数センチ単位の地形変化を捉えることができる人工衛星のデータを国土地理院が解析したところ、ずれ動いた断層は長さが数百メートル前後のものも含め、合わせておよそ230にのぼることがわかりました。
こうした断層は、地震を引き起こした断層に誘発されるように動くことから「誘発性地表地震断層」、通称「おつきあい断層」とも呼ばれています。
「おつきあい断層」は、熊本地震の2年後に発生した大阪府北部の地震や北海道胆振東部の地震でも確認されているということです。
国土地理院の藤原智 測地部長は「断層一つ一つがそれぞれ地震を引き起こすと考えられてきたが、必ずしもそうではないことがわかってきた。活断層の多様な動きを理解するうえで研究を進める必要がある」と話しています。
活断層に詳しい東北大学の遠田晋次 教授は動いた断層のずれがそれほど大きくなくても真上に建物があれば深刻な被害になるおそれもあるとして「活断層の真上だけでなく、広くその周辺にリスクがあることを理解しておくことが重要だ」と指摘しています。
国土地理院の解析では、2018年6月に起きた大阪府北部の地震で、震源から北西へ3キロほど離れた「有馬高槻断層帯」の一部がおよそ5キロにわたり、数センチほど上下や横にずれた痕跡が確認されたということです。 「有馬高槻断層帯」は主要活断層帯にも認定されています。
ずれは最大で10センチほどで、これまで活断層として確認されていなかった場所だということです。 国土地理院の藤原智測地部長によりますと、「おつきあい」で断層が動く詳しいメカニズムはまだわかっていないものの、地震を引き起こした活断層からの地震動や、地下にかかる力の変化によって誘発されて動いたと考えられるということです。 また、大阪府北部の地震のようにすでに知られている活断層が動かされる場合もあれば、北海道の地震のように知られていない断層が動かされることもあり、さらに研究が必要だとしています。
特に、地球観測衛星「だいち2号」に搭載されている「合成開口レーダー」は、衛星からマイクロ波を発射し地球から跳ね返る反射波を受信することで詳細な地形を把握することができます。 これまでも「おつきあい」で動く断層の存在は確認されていたものの、地震の前後のデータを比較することで地上での調査が難しい山奥や目視では見逃されがちなわずかな地形の変化も数センチの精度でつかめるようになったということです。
これらはいずれも一連の熊本地震でずれ動いた「誘発性地表地震断層」によって起きた被害です。 地震直後から現地調査を続けている東北大学の遠田晋次教授は、都市部では「より深刻な被害につながるおそれがある」と指摘しています。
2度にわたる大地震で誘発されてずれ動き、道路を横切るように一本の亀裂が確認されました。 亀裂の延長線上にはコンサルタント会社の建物があり、地震直後に遠田教授が撮影した写真には壁に複数の亀裂が確認できます。 会社を経営する男性によりますと、亀裂は室内の床や天井にまで及び、建物全体もわずかに傾いたということです。 男性は「当時は周りの建物を見てもそれほど大きな被害はなく、うちの建物が古かったので損傷が激しかったのだろうと思いました。ただ、地震後に行われた調査で断層の存在を知り、道路の亀裂に沿うように建物にもひびが入っていたので驚くと同時に怖くなりました」と話していました。 男性は建て替える際、建物の位置をこの断層の真上にならないよう変更したということです。 各地にある活断層や、社会や経済に特に大きな影響を与えるとして、国が重点的に調査や評価を行う「主要活断層帯」には都市部を通っているものも多くあります。 遠田教授は「規模の大きな内陸地震が起きると、揺れだけではなく、地表のずれによる被害も広域に及ぶ可能性が出てきた。まずは、主要活断層や活断層の場所を知ることが、備えの第一歩だと思う」と話しています。
熊本地震以降も各地で「おつきあい断層」確認相次ぐ
230もの断層の動きは宇宙から明らかに
都市部では深刻な被害のおそれも