ことし
8月の
台風10号による
大雨で、
災害弱者の
避難を
呼びかける「
避難準備情報」の
意味が
正しく
伝わらなかったことを
受けて、
国は、「
避難準備情報」の
名称を「
避難準備・
高齢者等避難開始」に
変更することなどを
決めました。ことし
8月の
台風10号による
大雨で、
岩手県岩泉町では、
高齢者などに
避難を
呼びかける「
避難準備情報」が
町から
発表されていましたが、
情報の
意味が
正しく
伝わらず、
高齢者グループホームで
避難が
行われない
中で
川が
氾濫し、
入所していたお
年寄り
9人が
死亡しました。
これを受けて国は26日、高齢者や障害者などが避難を開始するタイミングであることを強調するため、「避難準備情報」を「避難準備・高齢者等避難開始」に変更しました。また、直ちに避難するよう自治体が指示する「避難指示」については、「避難指示(緊急)」に変更しました。自治体が、速やかに避難するよう促す「避難勧告」に変更はありません。
避難に関する情報の在り方を議論してきた国の検討会では、これまで名称の変更について積極的な意見は少なく、26日にまとめられた提言では、もし名称を変更する場合には実務面での運用を考慮し、できるだけ短くすることや、避難準備の単語は残すべきなどしていました。
新たな名称は、26日に全国の都道府県に通知され、今後、自治体が発表する情報として使われることになります。記者会見した松本防災担当大臣は、「高齢者などが避難を開始する段階であることを明確にするため変更を決めた。来年の出水期までに浸透するよう周知を図りたい」と話しています。
名称変更でう余曲折
「避難準備情報」をめぐっては、これまでも高齢者や障害者などの災害弱者だけでなく、一般の住民に向けた情報でもあることを強調すべきだとして、名称の検討が行われてきました。
「避難準備情報」は、平成16年に各地で相次いだ豪雨によって、多くの高齢者などの避難が遅れて犠牲になったことから、専門家による国の検討会の議論を受けて、翌年に導入されました。当初は「要援護者避難勧告」という名称が検討されましたが、国の検討会では、高齢者や障害者などの災害弱者の避難行動の開始と、一般の住民が避難の準備を開始するという2つの意味があるとして、「避難準備(要援護者避難)情報」という名称になりました。
その後、大雨による土砂災害などの際に情報が発表されないケースが相次ぎ、「要援護者避難」という名称が、災害弱者のためだけの情報という誤解を与え、自治体が発表しない原因となっているという専門家からの指摘を受けて、おととし(平成26年)、名称から「要援護者避難」が削除され、現在の「避難準備情報」になりました。
さらに、おととし8月の広島市の土砂災害を受けて開かれた専門家による検討会では、「避難準備情報」が一般の住民に対しても避難の準備を促す情報であることや、土砂災害の危険性が高い地域の住民に自発的な避難を促す情報であることを強調すべきだと指摘され、内閣府は自治体向けのガイドラインにもその内容を明記しました。
台風10号の被害などを受けて、避難の情報の在り方を議論してきた国の検討会では、名称についても議論が行われ、内容がわかりにくい面があるという指摘がある一方で、「避難準備情報を高齢者だけに限定するのは違和感がある」といった意見や「名称の変更だけでは本質的な問題の解決につながらない」などの意見も出て、名称の変更に積極的な意見は少ないのが現状でした。
そのうえで、26日にまとめられた提言では、もし名称を変更する場合には実務面での運用を考慮し、名称はできるだけ短くすることや、「避難準備」の単語は残すべきなどしていました。
検討会の座長を務める東京大学大学院の田中淳教授は、「直前の災害に引っ張られて名称を変更するのは、継続性という観点からは好ましくないが、『避難準備』という言葉が残った点はよかった。場所によって危険性に違いがあることなども含めたよい表現がないのが現状で、そうした中では、今回の変更した名称は最善のものとは言えないが、ひとつの有力な答えだと思う」と話しています。
今回の名称の変更に伴って、NHKでは「避難準備・高齢者等避難開始」について、自治体などがこの情報を発表した際には「避難準備の情報を出して高齢者や体の不自由な人などに避難を始めるよう呼びかけています」などと伝えます。
また、「避難指示(緊急)」については、「自治体が避難指示を出して直ちに避難するよう指示しています」などと伝えます。