日本新聞: 美少年を溺愛するあまり鬼になった住職「青頭巾」

美少年びしょうねんを溺愛できあいするあまり鬼おにになった住職じゅうしょく「青頭巾あおずきん」

N3 Jun 16, 2025 07:06 1304

Furigana 翻译

改庵妙慶かいあんみょうけい（かいあんぜんじ）という僧侶そうりょが旅たびの最中さいちゅうに、下野しもつけの国くに（現在げんざいの栃木県とちぎけん）の小ちいさな村むらを訪おとずれた時ときのこと。僧侶そうりょは村人むらびとから近ちかくの山やまに住すんでいる寺てらの住職じゅうしょくの話はなしを聞きく。
その住職じゅうしょくは自分じぶんの身みの回まわりの世話せわをさせていた美少年びしょうねんの稚児ちごを溺愛できあいし、しだいに本職ほんしょくまで怠おこたるようになった。稚児ちごが病やまいで亡なくなると、その死しをあきらめきれない住職じゅうしょくは火葬かそうも土葬どそうもせずに、遺骸いがいを側そばにおいて抱だきしめ、その肉にくが腐くさるのを惜おしみ、肉にくを食たべ骨ほねをしゃぶり、ついには食たべ尽つくしてしまったという。そして里さとに下おりてきては墓はかを暴あばき、死肉しにくをむさぼり食くい、村人むらびとを追おいかけ回まわす鬼おにに成なり果はててしまった。改庵妙慶かいあんみょうけいは村人むらびとの話はなしを聞きき、鬼おにとなった住職じゅうしょくを何とか正気しょうきに戻もどさなければと決心けっしんする。
その夜よる、改庵妙慶かいあんみょうけいが山やまに登のぼり荒あれ果はてた寺てらの中なかで座禅ざぜんを組くんでいると、僧そうとも俗人ぞくにんとも区別くべつがつかない鬼おにと化かした住職じゅうしょくが現あらわれる。改庵妙慶かいあんみょうけいが一喝いっかつすると、僧そうのおぼろげな姿すがたは氷こおりのように消きえ失うせ、改庵妙慶かいあんみょうけいの被かぶせた青頭巾あおずきんと白骨はっこつだけが草葉くさばのなかに残のこっていた。