雄花の数が多く確認された地域では今シーズン、スギ花粉の飛散量が多くなると予想され、専門家は「花粉症になっていない人が新たに花粉症になったり、花粉症の人の症状が重くなったりする。早めの対策が必要だ」としています。
スギの雄花 近畿で5倍のところも
環境省はスギ花粉の飛散量を予測するため毎年、スギの雄花の数を調べていて、去年の11月から12月にかけてスギが少ない沖縄県を除く46都道府県で調査を行いました。
それによりますと、確認された雄花の数は地域によってばらつきはあるものの、過去10年の平均値と比べ、全国的にやや多い傾向だったということです。
このうち、近畿では雄花の数が例年に比べ、京都で564%、大阪で492%、奈良で430%などと特に多かったということです。
このほか、徳島で239%、静岡で215%、福岡で214%などと例年の2倍以上確認されたということです。
また、中国地方では、鳥取で151%、島根で145%、岡山で113%などと例年よりやや多く確認されたということです。
さらに、関東地方では例年と比べて、千葉で175%、神奈川で144%、埼玉で107%、東京で71%だったということです。
一方、東北地方では、山形で25%、青森で26%、岩手で26%となるなど、例年より少なかったということです。
スギ花粉の飛散のシーズンは例年2月ごろからですが、東京都によりますと、都内ではすでに今月8日から花粉が飛び始めていて、環境省はマスクやメガネを予防的に着用することや、飛散量が極めて多い日にはテレワークを活用することなど対策の徹底を呼びかけています。
【都道府県別 一覧】
ことしの花粉「早く」「多い」と予測 なぜ?
花粉の調査をしている神奈川県自然環境保全センターの齋藤央嗣主任研究員によりますと、神奈川県厚木市のセンターの敷地にあるスギ林では、今月7日に花粉の飛散が確認されました。
飛散開始が「早く」、量も「多い」と予測されることしの花粉。齋藤さんは、去年夏の猛暑に加えて秋まで気温の高い日が続いた厳しい残暑の影響を指摘します。
スギの木は、気温が高い時期に花粉を作る雄花の花芽ができます。去年は、夏の暑さで花芽が多くできた上、秋まで暑さが続いたため、長い期間作られ続けたといいます。そして、多くできた花芽の中で例年より早く花粉を放出させる雄花が見られたということです。
神奈川県自然環境保全センター 齋藤央嗣主任研究員
「1個の花芽の中の花粉の量は変わらないが、秋がずっと暑かったので、いつまでも分化していったので、大きい花芽だけでなく、小さいものも多く見られる状態だ。ことしのような花粉の多い年は、花粉症になっていない人が新たに花粉症になったり、花粉症の人の症状が重くなったりする。抗アレルギー薬の開発が進み、早くから飲み始めると効きやすい薬もあるので、処方を受けるなど早めの対策が必要だ」
ドラッグストア 2週間前倒しで特設コーナー
東京都内でも、統計を取り始めて以来、最も早い今月8日にスギ花粉の飛散が確認されました。街では、すでにくしゃみや鼻水など、花粉症の症状が出ているという声のほか、諦めの声も聞かれています。
20代女性
「少し早いが、すでにくしゃみががよく出ています。耳鼻科で薬を処方してもらいましたが、ひどくなると日常生活に支障が出そうです」
70代男性
「鼻水が出たり目が痒くなったりしています。でも、毎年のことだから諦めています。時期がすぎるのを待つしかないです」
こうした中、豊島区のドラッグストアでは、平年よりも早い飛散が予想されていたことから、例年1月下旬ごろに設ける花粉症対策の特設コーナーを2週間ほど前倒しして、今月8日に設置しました。
特設コーナーには、マスクや鼻炎薬、それに花粉が顔や髪につきにくくするスプレーなどが並べられています。
店によりますと、症状の出始めが早かったことや特設コーナーを前倒しで設置したことなどから売り上げは好調で、ここ1週間の売り上げは例年の1.2倍となっているということです。
ドラッグストアの担当者
「夏の猛暑もあって花粉の飛散量が多く、飛散も早いことが予想されたので、全店舗で関連商品の展開を早めた。マスクが最も売れていて、鼻炎薬などの関連用品も売れ行きが好調だ。予防の意識も年々、高くなっていると思う」
花粉対策の新商品、続々
【花粉がつきにくいリュック】
雑貨を取り扱う都内の専門商社が開発したのが、花粉がつきにくいリュックです。
もともと主に女性や子ども向けのバッグや洋服などを手がけていて、身動きの取りやすさを重視する子育て世代などからリュックの需要が高まっていることから開発しました。
最大の特徴は、花粉がつきにくい素材です。溝が少なく、浅い編み方のナイロン生地で、特殊加工によって花粉がつきづらく、落としやすくなっているといいます。
専門の第三者機関による試験で、花粉の「つきにくさ」と「落ちやすさ」で基準を満たす評価を受けたということです。
開発した会社の担当者
「洋服は払ったり洗ったりできるがバッグを洗うことはあまりない。家に入る前に少したたくだけで花粉が落ちるので、習慣にすることで花粉を家に持ち込まないことにつなげてほしい」
【花粉から目を守るサングラス】
花粉から目を守る新商品のサングラスも今月から販売されます。
販売する眼鏡専門店によりますと、新商品のサングラスは目元を覆うカバーを取り付けるタイプです。
取り外しが可能で、花粉シーズン以外では通常のサングラスとして使用できます。さらにカバーが目立たないようフレームやレンズのカラーを調整したといいます。
すでに同じようなタイプの眼鏡を販売していましたが、近年、紫外線対策への意識が高まっていることから、新たにサングラスも販売することになったということです。
眼鏡専門店の担当者
「花粉対策用の眼鏡だと着けた時の違和感のほか、おしゃれに見えないなどの声が寄せられていたが、そういった点が解消される形になっている。花粉からも紫外線からも目を保護してほしい」