり、77％はＩＤあいでぃ-とパスワードだけで本人ほんにん確認かくにんをしていました。

その背景はいけいとして、二に段階だんかい認証にんしょうを導入どうにゅうするためのシステムの改修かいしゅうに多額たがくの費用ひようがかかるうえ、ログインの手間てまが増ふえると顧客こきゃくが離はなれてしまうため、導入どうにゅうをためらうことが指摘してきされています。

民間みんかんのセキュリティー専門せんもん機関きかん「ＪＰＣＥＲＴコーディネーションセンター」の佐々木ささき勇人はやとさんは「複数ふくすうのサイトで同おなじパスワードを使つかい回まわすことをやめれば、不正ふせいアクセスの被害ひがいを大おおきく減へらすことができる。そのうえで、できるだけ二に段階だんかい認証にんしょうを利用りようしてほしい」と話はなしています。

業界ぎょうかいでは緊急きんきゅうの対策たいさく呼よびかけ

不正ふせいアクセスの被害ひがいが相次あいついでいることを受うけて、アカマイ・テクノロジーズは今月こんげつ７なな日にち、都内とないで企業きぎょうの担当たんとう者しゃを集あつめた緊急きんきゅうのセミナーを開ひらきました。

セミナーにはインターネット上じょうで通販つうはんや金融きんゆうなどのサービスを提供ていきょうしている企業きぎょうのおよそ100人にんが参加さんかし、ボットによる被害ひがいの実態じったいについて説明せつめいが行おこなわれました。

この会社かいしゃの調査ちょうさでは、通販つうはんサイトなどにログインしようとする通信つうしんの66.5％をボットが占しめているとしたうえで、不正ふせいアクセスを見破みやぶるにはＡえいＩあい＝人工じんこう知能ちのうなどを使つかった最新さいしんの対策たいさくが必要ひつようと訴うったえました。

そのうえで、被害ひがいを防ふせぐには、ＩＤあいでぃ-とパスワードのほかに別べつの数字すうじなどの入力にゅうりょくを求もとめる二に段階だんかい認証にんしょうの導入どうにゅうや、サイトを管理かんりしている部門ぶもんと社内しゃないのシステムを担当たんとうする部門ぶもんが連携れんけいしてリスクを把握はあくすることが重要じゅうようだと呼よびかけました。