JLPT N1 – Reading Exercise 117
「習慣の力」は、私たちの行動や思考に大きな影響を与えている。しかし、その影響の仕組みについては、意外と知られていない。ここで、習慣と意志力の関係を示す心理学実験を紹介したい。
この実験では、被験者に二つのグループに分かれてもらい、目の前にチョコレートとラディッシュ(大根の一種)を用意する。一方のグループにはチョコレートを食べることを許可し、もう一方のグループにはラディッシュしか食べてはいけないと指示する。どちらのグループも、その後に難しいパズルを解くように求められる。
両グループとも同じパズルに取り組むが、チョコレートを我慢したグループの方が、早くあきらめてしまう傾向が強かった。パズルの難易度や与えられた時間は同じであるにもかかわらず、である。
この結果は、意志力は有限であり、何かを我慢することで消耗することを示している。つまり、習慣的に我慢を強いられる状況では、その後の課題に対する集中力や忍耐力が低下しやすいのだ。しかも、意志力の消耗度合いは、本人の自覚や状況の受け止め方によって左右される。
たとえば、日々の生活で健康のために甘いものを我慢している人が、それを「自分の選択」と前向きに捉えれば、意志力の消耗は少ない。しかし、「仕方なく我慢している」と感じれば、意志力は急速に減ってしまう。現実の出来事は同じでも、それにどう向き合うかが、その後の行動や心理状態に大きな違いを生むのである。