日本新聞: ミャンマー避難民“少なくとも10万人” 人権状況悪化懸念国連

ミャンマーでは、軍ぐんに弾圧だんあつされた市民しみんが銃じゅうで武装ぶそうするなどして軍ぐんに対にたいし武力ぶりょくによる抵抗ていこうを強つよめていて、各地かくちで戦闘せんとうが起おきています。国連こくれんは戦闘せんとうの影響えいきょうで、少すくなくとも10万まん人にんが避難ひなんを余儀よぎなくされているとして人権じんけん状況じょうきょうの悪化あっかに強つよい懸念けねんを示しめしています。

ミャンマーでは、軍ぐんへの抗議こうぎ活動かつどうに参加さんかする市民しみんに治安ちあん部隊ぶたいが発砲はっぽうするなどして、人権じんけん団体だんたいのまとめで、12日にちまでに862人にんが死亡しぼうしました。

軍ぐんに弾圧だんあつされた市民しみんは銃じゅうで武装ぶそうしたり、少数しょうすう民族みんぞくの武装ぶそう勢力せいりょくから軍事ぐんじ訓練くんれんを受うけたりして武力ぶりょくによる抵抗ていこうを強つよめているのに対にたいし、軍ぐんは空爆くうばくを行おこなうなど各地かくちで戦闘せんとうが起おきています。

こうした中なか、現地げんちで人道じんどう支援しえんを行おこなっている国連こくれんのアンドリュー・カークウッド氏しがNHKのオンラインでのインタビューに応おうじました。

カークウッド氏しは、東部とうぶのカヤー州しゅうについて、市民しみんが武装ぶそう勢力せいりょくと連携れんけいして軍ぐんと激はげしく戦たたかっていると指摘してきしたうえで「市街しがい地ちで銃弾じゅうだんや迫撃はくげき砲ほうが使用しようされ、遊あそんでいた子こどもが亡なくなったという報告ほうこくもある」と述のべ、この州しゅうだけで10万まん人にんが住すまいを追おわれ避難ひなんを余儀よぎなくされていることを明あきらかにしました。

また、避難ひなん民みんへの支援しえんについて「衛生えいせい的てきな水みずや食料しょくりょうの確保かくほは限かぎられている。戦闘せんとうにより必要ひつような支援しえん物資ぶっしも届とどかなくなっている」と述のべ、人権じんけん状況じょうきょうの悪化あっかに強つよい懸念けねんを示しめしています。

「戦たたかわないと次つぎの世代せだいも弾圧だんあつで苦くるしむ」武力ぶりょくで抵抗ていこうの若者わかものたち

軍ぐんの弾圧だんあつから逃のがれ、少数しょうすう民族みんぞくの武装ぶそう勢力せいりょくが支配しはいする地域ちいきで軍事ぐんじ訓練くんれんを受うけている22歳さいの男性だんせいが匿名とくめいを条件じょうけんに取材しゅざいに応おうじました。

男性だんせいは、ことし2月つきのクーデターの直後ちょくごから第だい2の都市としマンダレーで軍ぐんへの抗議こうぎデモを行おこなってきましたが、4月つき、数すう人にんの友人ゆうじんとともに、少数しょうすう民族みんぞくの支配しはい地域ちいきにある軍事ぐんじキャンプへ移動いどうし、訓練くんれんに参加さんかしました。

訓練くんれんに参加さんかするきっかけは、一緒いっしょにデモをしていた知人ちじんが銃撃じゅうげきされて死亡しぼうしたことでした。

男性だんせいは、キャンプの場所ばしょや運営うんえいの実態じったい、参加さんか人数にんずうなどは明あきらかにできないとしながらも、20代だいを中心ちゅうしんとした若者わかものが国内こくない各地かくちから集あつまって集団しゅうだん生活せいかつを送おくり、軍ぐんを離反りはんした元もと兵士へいしから銃じゅうの扱あつかい方かたなどを学まなんでいると話はなしています。

男性だんせいは「平和へいわ的てきにデモを行おこなっていたのに、軍ぐんは実弾じつだんを発砲はっぽうし、自宅じたくまで襲撃しゅうげきした。勝利しょうりするまで戦たたかう覚悟かくごだ」と話はなし、一連いちれんの訓練くんれんを終おえたあとは、民主みんしゅ派は勢力せいりょくが結成けっせいした「国民こくみん防衛ぼうえい隊たい」と呼よばれる部隊ぶたいに参加さんかする予定よていだということです。

一方いっぽう、東部とうぶのカヤー州しゅうの25歳さいの男性だんせいは、猟銃りょうじゅうなどを武器ぶきに、自動じどう小銃しょうじゅうや重火器じゅうかきで武装ぶそうした治安ちあん部隊ぶたいと戦たたかっていると話はなしています。

