過去にたびたび噴火を繰り返してきた火山で大規模な噴火が起きたのは、日本時間の15日午後1時ごろでした。噴煙は上空高くへと上がり、気象庁によると16キロに達しました。
気象衛星の画像でも灰色の噴煙が同心円状に広がる様子が確認でき、約2時間後の午後3時ごろには直径300キロ、北海道に匹敵するほどの大きさになりました。
気象庁の地震火山部はトンガ諸島周辺で観測された津波のデータなどをもとに、規模の大きな地震が発生したと仮定し、津波の日本への影響についてシミュレーションなどを行いました。
小笠原諸島の父島では想定より2時間半余り早い午後7時58分に第一波が到達しました。 一方、気象庁内部ではあるデータに関心が集まっていました。日本で潮位の変化が観測され始めた午後8時ごろ、全国各地で大きな“気圧の変化”が起きていたのです。 さらに、地震による一般的な津波では日本に到達するまでの海外の観測地点で、順番に潮位の変化が観測されるはずですが、その変化はほとんど見られませんでした。 「気圧の変化が起きたということなら噴火の空振(空気の振動)で日本に波が来たということか?」 「前代未聞の事態だ」(気象庁幹部) 各地の潮位は上昇し、鹿児島県の奄美大島の小湊では、午後11時55分に津波警報の基準を超える1メートル20センチを観測。 「防災上の警戒を呼びかけなければいけないレベルまで来ている。津波警報で伝えるしかない」(気象庁幹部) こうした観測状況を踏まえ、気象庁は日付が変わった16日午前0時15分、鹿児島県の奄美群島とトカラ列島に津波警報を、北海道から沖縄にかけての広い範囲に津波注意報を発表しました。前例のない状況の中で、情報を迅速に伝達することを重視した判断でした。
「今回のような特異な海面の変動や潮位の変化を伝える手段がとっさに無いなかで、津波警報や注意報の枠組みを使って伝えるという運用を初めて実施した」 現在、火山の噴火に特化した津波の情報を伝える仕組みはありません。束田課長は観測データを詳細に分析したうえで、よりよい情報伝達に向けて今後、検討していくと述べました。
また、火山の噴火はおさまるまでに長期間かかることもあり、今後、どのように推移するのか、予断を許さない状況です。さらに、過去には「海底地すべり」によって津波が巨大化するケースも報告されるなど、地震に伴う通常の津波とは異なる形で、大きな潮位変化が発生することはこれまでにも実際に起きています。 海岸付近にいる場合にはそうしたことをしっかり意識したうえで、防災機関から情報が出されるなどしたら、すぐに高台へ避難できるような心構えをしておくことが大切だと思います。
“前代未聞”の事態 気象庁では…
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