会談の議題は▼ウクライナの問題、▼サイバー攻撃、▼軍備管理や核軍縮、▼さらにプーチン政権による反体制派の弾圧の問題など多岐にわたるとみられています。
バイデン大統領は今週(13日)「関係改善に必要な条件を明確に示す」と述べ、会談ではアメリカ側の懸念を伝えてロシアに行動を促す考えを示し、相手の出方を慎重に見極めるとみられます。
一方で両首脳は軍備管理や核軍縮といった安全保障の問題では何らかの対話の枠組みを模索する考えも示し、プーチン大統領は「互いに利益のある分野においては機能するメカニズムを構築したい」と述べています。
ただ両国のメディアや専門家の間では今回の会談で大きな前進があるかについては懐疑的な見方が広がっています。
プーチン大統領がアメリカへの強硬姿勢を崩さないなかバイデン大統領は「相手の態度を変えられる保証はない。専制主義者は強大な力を持ち、国民に説明責任を果たす必要もないからだ」と述べています。
こうした中で首脳会談が冷えきった両国関係の修復のきっかけとなるかどうかが焦点となります。
バイデン大統領はロシアとは「安定的かつ予測可能」な関係を築きたいとしています。 そのうえでトップどうしの会談を行う目的について今週(13日)「ロシアとの関係改善に必要な条件を私から明確に示すことだ。最善の方法は私とプーチン大統領が直接会い、議論することだ」と述べ、アメリカの懸念を直接伝えて議論することが第一歩となるという見方を示しています。 そのうえで「対立を望んでいるのではなく、国際規範に反する行為をめぐる問題を解決したい。協力できる分野では何らかの戦略的な原則を打ちだすことができるかもしれない。われわれは準備ができている」と述べ、核軍縮といった安全保障の分野などで対話の枠組みや協力も模索したい考えです。 ただアメリカ議会などからはロシアの行動に大きな変化が見られないなかで首脳会談に踏み切ることはロシアに対する「譲歩ではないか」との批判の声もあがっています。 これに対してホワイトハウスは首脳会談後の共同記者会見を開かない方針を示していて、アメリカのメディアは両首脳が並んで会見に臨めば、ロシア側の主張に正当性を与えるおそれもあり、これを避けるねらいがあると指摘しています。 一方でバイデン大統領としては「最も重大な競争相手」と位置づける中国に対抗していく上でロシアとの関係をさらに悪化させることは避けたい思惑もあるとみられ、ロシアに対して弱腰だという批判をかわしながら、今後の両国関係にどのような道筋をつけるのか、その手腕が問われることになりそうです。
プーチン大統領は、今月4日、首脳会談について「両国関係の正常化に向けたさらなる措置を講じるための条件や、直面している問題を解決するための条件が作られることを願っている」と述べました。 プーチン大統領としては、会談を通して関係改善に向けた突破口が開かれるとまでは期待しないものの、ウクライナのクリミア併合などを受けて科されている経済制裁の緩和に向けた動きにつなげたい考えもあるとみられます。 そのためにもロシアは、アメリカと協力できる分野については対話を始めたい意向で、プーチン大統領は13日に放送された国営テレビのインタビューで「互いに利益のある分野においては、実際に機能するメカニズムを構築したい」と述べ、核軍縮を含む戦略的安定の問題や気候変動問題について対話の枠組みを構築したいという考えを示しました。 一方、サイバー攻撃をはじめ、ウクライナやベラルーシの情勢、それに反体制派の指導者ナワリヌイ氏をめぐる問題など、アメリカが批判しているテーマについては、政権の関与を否定したり、内政干渉だと非難したりして一歩も引かない構えです。 プーチン大統領としては、アメリカが中国を「最も重大な競争相手」と位置づけるなかで、ロシアに対しては譲歩も含めたアプローチをとってくる可能性もあるとみて、アメリカとの対話を有利な形で進めたい思惑もあるとみられます。
そして米ロ関係が冷え込んだままの状態で首脳会談を行うねらいについては「バイデン大統領は両国関係が危険な方向にエスカレートしないようガードレールを設置する必要性を繰り返し述べてきた」と指摘し、サイバー攻撃や極超音速兵器の開発など、アメリカの安全保障に直結する問題を外交を通じて制御していくためだと分析しました。 そのうえで、ロジャンスキー部長はプーチン大統領にあらゆる権力が集中しているロシアの現状に言及し「バイデン大統領自身もアメリカ政府高官も皆、米ロ関係は大統領どうしの直接のやり取りがなければ安定化しないと理解している。同時にそれだけでは不十分で、軍の制服組どうしのチャンネルなどが必要であることも認識している」と述べ、両国関係の戦略的安定のための対話を始めることで合意できるかが焦点の1つになるとの見方を示しました。 さらに両国の関係悪化でお互いの大使館の人員が縮小されている状況を元に戻せるかも焦点になると指摘しました。
ロシア側のねらいについてススロフ氏は「対立関係を操縦可能なものにして一定の枠の中で関係を発展させることにロシアは関心がある。バイデン政権に対して、越えてはならないレッドラインを明確に示すことがロシアにとって重要だ」と述べ、ロシアとしては、ウクライナやベラルーシなど、ロシアが勢力圏ととらえる地域の情勢や国内の政治問題などにアメリカが干渉を深めず対立を決定的なものにしないための具体的な方策を話し合いたい考えだろうと分析しました。 一方で「ロシアは、新たな軍拡競争をすることに関心はない」と述べ、核軍縮を含めた戦略的安定をめぐる問題については、核軍縮条約「新START」を5年延長することが決まった猶予を生かして幅広く意見を交わすきっかけが生まれることに期待を示しました。 またアメリカが中国と対立を深めている状況について「ロシアにとってかなり好都合な状況を作り出している。ロシアに新たな可能性を与えている」と述べ、ロシアが中国に接近していることもてこにアメリカとの交渉を有利に進められる環境にあると指摘しました。
このうち冷戦期の1985年11月には当時のレーガン大統領とゴルバチョフ書記長によるはじめての首脳会談が行われました。 このなかで両首脳は「核戦争に勝者はなく核戦争は決して行われてはならない」という原則を盛り込んだ共同声明を発表するなど、その後の核軍縮に向けた対話への機運を高めました。 ゴルバチョフ氏の通訳をつとめたパベル・パラジチェンコ氏は「中立国であり国際的に外交の舞台として長い伝統のあるジュネーブが当時、会談場所として選ばれた」と述べたうえで、会談については「最初はレーガン大統領は非常に批判的だったが会談が進むにつれて雰囲気が変わっていった」と述べ双方の立場に隔たりはあったものの、率直な話し合いがもたれたとしています。 また、ジュネーブでは2009年3月、当時のクリントン国務長官とラブロフ外相が会談を行いました。 クリントン国務長官が、ラブロフ外相に関係をやりなおすことを意味する「リセット」と書かれたボタンをプレゼントする一幕もあり、両者は関係改善を進めることで一致しました。 今回のバイデン大統領とプーチン大統領の首脳会談についてもこうした過去の経緯も踏まえてジュネーブが会談場所として最も適していると判断されたとみられます。 一方、スイスのパルムラン大統領は15日、ジュネーブ入りしたバイデン大統領と会談したあと、現地で記者会見し「アメリカとロシアが、両国と国際社会にとって有益な結果を得られることを願っている」と述べ、ジュネーブで開催される会談の成果に期待を示しました。
バイデン大統領のねらい
プーチン大統領のねらい
米 専門家「長く険しい道のりの始まり」
ロシア 専門家「対話始めることが重要」
両国の会談 たびたびジュネーブで