ボランティアの心構こころがまえ“単独たんどく行動こうどうせず涙なみだ止とまらないならやめる”

では「きのどくな」は？

かわいそう、ふびん、ではありません。

能登のと半島はんとう地震じしんで甚大じんだいな被害ひがいが出でている石川いしかわ県けんでは徐々じょじょにボランティアの受け入うけいれが始はじまっています。被災ひさい地ちに入はいるときの心構こころがまえ、知しっておきたいことをまとめました。

【ボランティアに行いく前まえに】

早稲田わせだ大学だいがくの平山ひらやま郁夫いくお記念きねんボランティアセンターは、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの直後ちょくごに、「学生がくせい災害さいがい支援しえんボランティアの心得こころえ10か条かじょう」をまとめ、被災ひさい地ちに向むかう人ひとたちに伝つたえて、準備じゅんびや行動こうどうの注意ちゅうい点てんを伝つたえています。

学生がくせい災害さいがい支援しえんボランティアの心得こころえ10か条かじょう

第だい1条じょう「ボランティア保険ほけん（災害さいがいプラン）に入はいる」

第だい2条じょう「不眠ふみん不休ふきゅうで頑張がんばらない」

第だい3条じょう「被災ひさい地ちでは信頼しんらいできる人ひとと一緒いっしょに行動こうどうする」

第だい4条じょう「まずは相手あいての話はなしを共感きょうかん的てきに聞きく」

第だい5条じょう「被災ひさい者しゃが自分じぶんたちでやる仕事しごとを取とらない」

第だい6条じょう「涙なみだが止とまらなくなったら活動かつどうをやめる」

第だい7条じょう「できないことは“出来できません”とはっきり断ことわる」

第だい8条じょう「相手あいての感情かんじょうに巻き込まきこまれ過度かどな哀あわれみや同情どうじょうをしない」

第だい9条じょう「子こどもと遊あそぶときなどは過度かどに喜よろこばせようとしない」

第だい10条じょう「ボランティア活動かつどうの運営うんえいについて批判ひはんはしない」

10か条かじょうには、苦くるしい状況じょうきょうにいる相手あいてと向き合むきあう時ときの心構こころがまえも書かかれています。

まずは相手あいての話はなしを共感きょうかん的てきに聞きく（第だい4条じょう）

「被災ひさいした人ひとたちを応援おうえんしたい気持きもちから“頑張がんばってください”ということばをかけてしまいがちですが、“もう頑張がんばっているのにどうすればいいの？”という気持きもちにさせてしまうかもしれません。まずは話はなしをよく聞きいて受け止うけとめるということを心こころがけてみてください」

（早稲田わせだ大学だいがく “ボランティアセンター” 岩井いわい雪乃ゆきのさん）

子こどもと遊あそぶ時ときなどは過度かどに喜よろこばせようとしない（第だい9条じょう）

「つらい思おもいをしている子こどもたちを元気げんきづけてあげたい。そんな気持きもちで子こどもたちと遊あそんであげるような機会きかいがあるかもしれません。でも、ボランティアはずっとそこに居い続つづけられる訳わけではありません。楽たのしい時間じかんが過ぎ去すぎさったあと、子こどもたちがどんな気持きもちになるか、また、興奮こうふんした子こどもたちの面倒めんどうを誰だれかがみることも意識いしきしておいてください」（岩井いわいさん）

涙なみだが止とまらなくなったら活動かつどうをやめる（第だい6条じょう）

ボランティア自身じしんが心こころに傷きずを負おってしまわないよう、注意ちゅういを呼よびかけています。

東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいで宮城みやぎ県内けんないでボランティアにあたった、ある学生がくせいの体験たいけん談だんです。

家いえの片付かたづけを手伝てつだっていたときに、家主やぬしの男性だんせいから声こえをかけられました。

「妻つまがたんすの下敷したじきになり、亡なくなってしまった」

「助たすけられなかったことが毎日まいにちつらくて」

涙なみだを流ながしながら心境しんきょうを吐露とろする男性だんせい。

気きがつくと学生がくせい自身じしんも涙なみだが止とまらなくなっていました。

「大丈夫だいじょうぶですか」

学生がくせいを心配しんぱいした男性だんせいに気きを遣つかわせてしまったいうことです。

相手あいての気持きもちに寄り添よりそうことはもちろん大切たいせつですが、気持きもちを保たもてなくなったり、コントロールができなくなりそうなときには周囲しゅういに相談そうだんをしたり、ボランティアをやめたりする決断けつだんも求もとめられるということです。

