日本新聞: アフガニスタン米軍撤退から1か月安定は見通せず

アフガニスタン米べい軍ぐん撤退てったいから1か月かげつ安定あんていは見通みとおせず

Sep 30, 2021 18:09

Furigana

イスラム主義しゅぎ勢力せいりょくタリバンが再ふたたび権力けんりょくを握にぎったアフガニスタンからアメリカ軍ぐんが撤退てったいを完了かんりょうして9月つき30日にちで1か月かげつとなります。

タリバンの統治とうちが進すすむ一方いっぽう、過激かげき派は組織そしきIS＝イスラミックステートの地域ちいき組織そしきによるとみられる攻撃こうげきが相次あいつぎ、市民しみんが犠牲ぎせいになるなどアフガニスタンの安定あんていは見通みとおせない状況じょうきょうです。

アフガニスタンでは8月つき30日にち、アメリカ軍ぐんの撤退てったいが完了かんりょうし「アメリカ史上しじょう、最もっとも長ながい戦争せんそう」とも言いわれた20年ねんにおよぶ軍事ぐんじ作戦さくせんに終止符しゅうしふが打うたれました。

再ふたたび権力けんりょくを握にぎったタリバンは治安ちあんの確保かくほに力ちからを入いれる一方いっぽう、誘拐ゆうかい事件じけんの容疑ようぎ者しゃとされる男おとこらの遺体いたいを、見みせしめだとして公衆こうしゅうの前まえでクレーンでつるすなど、かつて人々ひとびとをおそれさせた統治とうちをほうふつとさせる行為こういも見みせていて国内外こくないがいから懸念けねんの声こえが出でています。

一方いっぽう、東部とうぶのジャララバードではタリバンと対立たいりつするISの地域ちいき組織そしきによるとみられる攻撃こうげきが相次あいつぎ、タリバンの車両しゃりょうが爆発ばくはつし子こどもを含ふくむ市民しみんも巻き込まきこまれ犠牲ぎせいが出でています。

また、タリバンの強硬きょうこう派はのグループは国際こくさいテロ組織そしきアルカイダとの結び付むすびつきがあるとされ、アフガニスタンが再ふたたびテロの温床おんしょうになるのではないかという国際こくさい社会しゃかいの懸念けねんにもつながっていて、アフガニスタンの安定あんていは見通みとおせない状況じょうきょうです。

アメリカ軍ぐんの撤退てったい完了かんりょうから1か月かげつとなった30日にち、首都しゅとカブールの中心ちゅうしん部ぶではタリバンの戦闘せんとう員いんがパトロールする中なか、多おおくの人ひとが行き交いきかう姿すがたが見みられました。

50歳さいの男性だんせいは「アメリカは私わたしたちを裏切うらぎり置き去おきざりにした。今いまは支援しえんもなく現金げんきんも銀行ぎんこうに凍結とうけつされている。人々ひとびとは貧まずしく仕事しごともない」と不満ふまんを訴うったえました。

また57歳さいの男性だんせいは「タリバンが統治とうちを始はじめてまだ1か月かげつ余あまりしかたっていないので、国内こくないでのアルカイダやISの状況じょうきょうは把握はあくできていないと思おもわれ心配しんぱいだ。統治とうちの体制たいせいが整ととのい平和へいわになることを望のぞんでいる」と話はなしていました。

専門せんもん家か「妥協だきょうや譲歩じょうほの姿勢しせい見みられない」

アフガニスタン情勢じょうせいに詳くわしい中東ちゅうとう調査ちょうさ会かいの青木あおき健太けんた研究けんきゅう員いんは、現在げんざいのタリバンの統治とうちについて「軍事ぐんじ的てきな勝利しょうりを収おさめたあと、これまで目標もくひょうとしてきたイスラム的てき統治とうちを実現じつげんしようとしていて妥協だきょうや譲歩じょうほの姿勢しせいは見みられない」と述のべました。

その理由りゆうとして「タリバンは数すう万まんから十じゅう万まん単位たんいの構成こうせい員いんからなる大おおきな組織そしきで、イスラムの教おしえに反はんする問題もんだいには末端まったんの構成こうせい員いんからの強つよい反発はんぱつが予想よそうされる。さらに軍事ぐんじ部門ぶもんが政治せいじ部門ぶもんに対にたいして強硬きょうこうな姿勢しせいを貫つらぬくよう圧力あつりょくをかけているとみられ、タリバンが融和ゆうわ的てきな姿勢しせいを示しめすことが難むずかしいという構造こうぞう的てきな問題もんだいがある」と指摘してきしました。

今後こんごについては「タリバンとしては一部いちぶの親したしい国くにからの協力きょうりょくが得えられれば、前ぜん政権せいけんへの権力けんりょくの分与ぶんよなどで妥協だきょうする必要ひつようはないと判断はんだんしてもおかしくない。タリバンが強硬きょうこうな姿勢しせいを貫つらぬき国際こくさい社会しゃかいと平行へいこう線せんが続つづく可能かのう性せいが高たかい」と分析ぶんせきしました。

また、過激かげき派は組織そしきIS＝イスラミックステートの地域ちいき組織そしきによるとみられる攻撃こうげきが相次あいついでいることについては「ISの地域ちいき組織そしきはタリバンと敵対てきたい関係かんけいにあり、今後こんごも攻撃こうげきを散発さんぱつ的てきに起おこす可能かのう性せいはある。一方いっぽうで、すでに国内こくないの支配しはい領域りょういきを失うしなっているとも見みられていて軍事ぐんじ的てきに大だい規模きぼな攻撃こうげきを連続れんぞくして引き起ひきおこすような能力のうりょくはないだろう」と分析ぶんせきしました。

そして「タリバンとアメリカはISに対にたいする脅威きょういの認識にんしきが共通きょうつうしている。今後こんご両者りょうしゃが何なんらかの形かたちで協力きょうりょくするということも想定そうていされる」と述のべ、ISの排除はいじょに向むけてアメリカとタリバンが協力きょうりょくする可能かのう性せいにも言及げんきゅうしました。

そのうえで「20年ねん前まえと比くらべて活動かつどうが低迷ていめいしているとはいえ、国際こくさいテロ組織そしきアルカイダとの関係かんけいについても疑うたがわしいと言いわざるをえない。アフガニスタン国内こくないに潜伏せんぷくし国外こくがいに対にたいして脅威きょういを与あたえるという懸念けねんはぬぐえず、引き続ひきつづき十分じゅうぶんな警戒けいかいが必要ひつようだ」と述のべました。