この説明会は、高額な飲食代金をホストが立て替える「売掛金」をめぐるトラブルが問題となる中、ホストクラブに法令を順守した営業を呼びかけようと警視庁が臨時で開いたもので、新宿区の担当者のほか、店の責任者などおよそ140人が出席しました。
はじめに、警視庁保安課の大嶺忍課長が「違法な営業は経営者の責任で是正する必要がある。健全で安全な営業を心がけてほしい」とあいさつしました。
説明会は非公開で行われ、警視庁からは客に売春をあっせんするなど悪質なケースを検挙していることなどを伝えたということです。
また、警視庁と新宿区が行った調査で、歌舞伎町に設置されたホストクラブの看板のうち、必要な設置申請がなかったり、建物の壁に占める看板の面積が基準を超えていたりするなど都の条例に違反するケースが少なくとも数十件、確認されたことが報告されたということです。
これについて、申請の許可などを担当する区の担当者が自主的な改善を求めたほか、警視庁の担当者からは指導や撤去に応じない場合は取締りの対象となることを伝えたということです。
看板には売り上げ上位のホストの写真が使われることが多く、ホストが客に「看板に載りたい」などと高額な注文をあおってトラブルにつながるケースもあるということで、警視庁は新宿区と連携し指導を進めることにしています。
東京都の条例 看板設置には許可必要
東京都の屋外広告物条例は、良好な景観の形成や公衆への危害の防止などを目的に制定されていて、看板を設置する際には許可を得る必要があります。
条例では、壁に看板を設置する場合には、看板の面積を壁の3割以下とすることや、窓や開口部を塞がないこと、それに、同じ内容の看板は5メートル以上の間隔をあけることなどが定められています。
こうした基準に違反した場合は、罰則も設けられています。
屋外広告をめぐっては、荷台に広告を掲示する「アドトラック」と呼ばれる宣伝車が、景観や交通環境の悪化につながっているとして問題視されていて、東京都は規制を強化することにしています。
現役ホスト「看板は店からホストへの “褒美”」
新宿 歌舞伎町のホストクラブで月に1000万円以上を売り上げるという現役ホストの男性によりますと、ホストクラブの看板は客を呼び込む広告や宣伝の効果よりも、店からホストへの「褒美」の意味合いが大きいといいます。
男性は「目立ちたいとか有名になりたいなどと思ってホストをしている人も多いので、看板に掲載されることは『年間売り上げ1億円オーバー』など同じく『称号』の1つだ。その枠を取り合うことでホストたちのモチベーションも上がる」と話しました。
また、看板に載るために客に注文を求めることが業界の中では常識になっているとして、「客にとっても自分の担当のホストが看板に載ることが1つのゴールなので、『お金を使ってほしい』と言いやすい」と語りました。
そのうえで、こうしたやり方が客の支払い能力を超えた注文につながっているとも言い、「1000万円を売り上げた人に看板の枠を与えるとなれば、客は1000万を用意するために多少無理な働き方や夜の仕事を始めるなどの選択肢が出てくる。目標にたどりつくために無理な手段を取ってしまう部分はあると思う」と話しました。
ホストから “一緒に看板を目指そう” と言われ高額な注文
新宿 歌舞伎町のホストクラブに通っていた23歳の女性は「当時、ホストから『一緒に看板を目指そう』と言われて高額な注文を重ねていた。指名しているホストが看板に使われることは客にとってもステータスという意識だった」と話しています。
ホストの売り上げの順位が下がれば看板に使われなくなるため、「担当のホストにはずっと看板に載っていてほしい」という思いから、入れ込むきっかけにもなっていたということです。
女性は今、性被害の問題に取り組むNPOで活動していて、活動の中で同じような心境を打ち明ける女性の声を多く聞いたということです。
女性は「孤独感や親との関係に悩む中で、当時はホストクラブが居場所になっていた。看板というと外向きなアピールというイメージが一般的だと思うが、実態は客やホストがより競争できるようにする内向きなシステムだと感じる」と話していました。
ホストクラブ 客の家族などから相談相次ぐ
ホストクラブをめぐる問題の相談に応じる警視庁の専用の窓口には、客の家族などからの相談が相次いでいます。
警視庁によりますと、去年12月末の開設からおよそ2か月間の相談件数は130件を超えていて、料金トラブルのほか、「娘がホストに入れ込んで大学を辞めてしまった」とか、「売春や性風俗の仕事をしているようだ」などといった相談が多く寄せられているということです。
新宿 歌舞伎町のホストクラブでは、ホストや店の経営者が逮捕される事件も相次いでいて
▼先月、売掛金の回収のため、客の女性に売春の客待ちを強要したとして元ホストが逮捕されたほか、
今月には
▼客の女性に「刑務所行きになる」などと威圧的に話して消費者金融の借り入れを申し込ませたとしてホストが逮捕されています。
警視庁は、売掛金などをめぐってホストクラブ側から脅しや暴力、それに、売春の強要などの被害を受けた場合は、ひとりで悩まずに相談してほしいと呼びかけています。
警視庁の電話相談は
▽平日の午前8時半から午後5時15分までは03-3227-8335で
▽夜間と休日は、警視庁少年育成課の相談電話「ヤング・テレホン・コーナー」03-3580-4970で受け付けています。