ボランティア活動かつどう中ちゅうは、自分じぶん自身じしんの心こころにも向き合むきあい、また、周囲しゅういのボランティアの様子ようすにも気きを配くばるようにしてほしいと助言じょげんしています。

早稲田わせだ大学だいがく “ボランティアセンター” 岩井いわい雪乃ゆきの准じゅん教授きょうじゅ

「一人ひとりひとりのボランティアの力ちからは微力びりょくかもしれませんが決けっして無力むりょくではありません。どんなふうに相手あいてと向むきあえばいいか、どのような行動こうどうをすれば力ちからになれるのか、心こころの準備じゅんびをしたうえで向むかってほしい」

【方言ほうげんで伝つたわると話はなしやすく】

被災ひさい地ちに支援しえんに入はいる人ひとたちにその地域ちいきの方言ほうげんを知しってもらいたいと発信はっしんする人ひともいます。シナリオライターの藤本ふじもと透とおるさんは、富山とやま県内けんないの出版しゅっぱん社しゃと協力きょうりょくしながら能登のと地方ちほうに伝つたわる方言ほうげんについて、その意味いみを解説かいせつしています。

例たとえば『ちきない』は「つらい」「しんどい」といった意味いみ。

『なんもいね』は「いいえ」という意味いみで使つかわれているということです。

『きのどくな』は「ありがとう」という気持きもちをあらわす方言ほうげんです。

標準ひょうじゅん語ごとして理解りかいすると違ちがう意味いみにとられかねず、注意ちゅういが必要ひつようなことばもあるということです。

藤本ふじもとさんが旧きゅうツイッターのXに投稿とうこうを始はじめたところ、石川いしかわ県けんにゆかりのある人ひとたちから「この方言ほうげんも入いれてほしい」といった反響はんきょうが多おおく届とどき、健康けんこう状態じょうたいを伝つたえるときのことばや、片付かたづけを手伝てつだう際さいに使つかうことば、およそ100の方言ほうげんを場面ばめんごとに分類ぶんるいしてまとめることにしたということです。

藤本ふじもと透とおるさん

「方言ほうげんでも伝つたわる、分わかってくれると思おもえるだけで安心あんしんして話はなしをしやすくなると思おもいます。ふと方言ほうげんで口くちに出でたことばが大事だいじな気持きもちだったりすることもありますので、ボランティアに行いく人ひとには少すこしでも方言ほうげんを知しっておいてもらいたい」

藤本ふじもとさんは、能登のと地方ちほう(輪島わじま市し町野まちの町まち)で青春せいしゅん時代じだいを過すごしました。今回こんかいの地震じしんのあと、実家じっかで暮くらす家族かぞくや親戚しんせきは避難ひなん生活せいかつを送おくっているということです。

藤本ふじもと透とおるさん

「この地域ちいきの人ひとたちは誰だれかに迷惑めいわくをかけたくないという気持きもちがあったり、遠慮えんりょがちな人ひとも多おおいです。『大丈夫だいじょうぶですか』と尋たずねてもついつい『なっとない（大丈夫だいじょうぶ）』と答こたえてしまうところがあるので、『眠ねむれていますか？』とか『困こまりごとは何なにですか？』とか具体ぐたい的てきな問といかけをしてもらえるとうれしいです」

【事前じぜんに受け入うけいれ状況じょうきょうの確認かくにんを】

被災ひさいした地域ちいきごとに災害さいがいボランティアセンターが立ち上たちあがり、支援しえんのニーズや復旧ふっきゅうの状況じょうきょうに応おうじて受け入うけいれの調整ちょうせいを行おこなっています。

全国ぜんこく社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎ会かいは、ボランティアの受け入うけいれ状況じょうきょうや、各地かくちの災害さいがいボランティアセンターについての情報じょうほうを掲載けいさいしています。