栃木県那須町で
登山の
訓練中に
高校生らが
雪崩に
巻き込まれ、
8人が
死亡した
事故から、
27日で
1か月です。
雪崩事故が
起きるまで、どのような
経緯があったのか、
県による
教員への
聞き取り
調査や
生徒などへの
独自の
取材で、
詳細が
明らかになりました。
先月27日は、
午前中に
茶臼岳への
登山を
行う
予定でした。しかし、
当日の
午前5時ごろ、
教員らが
起床した
際、
15センチほどの積雪を
確認。
午前6時から
6時半の
間に
登山経験が
豊富な
3人の
教員が
話し合って、
登山を
中止し、
代わりに
雪を
かき分けて
進むラッセル
訓練を
行うことを
決めました。
教員の1人は、安全と判断した根拠として、「風が弱く、15センチほどの積雪で、樹林帯の尾根なら雪崩の危険はないと思った」と話しています。
そして、午前7時半に集合し、訓練の実施を決めた教員3人がほかの教員に、ラッセル訓練への変更や雪崩の危険箇所などを説明しました。訓練を周知されたときの状況について、複数の生徒や教員はNHKの取材に対し、「朝の段階で積雪もかなりあり、本当にやるのかという声も上がっていた」と証言しています。
そして、午前8時前には5つの班に分かれて訓練が始まりました。この際、教員は生徒たちに雪崩の危険箇所には近づかないよう説明したということです。
先頭の1班は、大田原高校の生徒12人と教員2人の合わせて14人で、ゲレンデのふもとから尾根の方向に登り始めました。2班以降も続々と出発しました。1班は後続の班と徐々に距離を離し、30分ほどで尾根に到達し、一度休憩をとりました。その際、引率教員の1人は、雪崩の危険性を調べるため、生徒らに雪を掘らせて、雪の層に緩みがないか状態を確認させたと、県の調査に対して答えています。
その後、1班は樹林帯を抜け、樹木がまばらなところに到達します。教員の1人は「視界は前方からふもとまでよく見えた。風もほとんどなかった」と証言しています。
教員の1人は県の調査に対し、斜面が急になることなどから、引き返すかどうか考えたタイミングが2回あったと答えています。このとき生徒からは「天狗の岩」と呼ばれる岩まで進みたいという声が上がり、教員は雪の状態や天候から大丈夫だろうと判断し、岩まで行って引き返すことにしたということです。
その直後、午前8時半ごろに雪崩が発生。1班から4班までが巻き込まれ、中には2メートルほど雪に埋まった生徒もいました。各班を引率していた教員は、本部となっているふもとの旅館に無線で何度も呼びかけましたが、応答がなく、5班の教員が旅館まで降りて、警察に通報しました。
今回の事故で、犠牲者が出た班を引率していた教員の1人が「途中で引き返そうと考えたが、天候の状況から進めると判断した」と県の調査に対して話していることについて、登山の際の安全管理に詳しい静岡大学の村越真教授は、「部活動は正規の教育活動ではないが、引率する以上、教員には子どもの安全を守る義務があり、途中でやめるべきだった」と指摘しています。
そのうえで、「雪崩の危険は斜面の傾斜や雪の量からある程度判断できるので、あらかじめ『ここまでで引き返す』というラインを設定しておく必要があったのではないか」としています。
さらに「現場の教員1人1人の責任とすべきではなく、教育現場全体で考えていく必要がある」と述べています。
また、学校の部活動での登山の在り方については、「プロの登山家が引率するわけではない以上、教員や生徒のスキルを見ながら、通常の登山よりもリスクに対して慎重に行われるべきだ。山の魅力とリスクが裏腹であることを教えながら進める必要がある」と話しています。