日本新聞: 風刺芸術の象徴「金のトイレ」第2作、サザビーズで競売へ――芸術性と物質的価値をめぐって

世界せかいで最もっとも著名ちょめいかつ物議ぶつぎを醸かもす芸術作品げいじゅつさくひんの一ひとつである、マウリツィオ・カテラン氏しの18金製きんせいトイレ「アメリカ」は、その風刺性ふうしせいと豪奢ごうしゃさゆえに、芸術界げいじゅつかいにおける議論ぎろんの的まととなってきた。2016年ねん、ニューヨークのグッゲンハイム美術館びじゅつかんに設置せっちされた際さいには、約やく10万人まんにんもの来館者らいかんしゃがこの作品さくひんを鑑賞かんしょうし、実際じっさいに使用しようしたとされる。しかし、その後ご2019年ねんには、英国えいこくブレナム宮殿きゅうでんに展示てんじされていた「アメリカ」が、わずか5分間ふんかんという短時間たんじかんで強盗団ごうとうだんによって盗難とうなんされる事件じけんが発生はっせいし、実行犯じっこうはんらは有罪判決ゆうざいはんけつを受うけたものの、トイレ自体じたいは未いまだ発見はっけんされていない。作品さくひんは既すでに切断せつだんもしくは溶解ようかいされ、数百万すうひゃくまんドル相当そうとうの金きんとして処分しょぶんされた可能性かのうせいが高たかい。

この「金きんのトイレ」には、単たんなる贅沢品ぜいたくひんとしての価値かちを超こえ、風刺的ふうしてきな意図いとが込こめられている。特とくに、トランプ政権せいけんがゴッホの絵画かいがを借用しゃくようしようとした際さい、代替案だいたいあんとして大統領だいとうりょうへの貸与たいよが提案ていあんされたというエピソードは、現代社会げんだいしゃかいへの痛烈つうれつな皮肉ひにくを象徴しょうちょうしていると言いえよう。

カテラン氏しが複数ふくすうのバージョンを制作せいさくしたとされる「アメリカ」のうち、二ふたつ目めの作品さくひんが今月こんげつ、サザビーズによって競売きょうばいにかけられる運はこびとなった。2017年ねん以降、匿名とくめいの個人こじんが所有しょゆうしていた本作ほんさくは、競売きょうばい直前ちょくぜんの10日間にちかん限定げんていで、サザビーズ新本社しんほんしゃ4階かいのトイレに設置せっちされ、一般公開いっぱんこうかいされる予定よていである。ただし、安全上あんぜんじょうの理由りゆうなどから、来場者らいじょうしゃによる実際じっさいの使用しようは許可きょかされていない。

サザビーズ現代美術部門責任者げんだいびじゅつぶもんせきにんしゃのデービッド・ガルペリン氏しは、今回こんかいの競売きょうばいについて「ドアは開あけっぱなしにしておく」と冗談じょうだん交まじりに語かたりつつも、作品さくひんの本質的価値ほんしつてきかちに言及げんきゅうしている。通常つうじょう、競売きょうばいでは事前じぜんに最低さいてい・最高落札額さいこうらくさつがくが設定せっていされるが、本作ほんさくの場合ばあい、入札開始額にゅうさつかいしがくは金きんの時価じかに連動れんどうして決定けっていされるため、金相場きんそうばの変動へんどうとともに価格かかくも変かわる仕組しくみだ。現在げんざいの金価格きんかかくを踏ふまえると、開始額かいしがくは約やく1,000万まんドル前後ぜんごになる見込みこみであり、ここにコレクターの評価ひょうかが加くわわることとなる。

ガルペリン氏しは、「金価格きんかかくに基もとづき入札額にゅうさつがくを設定せっていすることは、作品さくひんの芸術的価値げいじゅつてきかちと物質的価値ぶっしつてきかちの差異さいを際立きわだたせるものだ」と述のべており、コンセプチュアルアートとしての本質ほんしつを強調きょうちょうしている。

また、同おなじくカテラン氏しによるバナナを壁かべに貼はり付つけた作品さくひん「コメディアン」との対比たいひも指摘してきされる。「コメディアン」は、カテラン氏しの名声めいせいがなければ価値かちを持もち得えない一方いっぽうで、「アメリカ」はその素材そざい自体じたいに多大ただいな価値かちがある。このように、芸術作品げいじゅつさくひんにおける価値かちの本質ほんしつについて、両者りょうしゃは鮮あざやかなコントラストをなしていると言いえるだろう。

風刺ふうし芸術げいじゅつの象徴しょうちょう「金きんのトイレ」第2作だいにさく、サザビーズで競売きょうばいへ――芸術性げいじゅつせいと物質的ぶっしつてき価値かちをめぐって

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