Japanese News: 「技能実習制度を廃止新制度へ移行を」政府の有識者会議

政府せいふの有識者ゆうしきしゃ会議かいぎは、外国がいこく人じんが働はたらきながら技術ぎじゅつを学まなぶ技能ぎのう実習じっしゅう制度せいどを廃止はいしすべきだとした上うえで、人材じんざい確保かくほなどを目的もくてきに中ちゅう長期ちょうき的てきな滞在たいざいを円滑えんかつにし、働はたらく企業きぎょうの変更へんこうも一定いってい程度ていど認みとめるよう緩和かんわする新あらたな制度せいどへの移行いこうを求もとめるたたき台たたきだいを示しめしました。

外国がいこく人じんが日本にっぽんで働はたらきながら技術ぎじゅつを学まなぶ技能ぎのう実習じっしゅう制度せいどは、発展はってん途上とじょう国こくの人材じんざい育成いくせいを通つうじた国際こくさい貢献こうけんを目的もくてきとする一方いっぽう、実際じっさいは労働ろうどう環境かんきょうが厳きびしい業種ぎょうしゅを中心ちゅうしんに人手ひとでを確保かくほする手段しゅだんになっていて、トラブルが相次あいつぐなど、目的もくてきと実態じったいがかけ離かけはなれているといった指摘してきも少すくなくありません。

10日にち、政府せいふの有識者ゆうしきしゃ会議かいぎは、この技能ぎのう実習じっしゅう制度せいどを廃止はいしし、新あらたな制度せいどへの移行いこうを求もとめる、中間ちゅうかん報告ほうこくのたたき台たたきだいを示しめしました。

新あらたな制度せいどでは人材じんざい育成いくせいだけではなく、働はたらく人材じんざいの確保かくほを主おもな目的もくてきに掲かかげ、これまで原則げんそくできなかった「転籍てんせき」と呼よばれる働はたらく企業きぎょうの変更へんこうも、従来じゅうらいに比くらべて緩和かんわし、一定いってい程度ていど認みとめるとしています。

また、3年ねん以上いじょうの実習じっしゅうを修了しゅうりょうした技能ぎのう実習じっしゅう生せいが試験しけんを免除めんじょされる「特定とくてい技能ぎのう」により、円滑えんかつに移行いこうできるようにして、中ちゅう長期ちょうき的てきに活躍かつやくする人材じんざいの確保かくほにつなげるとしています。

このほか、実習じっしゅう生せいの受け入うけいれを仲介ちゅうかいしてきた「監理かんり団体だんたい」について、受け入うけいれ企業きぎょうへの適切てきせつな監査かんさを怠おこたり、行政ぎょうせい処分しょぶんを受うける例れいが相次あいついでいるため、新あらたな制度せいどでは企業きぎょうからの独立どくりつ性せいの確保かくほなど、要件ようけんを厳格げんかく化かするとしています。有識者ゆうしきしゃ会議かいぎは秋あきごろをめどに、最終さいしゅう報告ほうこく書しょを提出ていしゅつする予定よていです。

有識者ゆうしきしゃ会議かいぎ委員いいんはおおむね賛同さんどう

新あらたな制度せいどへの移行いこうを求もとめるたたき台たたきだいについて、10日にちの有識者ゆうしきしゃ会議かいぎでは、委員いいんからおおむね賛同さんどうする声こえが聞きかれたということです。

ただ、一定いってい程度ていど緩和かんわするとした「転籍てんせき」をめぐっては、一部いちぶの委員いいんから「一般いっぱん的てきな労働ろうどう者しゃと同おなじように、通常つうじょうの労働ろうどう法制ほうせいのもとで自由じゆうな転職てんしょくを認みとめるべきだ」といった意見いけんが出だされた一方いっぽうで、都市とし部ぶに人材じんざいが偏かたよるおそれがあることを念頭ねんとうに、「地方ちほうを重視じゅうししてもらわないと困こまる」などといった意見いけんも出でました。

技能ぎのう実習じっしゅう制度せいどとは

技能ぎのう実習じっしゅう制度せいどは、開発かいはつ途上とじょう国こくへの技能ぎのう移転いてんという国際こくさい貢献こうけんを目的もくてきに1993年ねんに始はじまりました。建設けんせつ業ぎょうや食品しょくひん製造せいぞう業ぎょうなど86職種しょくしゅで、最長さいちょうで5年間ねんかん、働はたらきながら技能ぎのうを学まなぶことができます。

