この中では、「一日も早く治療薬を提供できるよう、今回の臨床試験の追加解析データを速やかに審査機関に提出する。また、現在進めている軽症や中等症などの患者を対象にした臨床試験での評価を加速し、結果が得られ次第、国の審査機関に速やかに提出する」としています。
そのうえで、「新型コロナウイルス感染症が世界的な脅威として人々の生活に大きな影響を与える中、パンデミックの早期終息による社会の安心・安全の回復に貢献するために、治療薬の開発に引き続き注力して参ります」としています。
当時、別の病気を治すための薬などを転用する動きが出る中、会社では、インフルエンザなど感染症の治療薬での実績があったことなどから、新型コロナウイルス向けの治療薬を目指すことを決めました。 去年7月には、健康な成人男性、75人を対象に安全性を確認するため初期段階の臨床試験を開始。 さらに2か月後の去年9月には、次の段階として、軽症の患者か、無症状の人を対象に一日1回、5日間にわたって薬を投与し、有効性や安全性を確かめる臨床試験に移りました。 当初は、昨年末までに厚生労働省に治療薬の承認申請を行うことを目標にしていますが、去年秋ごろから国内で患者数が減少し、臨床試験の対象者を確保するのが難航したことで、申請には至りませんでした。 ただ、年明け以降は感染の急拡大に伴って臨床試験への参加者が増え、申請に必要なデータを集めることができたといういうことです。 会社では、国から承認を受けたあとすぐに供給できるよう、すでに飲み薬の生産を始めていて、来月末までに100万人分の製造を目指すとしています。 塩野義製薬は、飲み薬と並行してワクチンの開発も進めていて、新型コロナの関連業務に研究員の8割を集中させるなど力を注いできました。 このほか国内の製薬会社では、大阪に本社がある「田辺三菱製薬」のカナダにある子会社が開発したワクチンが24日に現地で承認されるなど、欧米の製薬大手に遅れは取ったものの、治療薬やワクチンの実用化に向けた動きが進んでいます。
アメリカの製薬大手、ファイザーが開発した飲み薬「パキロビッドパック」と同様に、ウイルスが自身のRNAをコピーして増える準備段階で働く酵素を機能しなくすることでウイルスの増殖を抑えます。 会社が、今月7日に発表した12歳から60代までの新型コロナに感染した軽症や中等症、それに無症状の患者、69人を対象にした治験のデータでは、薬の投与を一日1回、3回受けたあとでは、感染性のあるウイルスが検出された人の割合が、薬の用量が多い場合には80%、用量が少ない場合は63%減少したとしています。 また、薬を服用したグループでは、ウイルスが陰性になるまでの時間が2日間短く、入院が必要になった人はおらず、副作用も軽度だったとしています。 25日に発表された軽症から中等症の428人の患者を対象にした治験の分析でも同様の結果が示されていますが、感染したときに現れる疲労感や体の痛み、熱っぽさやせきなど、12の症状を合わせてどの程度改善されたか、偽の薬を服用したグループと比較すると、投与から6日目までに有意な差は出なかったとしています。 一方で、鼻水や鼻づまり、喉の痛み、せき、息切れといった呼吸器の症状については改善を確認したとしています。 またオミクロン株に対する有効性については、実験で「高い抗ウイルス活性を確認している」としているほか、今回発表された治験の分析結果では、「オミクロン株流行後の感染者を中心に評価がなされた」としています。 新型コロナウイルスの治療に詳しい愛知医科大学の森島恒雄客員教授は、「12歳以上や重症化リスクがない人など、投与の対象が幅広いのが特徴で実用化されれば、薬を飲んで数日たつと職場に復帰できるインフルエンザのようになっていくかもしれない」と話しています。
「条件付き早期承認制度」は、患者数が少なく、大規模な治験が難しい病気の薬を想定して作られた仕組みで、治験の途中でも一定の有効性や安全性が確認できれば申請できるようになっています。 これまでに、がんや難病などの医薬品がこの制度のもとに承認されていますが、新型コロナの治療薬で適用されれば初めてになります。 これについて森島客員教授は、「海外でのコロナの治療薬の開発でも、治験の途中の段階で効果がはっきりすれば、承認申請するということは、普通に行われてきた。ただ、症例数の少なさを補強するため、薬が広く使われた後に、副作用や効果を追跡する調査が必要になる」と指摘しています。
開発までの経緯
承認申請した飲み薬ってどんな薬?
塩野義製薬 「条件付き早期承認制度」の適用を希望