“北方領土ほっぽうりょうど 2島とう引き渡ひきわたし+αあるふぁ も検討けんとう” ソビエト外交がいこう機密きみつ文書ぶんしょで

しかし、ソビエト政府せいふは、会談かいだんを前まえに北方ほっぽう領土りょうど問題もんだいをめぐって具体ぐたい的てきな提案ていあんを検討けんとうしていたことがロシアの国立こくりつ公文こうぶん書しょ館かんで見みつかったソビエトの外交がいこう機密きみつ文書ぶんしょで明あきらかになりました。

さらに、日本にっぽんがこれを受け入うけいれない場合ばあいを想定そうていし「予備よびの立場たちば」として2島とうの引き渡ひきわたしに加くわえ、国後くなしり島とうや択捉えとろふ島とうについて日本にっぽんの漁船ぎょせんが寄港きこうする権利けんりを与あたえることや、複数ふくすうの海域かいいきで漁業ぎょぎょう権けんをしかるべき料金りょうきんで日本人にっぽんじんに提供ていきょうすることなどが記しるされています。

一方いっぽう、この案あんでも合意ごういできない場合ばあいは、3つめの案あんに切り替きりかえ「領土りょうどの画定かくてい問題もんだいに触ふれない善隣ぜんりん協力きょうりょく条約じょうやくの締結ていけつを検討けんとうするよう提案ていあんする」としていたことが明あきらかになりました。

この条約じょうやくをめぐっては、一緒いっしょに保管ほかんされていた別べつの文書ぶんしょに「事実じじつ上じょう、この問題もんだいを消けし去さることを意味いみする」と領土りょうど問題もんだいの幕まく引びきをねらう意図いとが明記めいきされています。

3つの提案ていあんについては、会談かいだんの2か月かげつ前まえに当時とうじのブレジネフ書記しょき長ちょうなどが署名しょめいした指令しれい書しょにもほぼ同おなじ内容ないようが記しるされているとロシアの歴史れきし家かが指摘してきしていて、今回こんかいの文書ぶんしょはこの指令しれい書しょに基もとづいて作成さくせいされたとみられます。

ただ、これらの案あんは結局けっきょく、実際じっさいの会談かいだんでは詳くわしくは日本にっぽん側がわに提起ていきされませんでした。

会談かいだんに同席どうせきした当時とうじのトロヤノフスキー駐ちゅう日び大使たいしは、回顧かいこ録ろくの中なかで「田中たなか氏しの訪問ほうもんに向むけた準備じゅんびに影かげを落おとすような出来事できごとがあった」と記しるし、会談かいだん直前ちょくぜんに第だい4次じ中東ちゅうとう戦争せんそうが起おきたことで日本にっぽんとの会談かいだんに集中しゅうちゅうできなかったことなどを指摘してきしています。

一方いっぽう、一連いちれんの文書ぶんしょについて日にちロ関係かんけいに詳くわしい神奈川かながわ大学だいがくの下斗米しもとめ伸夫のぶお特別とくべつ招聘しょうへい教授きょうじゅは「体制たいせいの総意そういとして日本にっぽんをどうするかという点てんでいくつかオプションがありえた時期じきだった。『2島とうプラスアルファ』はありうるというボトムラインが当時とうじからあったということだ」と指摘してきしました。

日本にっぽんの総理そうり大臣だいじんがソビエトを訪おとずれたのは、日にちソ共同きょうどう宣言せんげんに署名しょめいするため当時とうじの鳩山はとやま総理そうり大臣だいじんが現地げんちを訪問ほうもんして以降いこう、17年ねんぶりのことでした。

一連いちれんの文書ぶんしょについて日にちロ関係かんけいに詳くわしい神奈川かながわ大学だいがくの下斗米しもとめ伸夫のぶお特別とくべつ招聘しょうへい教授きょうじゅはNHKの取材しゅざいに対にたいして「体制たいせいの総意そういとして日本にっぽんをどうするかという点てんでいくつかオプションがありえた時期じきだった。『2島とうプラスアルファ』はありうるというボトムラインが当時とうじからあったということだ」と指摘してきしました。

また、ソビエト側がわが領土りょうど問題もんだいに触ふれない善隣ぜんりん協力きょうりょく条約じょうやくの締結ていけつを検討けんとうしていたことについては「領土りょうど問題もんだいまで行いかなくとも条約じょうやくを結むすぶことで、日本にっぽんをつなぎとめておきたかったということだ」と述のべ、当時とうじのソビエト側がわには日本にっぽんとの関係かんけい改善かいぜんを急いそぎたい事情じじょうがあったとしています。

田中たなか・ブレジネフ会談かいだんが行おこなわれた1970年代ねんだい当時とうじはソビエトと中国ちゅうごくの関係かんけいが悪化あっかする一方いっぽう、1972年ねんにアメリカのニクソン大統領だいとうりょうが中国ちゅうごくを訪問ほうもんして米べい中ちゅう関係かんけいが改善かいぜんの兆きざしを見みせていました。

下斗米しもとめ教授きょうじゅは「中ちゅうソ対立たいりつだけでなく米べい中ちゅう和解わかいのプロセスが動うごき始はじめた時期じきで、ソビエト側がわが慌あわてた様子ようすもあり、日にちソ関係かんけいをなんとか打開だかいしたかったのだろう」と分析ぶんせきしています。

しかし、ロシア側がわは「島々しまじまは、第だい2次じ世界せかい大戦たいせんの結果けっか、ロシア領りょうになったと日本にっぽんがまず認みとめるべきだ」と主張しゅちょうしたり、仮かりに北方ほっぽう領土りょうどを引き渡ひきわたした場合ばあい、アメリカ軍ぐんが展開てんかいすることへの懸念けねんを示しめしたりして、領土りょうど交渉こうしょうに進展しんてんは見みられていません。

一方いっぽう、プーチン政権せいけんが重視じゅうししているのは、1973年ねんの田中たなか・ブレジネフ会談かいだんを前まえにソビエト政府せいふが提案ていあんを検討けんとうした領土りょうど問題もんだいに触ふれない善隣ぜんりん協力きょうりょく条約じょうやくの締結ていけつとみられます。

ラブロフ外相がいしょうは、去年きょねん7月つき、条約じょうやくをめぐって「平和へいわ、友好ゆうこう、善隣ぜんりんなどに関にかんする包括ほうかつ的てきなものでなくてはならない。われわれは、そのような条約じょうやくの概念がいねん的てきな基礎きそを提案ていあんしたが、日本にっぽん側がわから具体ぐたい的てきな反応はんのうは示しめされていない」と述のべ、領土りょうど問題もんだいに触ふれない条約じょうやくの草案そうあんをすでに日本にっぽん側がわに示しめしたことを示唆しさしました。

また、プーチン大統領だいとうりょうは、ことし2月つき、平和へいわ条約じょうやく交渉こうしょうに関連かんれんして「憲法けんぽうに矛盾むじゅんすることはしない」として領土りょうどの割譲かつじょうを禁止きんしした新あたらしい憲法けんぽうに従にしたがって北方ほっぽう領土りょうどの引き渡ひきわたしをめぐる交渉こうしょうは行おこなわないという考かんがえを強調きょうちょうするなど、一層いっそう、強硬きょうこうな姿勢しせいを示しめしています。

こうしたロシア側がわの動うごきに対にたいして日本にっぽん政府せいふは、領土りょうど問題もんだいを解決かいけつして平和へいわ条約じょうやくを締結ていけつするとの基本きほん方針ほうしんのもと引き続ひきつづき粘り強ねばりづよく取り組とりくむとしています。