学校生活におけるスマートフォン利用の実態とその影響
多くの保護者は、子どもを学校に送り出す際、その日一日中、子どもがスマートフォンに多くの時間を費やすことはないと考えがちである。しかし、米国医師会雑誌(JAMA)に発表された最新の研究結果によれば、現実はその期待とは大きく異なっていることが明らかとなった。
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のジェーソン・ナガタ准教授が主導した本研究によると、思春期の児童・生徒は、学校在学中にもかかわらず、1日平均70分もの時間をスマートフォンの利用に充てているという。しかも、その時間は本来、学習や課題に集中すべき授業中である場合が多いと指摘されている。
従来の調査では、10代の若者が1日に8時間半以上もスマートフォンや他のスクリーンデバイスを娯楽目的で使用していることが報告されてきたが、今回の研究はその一部に過ぎない。従来の自己申告方式では、児童が学校内でのスマホ利用を正直に申告しない可能性が高く、データの信頼性に疑問があった。一方、本研究では専用アプリを活用し、児童のスマホ利用時間および利用アプリの詳細を客観的に追跡した点が特徴的である。
調査の結果、児童が学校でスマートフォンを利用する時間の大半は、TikTokやInstagram、SnapchatなどのSNSに費やされていることが判明した。さらに、ゲームアプリやYouTube等の動画アプリにも、それぞれ平均15分程度を割いているという。児童の中には、学習支援のために計算機機能やインターネット検索を利用する必要があると主張する者もいるが、ナガタ氏は「実際に学校で使用されているアプリが学業に関連している可能性は極めて低い」と述べている。
多くの学校ではスマートフォンの使用を規則で制限しているものの、今回の調査からは、児童がその規制を巧妙に回避している実態が浮かび上がった。また、本研究はAndroid搭載のスマートフォン利用者のみを対象としており、iPhone利用者に関しては異なる傾向が存在する可能性も指摘されている。
研究チームは、米国の思春期脳認知発達(ABCD)研究の一環として、2022年9月から2024年5月までの複数週にわたり、計640名のデータを収集した。
ナガタ氏は、スマートフォンは子どもを夢中にさせるよう設計されており、その中毒性は否定できないとしつつ、児童を一方的に叱責するのではなく、スマートフォンの誘惑にどう向き合うべきかを一緒に考えることが重要だと強調する。まずは子どもと対話を重ね、ルール作りに積極的に参加させることが、責任あるテクノロジー利用のスキルを身につけるうえで有効である。
最も効果的な対策としては、スマートフォンを自宅に置いて登校するか、学校到着後に袋などにしまい込むことが推奨される。もし持参する場合でも、電源を切るかサイレントモードに設定し、通知による誘惑を最小限に抑える工夫が必要だ。
また、心理学者のメリッサ・グリーンバーグ氏は、親がスマートフォンを取り上げることよりも、スマートフォンを手放すことで得られる利点に目を向けるべきだと提案している。例えば、家族で2時間ほどスマートフォンを使わずに過ごし、その後の感想を共有することで、現実世界への没入感や対人関係の深まり、通知からの解放感など、デジタルデトックスの効果を実感できるという。
さらに、学業成績への影響についても留意が必要である。ナガタ氏の過去の研究では、SNSの利用頻度が高い児童は、2年後の語彙力、読解力、記憶力のテスト成績が低下する傾向が見られた。加えて、休み時間や廊下でSNSを利用することが、友人関係の構築を妨げる可能性もある。
人間関係や社会性を育むには、直接相手と向き合い、表情やボディランゲージを読み取る経験が不可欠であり、オンライン上では同様の有意義なつながりが必ずしも得られるとは限らない。
また、親自身のスマートフォン利用態度が、子どものデジタル機器利用に大きな影響を及ぼすことも指摘されている。
ナガタ氏は、親が模範となる行動を心がけ、例えば勤務中はスマートフォンをサイレントモードにするなど、子どもが身につけてほしい行動を自ら実践することの重要性を強調している。
スマートフォンの誘惑に抗うことがいかに困難であるかを理解することは、子どもへの共感を深め、家族でデジタルリテラシーを共有する上で有益であると言える。