JLPT N3 – Reading Exercise 38
私は今日、仕事の帰りに駅前のパン屋に寄りました。パンを焼く香ばしいにおいが店いっぱいに広がっていて、レジに並んでいると、ふと「それ」が聞こえてきました。
それは、どこかで聞いたことがある静かなピアノの曲でした。その優しいメロディーを聞いているうちに、私は急に中学生のころの放課後の教室を思い出しました。
当時、私は文化祭の実行委員をしていて、毎日遅くまで学校に残って準備をしていました。同じ委員だった佐藤くんという男の子と、看板を作ったり、劇の練習をしたりしました。作業をしていると、隣の音楽室から誰かがピアノを弾く音がよく聞こえてきたものです。二人で遅くまで頑張ったことは、私にとって「大切な宝物」です。
どうしてパン屋で急にあのころのことを思い出したのか、自分でもよく分かりませんでした。でも、よく考えてみると、あの日も教室の窓から、近くにあるパン工場のにおいが風に乗って届いていたのです。今日のパンのにおいと、店で流れていたあのピアノの曲が重なって、私の記憶を呼び起こしたのでしょう。