FRBが本気ほんきの「タカ」に【経済けいざい記者きしゃコラム】

強硬きょうこうな態度たいど、武力ぶりょく行使こうしなどをためらわない強つよい姿勢しせいは「タカ派は」と呼よばれる一方いっぽう、平和へいわの象徴しょうちょうでもある「ハト」は平和へいわ主義しゅぎや穏おだやかな態度たいどを表あらわすときに使つかわれています。

金融きんゆうの世界せかいでの「タカ派は」は物価ぶっかの安定あんていを重視じゅうしし、金融きんゆう引き締ひきしめ的てきな政策せいさくを支持しじするスタンスのことを、「ハト派は」は景気けいきを下支したざさえするため、金融きんゆう緩和かんわ的てきな政策せいさくを支持しじするスタンスを意味いみします。

市場しじょうとの対話たいわを重視じゅうしすることで知しられるFRBのパウエル議長ぎちょうは、インフレ懸念けねんはありつつも急激きゅうげきな利上りあげには慎重しんちょうな、いわゆる「ハト派は」に近ちかい人物じんぶつとみられていました。

この中なかでパウエル議長ぎちょうは「今いまの経済けいざいにはもはや金融きんゆう政策せいさくの力強ちからづよい支援しえんは必要ひつようない」「政策せいさく金利きんりをまもなく引き上ひきあげることが適切てきせつだ」と述のべ、次回じかい・3月つきの会合かいごうで利上りあげを決定けっていする見通みとおしを明あきらかにしました。

また、パウエル議長ぎちょうは毎回まいかいの会合かいごうでの利上りあげの可能かのう性せいを否定ひていしなかったことから、インフレ抑制よくせいに向むけて市場しじょうの想定そうていよりも早はやいペースで金融きんゆう引き締ひきしめが行おこなわれるとの受け止うけとめが広ひろがりました。

穏おだやかな「ハト」とみられていたパウエル議長ぎちょうがついに鋭するどいタカに変身へんしんした瞬間しゅんかんでした。

これまでFRBはインフレの要因よういんはコロナ禍かの企業きぎょうの生産せいさん体制たいせいの混乱こんらんや原油げんゆ価格かかくなどのエネルギー価格かかくの高騰こうとうが主おもな要因よういんだと説明せつめいしてきており、これらが解消かいしょうされれば、物価ぶっか上昇じょうしょう率りつは低下ていかするとの認識にんしきでした。

しかし、価格かかく上昇じょうしょうがより幅広はばひろい商品しょうひんやサービスに拡大かくだいする中なかで労働ろうどう者しゃの賃金ちんぎんも上昇じょうしょう。求人きゅうじん数すうも過去かこ最高さいこう水準すいじゅんで賃金ちんぎんも早はやいペースで上昇じょうしょうしていることを踏ふまえれば、大胆だいたんに動うごかざるを得えないと、市場しじょう関係かんけい者しゃは強つよいメッセージを読み取よみとったのです。

賃金ちんぎん上昇じょうしょうの背景はいけいには新型しんがたコロナのオミクロン株かぶの感染かんせん拡大かくだいがあります。

アメリカでは経済けいざいを正常せいじょう化かさせようと企業きぎょう活動かつどうは活発かっぱつになりつつありますが、一方いっぽうで感染かんせんリスクを警戒けいかいしていったん職場しょくばを離はなれた人ひとたちが仕事しごとに戻もどるのを控ひかえる事態じたいが起おきていて人手ひとで不足ふそくは容易よういに解消かいしょうしないとの見方みかたもあります。

感染かんせん拡大かくだいが続つづけば人手ひとで不足ふそくが続つづき、事業じぎょうを続つづけたい企業きぎょうは賃金ちんぎんを引き上ひきあげる。この流ながれが高たかいインフレを定着ていちゃくさせてしまうのではないか。パウエル議長ぎちょうの鋭するどいタカの視線しせんはここに向むけられていたようです。

ある市場しじょう関係かんけい者しゃは「アメリカのインフレはより複雑ふくざつで長期ちょうきのものになる可能かのう性せいがあると受け止うけとめた」と話はなしていました。

28日にちは一転いってんして日経にっけい平均へいきん株価かぶかは大幅おおはば上昇じょうしょうに転てんじましたが、市場しじょうの不安定ふあんていさは払拭ふっしょく（ふっしょく）されていないように感かんじます。

パウエル議長ぎちょうが本気ほんきのタカに変かわったショックがどこまで金融きんゆう市場しじょうで尾おを引ひくか、そして何なによりFRBが過熱かねつが指摘してきされるアメリカ経済けいざいをいかに軟着陸なんちゃくりくさせられるか、私わたしもタカのように鋭するどい視線しせんで見みていきたいと思おもいます。

足元あしもとの業績ぎょうせきはもちろん、オミクロン株かぶがことし3月つき期きの決算けっさんに与あたえる影響えいきょうや、断続だんぞく的てきに続つづいている半導体はんどうたい・部品ぶひん供給きょうきゅう不足ふそくの解消かいしょうの見通みとおしなど各かく企業きぎょうの発言はつげんに注目ちゅうもくが集あつまりそうです。