JLPT N2 – Reading Exercise 31
音楽を聴いていると、時々「音が外れている」と感じる瞬間がある。しかし、それが必ずしも悪いとは限らない。その不完全さが、かえって心に残ることもあるのだ。
もちろん、作曲家や演奏者には伝えたい思いや表現したい世界がある。しかし、それが唯一の「正解」ではない。演奏者の意図を超えて、聴く人それぞれが自由に感じたり、思い出を重ねたりできることが、音楽の大きな魅力である。名曲と呼ばれる作品ほど、演奏ごとに違う表情を見せ、聴く人の心にさまざまな感情を呼び起こす。多様な感じ方ができることこそ、音楽の素晴らしさと言えるだろう。
だが、多くの人は「間違いのない演奏」や「正しい音」を求めがちだ。「音楽は難しい」「自分にはセンスがない」と感じるのは、音楽にも「正解」があると考えてしまうからかもしれない。海外では「音楽が好きじゃない」「演奏に興味がない」という人はいても、「よくわからない」と悩む人は少ないように思う。
ただし、「どこが良いのかわからない」と戸惑うのは大人だけだ。子供たちは、音楽を聴くときにそんなことは気にしない。それぞれの感じ方で、自由に音楽を楽しむ。(中略)
面白いと感じれば夢中になるし、そうでなければすぐに忘れてしまう。それでいいのだ。芸術との出会いは、まず感情を動かすことから始まるのだと思う。