出入国しゅつにゅうこく在留ざいりゅう管理かんり庁ちょうによりますと、技能ぎのう実習じっしゅう生せいは去年きょねん6月末げつまつ時点じてんでおよそ33万まん人にんで、5割わり以上いじょうがベトナム人じんです。滞在たいざい期間きかんや実技じつぎ試験しけんの合格ごうかくによって「1号ごう」から「3号ごう」に分類ぶんるいされ、2020年度ねんどの月つきの平均へいきん支給しきゅう賃金ちんぎんは「1号ごう」がおよそ17万まん円えん、「3号ごう」が20万まん円えん余あまりでした。

技能ぎのう実習じっしゅう生せいは人材じんざい難なんが深刻しんこくな地方ちほうや中小ちゅうしょう企業きぎょうでニーズが高たかい一方いっぽう、違法いほうな低てい賃金ちんぎんで長時間ちょうじかん労働ろうどうを強制きょうせいされたり、実習じっしゅう先さきで暴力ぼうりょくを受うけたりするケースがあとを絶たちません。

また、実習じっしゅう生せいの5割わり以上いじょうが母国ぼこくの送り出おくりだし機関きかんや仲介ちゅうかい者しゃに手数料てすうりょうなどを払はらうため、来日らいにち前まえに借金しゃっきんを背負せおっています。転職てんしょくや「転籍てんせき」と呼よばれる働はたらく企業きぎょうの変更へんこうも、原則げんそくできないことなどから、おととし、職場しょくばから逃げ出にげだした実習じっしゅう生せいはおよそ7000人にんに及およびました。

こうした実態じったいを見直みなおすため、去年きょねん11月つき、政府せいふの有識者ゆうしきしゃ会議かいぎが設置せっちされ、翌よく12月つきから4回かいにわたって議論ぎろんが行おこなわれてきました。

会議かいぎでは、委員いいんから「技能ぎのう実習じっしゅう生せいは国際こくさい貢献こうけんに大おおきな役割やくわりを果はたしている」「中小ちゅうしょう企業きぎょうにとって受け入うけいれは必須ひっすだ」などと存続そんぞくを求もとめる声こえが挙あがる一方いっぽう、「目的もくてきと実態じったいのかい離かいりは明あきらかで、人権じんけん侵害しんがいにつながる構造こうぞう的てきな要因よういんだ」「外国がいこく人じん労働ろうどう力りょくを安やすく使つかうという考かんがえでは人材じんざい獲得かくとくの国際こくさい競争きょうそうに勝かてない」「労働ろうどう力りょくとして正面しょうめんから認みとめ、長ながく日本にっぽんで生活せいかつ者しゃとして暮くらせる仕組しくみを考かんがえるべきだ」「実態じったいに合あわせて廃止はいしした上うえで、国内こくない産業さんぎょうの人材じんざい確保かくほの制度せいどとして再さい出発しゅっぱつすることが必要ひつようだ」などの指摘してきが相次あいつぎ、制度せいどの改善かいぜんや廃止はいしを求もとめる意見いけんが広ひろがっていました。

技能ぎのう実習じっしゅう生せいを受け入うけいれる企業きぎょうは

技能ぎのう実習じっしゅう生せいを受け入うけいれている企業きぎょうの中なかには、人材じんざい確保かくほなどを目的もくてきとした新あらたな制度せいどへの移行いこうを前向まえむきに受け止うけとめつつも、転籍てんせき制限せいげんの緩和かんわによる人材じんざい流出りゅうしゅつに懸念けねんを示しめすところもあります。

8年ねん前まえから技能ぎのう実習じっしゅう生せいを受け入うけいれている岐阜ぎふ県けんの縫製ほうせい会社かいしゃでは、従業じゅうぎょう員いん15人にんのうち、ベトナム人じん実習じっしゅう生せいが7人にんを占しめています。

いまの技能ぎのう実習じっしゅう制度せいどは国際こくさい貢献こうけんが目的もくてきとされていますが、日本人にっぽんじんの働き手はたらきてが不足ふそくするなか、会社かいしゃにとって実習じっしゅう生せいは働き手はたらきてとしても重要じゅうような役割やくわりを担になっていて、欠かかせない存在そんざいとなっています。

会社かいしゃでは新あたらしい制度せいどで「人材じんざいの確保かくほ」が目的もくてきとして掲かかげられることで、労働ろうどう者しゃとしての受け入うけいれがようやく可能かのうになり、制度せいどと現実げんじつとの矛盾むじゅんがなくなると肯定こうてい的てきに捉とらえています。

