私が住んでいる街には広場があって、そこで毎週土曜日に集まりがあります。公の場所で許可のないデモが禁止されてしまったので、みんなでそこに集まって意見交換をしているだけなのですが、警察は毎回、来ます。
彼らは抗議を見つけたら、すぐに拘束するように指示されているのでしょう。 私がプラカードを掲げる時間もなかったくらいです。
警察官の態度は、普通な感じのような気もしますが、一部の警察官は彼らの仕事を増やしたことを迷惑そうにしていました。 また私がロシアの裏切り者だと思っている警察官もいて、汚い言葉で私を罵って侮辱したり、暴力をふるうと脅したりしてきます。 警察署にいた時間は2、3時間くらいでした。ロシアでは3時間以上拘束してはいけないことになっています。その後、釈放されました。 まだ、決定は出ていませんが、ロシア軍の信用を失墜させたとして、罰金が科せられることになるでしょう。 通常は3万ルーブル(日本円でおよそ5万円/4月23日時点)ほどですが、私は脚の障害があるので、1万5000ルーブル(日本円で2万5000円/4月23日時点)ほどになると思います。 (ロシア人の平均月収は5万6000ルーブルほど/2021年時点)
政権批判をして、これまでにも何度か拘束され、罰金を科せられたこともあります。政府に抗議の声を上げ始めてから、友達が私のことを避けるようになりました。
彼一人だけではありません、ほとんどの友達が私とのつながりを断ちました。 だから昔の友達とは話をしなくなってしまいました。
今ほどではありませんが、以前から、政府批判、抗議の声をあげるのはリスクがありました。職場を解雇されたりボーナスを減らされたり学校を退学させられたりなどリスクが。 それでも公に、抗議活動をする人たちがいます。 一方で、リスクが大きいため、声をあげたくても、あげられない人たちがたくさんいます。そうした人たちは、私たちのように公に抗議活動をする人たちに、寄付や支援することで、自分たちの考えや意見を示しています。 当局の取り締まりが厳しいロシアでは多くの人がこうして抗議に参加しているのです。 寄付は、だいたい1人あたり100~300ルーブル(日本円で150~500円程度/4月23日現在)ほどですが、多くの人たちが活動に共感し寄付をしてくれます。
抗議活動では、こうしたSNSを通じて情報を発信し共感を得ていたので、SNSを使えなくなったことで、抗議の声をあげたり、つながったりすることが難しくなりました。支援の声も減りました。 政府の弾圧もありますが、これらのSNSが使えなくなったことで、以前より抗議の声が見つけにくくなった気がします。 今はテレグラムというロシアのSNSやユーチューブなどで情報を発信していますが、それをブロックされてしまったり、情報を削除されてしまうことが今、最も恐れていることです。 人々が本当のことを言えなくなり、情報が発信できなくなり、抗議の声は抑えられてしまうでしょう。
たとえば、ウクライナへの連帯を示す(黄色と青を混ぜた色である)緑のリボンを街のあちこちに結んで、政府への抗議を示す人もいます。 また、あえて、政府のプロパガンダのチラシを街なかで配布しながら抗議の意志を示す人までいます。
みんなで集まって抗議の声をあげることもありますがその場合は、短時間で場所を変えながらやるようにしています。 当局もすべては追跡できませんので。
政府に影響をもたらすことができる方法は海外からのアクションです。多くの人がそう思っていると思います。 まずはもちろんプーチンを変えないといけないと思いますが、プーチンがいなくなっても、また彼のような独裁者があらわれて、同じことを繰り返すことになる運命にあると思います。 彼らをすべて変えればなりません。
ウクライナへの軍事侵攻を「戦争」と呼ぶだけで拘束されるなんておかしいと思いませんか。ウクライナのブチャの惨状を見て、こんなことが起きているのに、抗議しないと言うことはできません。
独立系のメディアの記者が広場に来て、私が拘束されたところを撮影し、インターネットで拡散してくれました。 プラカードを持って立っていると、すぐに警察が来て拘束されてしまいます。なのでメディアを通じて、多くの人たちに見てもらうことが大事なのです。 真実を広めるために。 「モスクワのこだま」のような大きな独立系のメディアは閉鎖に追い込まれました。あまり知られていないメディアは残っていますが、いつまで耐えられるかわかりません。 彼らが閉鎖に追い込まれないように、それまでにもっと活動できるように祈るしかないのです。
警察の対応はどうでしたか?
暮らしや生活に影響は?
抗議活動とはどういうもの?
侵攻後、政府の規制、取り締まりはどう変化?
政府の言論統制にどう対抗?
抗議の声を上げることで、政権が変わると思いますか?
リスクがあるのになぜ声を上げ続けるの?
こう話すのはロシアで暮らす男性です。ロシアでは、厳しい弾圧の中、SNSなどで反戦の声をあげ続けている人たちがいて、この男性もそうしたひとりです。
拘束された経緯、生活への影響、そして、声をあげ続ける理由について、話を聞かせてもらいました。
拘束されたときの状況を教えてください