2026年、世界的メモリ不足を背景としたスマートフォン・パソコン価格の急騰と業界への深刻な影響
世界的なメモリチップ不足を受け、今後1年間でスマートフォンおよびパソコンの価格が大幅に上昇するとの見通しが調査会社IDCより示された。特に、急速に拡大しつつあるAIデータセンターによるDRAM(主記憶装置として用いられる半導体メモリ)の需要増加が、メモリ市場全体の供給不足を引き起こしており、大手メモリメーカーでさえ在庫の確保に苦慮しているという。
IDCのクライアントデバイス担当バイスプレジデントであるフランシスコ・ジェロニモ氏によれば、こうした状況下ではスマートフォンおよびPCメーカーへの新規メモリチップの供給が滞り、ここ数週間でDRAM価格が著しく高騰しているとのことである。そのため、特に利益率が低い低価格帯や中価格帯のメーカーは、コスト増加分を消費者に転嫁せざるを得ない状況に追い込まれている。
IDCの「悲観的」なシナリオでは、2026年にスマートフォンの平均価格が8%上昇すると予測されているが、利益率が厳しい市場の低価格帯においては、さらに大きな価格上昇が避けられないと指摘されている。
一方、アップルやサムスンのような大手企業は、長期的なメモリ供給契約を有しているため、一定程度この混乱を乗り切る可能性が高いものの、完全に影響を免れるわけではなく、IDCは来年のフラッグシップモデルのメモリ容量が16GBから12GBに減少する可能性を示唆している。
また、低価格帯を中心としたスマートフォンメーカーは、端末のメモリ容量を削減せざるを得ない状況に陥ることも考えられるが、ジェロニモ氏は「多くのスマートフォンがクラッシュする主因はメモリやストレージの不足である」と述べており、こうした対応が新たな問題を引き起こす懸念も拭えない。加えて、OSのアップグレードがハードウェアに対して一層高い要求を課す中、状況の悪化は避けられないものとみられる。
パソコンメーカーにとっては、状況はさらに深刻である。ジェロニモ氏によれば、小規模ブランドのPCメーカーの中には「この危機を乗り越えられるか分からない」と危機感を示す企業も現れている。IDCの2026年に関する最も悲観的な予測では、PCの平均価格が8%上昇し、出荷台数は前年比9%減少すると見込まれている。特に、Windows 10のサポート終了に伴い、企業がハードウェアの更新を検討しているタイミングでこのメモリ不足が発生したことは、PCメーカーにとって最悪の状況と言える。
既にPCベンダーは価格上昇を顧客に受け入れてもらうことに苦慮しており、場合によっては15%から20%もの値上げを余儀なくされている例もあるという。
このメモリ不足の危機は、短期間で解消される見込みが立っていない。主要メーカーは既にフル稼働状態であり、新たな生産設備の導入には莫大なコストと時間がかかる上、AI業界からの需要が今後も継続するか不透明であるため、メーカー側も大規模な投資に消極的にならざるを得ない。
長期的な需要が見込めなければ、数十億ドル規模の工場やウェハーの新設には踏み切れないというのが現状であり、実際に消費者向け電子機器分野から撤退し、より収益性の高いAIビジネスへ注力する動きも見られる。
このような状況を鑑みれば、今回のメモリ不足は業界に長く記憶される深刻な危機となる可能性が高い。