武器ぶきが不足ふそくするなか、少数しょうすう民族みんぞくの武装ぶそう勢力せいりょくから武器ぶきの支援しえんを受うけているということです。

男性だんせいは「今後こんごさらに戦闘せんとうは大おおきくなり、さらに多おおくの避難ひなん民みんが出でることになるだろう。私わたし自身じしんもいつ撃うたれて死しぬかわからないが、戦おののい続つづけなければならない。もし戦たたかわなければ、私わたしたちの次つぎの世代せだいも軍ぐんの弾圧だんあつで苦くるしむことになる」と話はなしていました。

ミャンマーでは、民主みんしゅ化かを求もとめる市民しみんを支援しえんする少数しょうすう民族みんぞくの武装ぶそう勢力せいりょくと軍ぐんの戦闘せんとうも断続だんぞく的てきに行おこなわれ、先月せんげつには、北部ほくぶカチン州しゅうで空爆くうばくを行おこなっていた軍ぐんのヘリコプター1機きが撃墜げきついされています。

避難ひなんする住民じゅうみんは

大勢たいせいの人ひとたちが避難ひなんを余儀よぎなくされているカヤー州しゅうで人道じんどう支援しえんを行おこなうボランティアの男性だんせいが撮影さつえいした映像えいぞうには、森もりの中なかにある竹たけやシートでできたテントで数すう人にんが肩かたを寄よせ合あいながら避難ひなんしている様子ようすが確認かくにんできます。

男性だんせいによりますと、地域ちいきの道路どうろが軍ぐんによって破壊はかいされたり封鎖ふうさされたりしているため、医薬品いやくひんや食料しょくりょうなどの支援しえん物資ぶっしが届とどかず、不足ふそくしているということです。

また、連日れんじつ夜間やかんに銃声じゅうせいが聞きこえるため眠ねむれなかったり、衛生えいせい環境かんきょうが悪わるかったりして、体調たいちょうを崩くずす子こどもたちも相次あいついでいるということです。

2週間しゅうかん前まえから家族かぞく6人にんで森もりの中なかに避難ひなんしているという男性だんせいは「このままでは、食料しょくりょうが尽つきて死しんでしまう。しかし、住すんでいた村むらでは重火器じゅうかきの大おおきな音おとが鳴り響なりひびき、兵士へいしたちも大勢たいせいいた。今いまは村むらには戻もどれないし、戻もどりたくない」と話はなしていました。

また、子こどもと一緒いっしょに避難ひなんをしている女性じょせいは「軍ぐんに見みつからないようにするため夜よる、ろうそくの明あかりをつけることもできない。子こどもは毎日まいにち夜よるが来くるのを怖こわがっているし、兵士へいしに撃うたれるのではないかと恐おそれている。こんな経験けいけんはしたことがない。激はげしい雨あめも降ふるし早はやく安全あんぜんな場所ばしょに行いきたい。軍ぐんの独裁どくさいのもとでは暮くらしたくない」と話はなしていました。

専門せんもん家か「国際こくさい社会しゃかいが一致いっちして軍ぐんに働はたらきかけを」

隣国りんごくのタイで、ミャンマー情勢じょうせいについて研究けんきゅうしているスパラク・ガンジャナクンディ氏しは「軍ぐんが市民しみんの平和へいわ的てきなデモを力ちからで抑おさえこもうとしているため、市民しみんは武器ぶきを手てに取とって自分じぶん自身じしんを守まもらざるをえなくなっている」と指摘してきしています。

そのうえで「軍ぐんの兵力へいりょくはおよそ40万まん人にんで、近代きんだい的てきな兵器へいきや戦車せんしゃ、銃じゅうも備そなえている。民主みんしゅ派は勢力せいりょくが結成けっせいした『国民こくみん防衛ぼうえい隊たい』は軍事ぐんじ力りょくでは軍ぐんに到底とうていかなわない」と分析ぶんせきしています。

そして「戦闘せんとうが行おこなわれれば、多おおくの命いのちが失うしなわれ、多おおくの人ひとが避難ひなんを余儀よぎなくされる」と述のべ、戦闘せんとうが拡大かくだいすれば、市民しみんの犠牲ぎせいがさらに増ふえるおそれがあると懸念けねんを示しめしています。

スパラク氏しは「短みじかい期間きかんで結果けっかを出だすのは難むずかしいかもしれないが、国際こくさい社会しゃかいが一致いっちしてミャンマー軍ぐんに働はたらきかけを行おこなうことが重要じゅうようだ」と述のべ、ASEAN＝東南アジアとうなんあじあ諸国しょこく連合れんごうをはじめとする国際こくさい社会しゃかいが軍ぐんに対にたいし、市民しみんへの弾圧だんあつをやめるよう粘り強ねばりづよく働はたらきかけることが重要じゅうようだと話はなしています。