一方いっぽう、実習じっしゅう先さきを変更へんこうする「転籍てんせき」の制限せいげんの緩和かんわについては、懸念けねんもあるといいます。会社かいしゃでは、実習じっしゅう生せいに日本人にっぽんじんと同おなじ水準すいじゅんの給料きゅうりょうを支払しはらっていて、受け入うけいれにあたっては渡航とこうに関にかんする費用ひようや入国にゅうこく後ごの日本語にほんごの講習こうしゅう料りょうなども負担ふたんしています。

日本人にっぽんじんを雇やとう場合ばあいより費用ひようがかかることもありますが、人手ひとで不足ふそくの中なか、実習じっしゅう生せいに頼たよらざるを得えないのが現状げんじょうで、もし、すぐに仕事しごとを辞やめて給料きゅうりょうの高たかい都市とし部ぶの企業きぎょうなどに転籍てんせきするようなことになれば、立たちゆかなくなるといいます。

縫製ほうせい会社かいしゃ「アイエスジェイエンタープライズ」の井川いかわ貴裕たかひろ代表だいひょうは、「日本人にっぽんじんの新卒しんそつと比くらべて外国がいこく人じんの方ほうが費用ひよう負担ふたんはとても大おおきく、すぐに転籍てんせきされるとその費用ひように見合みあわず、厳きびしい。日本人にっぽんじんと同様どうように外国がいこく人じんの人権じんけんを守まもるのは当然とうぜんだが、地方ちほうの小しょう規模きぼ事業じぎょう者しゃの実情じつじょうを踏ふまえて、今後こんごの議論ぎろんを進すすめていってほしい」と話はなしていました。

技能ぎのう実習じっしゅう生せいを支援しえんする団体だんたいは

外国がいこく人じん技能ぎのう実習じっしゅう制度せいどをめぐっては長時間ちょうじかん労働ろうどうや賃金ちんぎんの未払みはらいなどのトラブルのほか、職場しょくばでの暴力ぼうりょくといった人権じんけん侵害しんがいの訴うったえもあとを絶たちません。

東京とうきょう・中野なかの区くの「日にち越えつともいき支援しえん会かい」では、2020年ねんからベトナムからの実習じっしゅう生せいなどの保護ほごや支援しえんにあたっています。

去年きょねん12月つきから支援しえんしている20代だいの男性だんせいは、関西かんさいの建設けんせつ会社かいしゃで働はたらいていましたが、仕事しごとでミスをするたびに職場しょくばの日本人にっぽんじんから殴なぐられ、違ちがう実習じっしゅう先さきに移うつる「転籍てんせき」を申し出もうしでても断ことわられたということです。

男性だんせいは「転籍てんせきできないと言いわれ、不信ふしん感かんを持もちました。日本にっぽんはすごく発展はってんした国くにだけど悪わるい面めんもある。日本にっぽんで働はたらく外国がいこく人じんからするととても不満ふまんで、不ふ平等びょうどうな扱あつかいを受うけていると感かんじる」と話はなしていました。

この団体だんたいにはことしに入はいってからも300件けんを超こえる相談そうだんが寄よせられているということです。

団体だんたいではトラブルがあとを絶たたないのは、継続けいぞく的てきな技能ぎのうの習得しゅうとくを理由りゆうに「転籍てんせき」と呼よばれる実習じっしゅう先さきの変更へんこうが原則げんそく、認みとめられていないことや、企業きぎょうに実習じっしゅう生せいを仲介ちゅうかいしトラブルが起おきた場合ばあいに対応たいおうにあたる「監理かんり団体だんたい」の支援しえんが十分じゅうぶんでないことがあると考かんがえています。

団体だんたいの吉水よしみず慈豊ゆたか代表だいひょうは「技能ぎのう実習じっしゅう制度せいどは技能ぎのうの移転いてんを目的もくてきとしているが、実態じったいは人手ひとで不足ふそくの労働ろうどう力りょくの穴埋あなうめとして受け入うけいれていることが問題もんだいになっている。人権じんけん侵害しんがいやパワハラにあったり強制きょうせい帰国きこくさせられそうになったりしたときにSOSが届とどかないということがないよう、スムーズに転職てんしょく先さきを見みつけると言いうシステムが大事だいじだ」と話はなしています。

その上うえで今回こんかい発表はっぴょうされたたたき台たたきだいについては、「技能ぎのうを学まなぶ実習じっしゅう生せいという位置いちづけから労働ろうどう者しゃとして受け入うけいれることを打ち出うちだしたことで、1つ評価ひょうかできるかなと思おもっている。ただ、ちゃんとした受け入うけいれ方かたができるかは別べつの話はなしで、できるだけたくさんの現場げんばの声こえを拾ひろってもらい、新あたらしい制度せいどの見直みなおしにつなげてほしい」と話はなしていました。