青ヶ島あおがしま沖おきの深海しんかいから高こう濃度のうどの「金きん」回収かいしゅう成功せいこう 銀ぎんも吸着きゅうちゃく 今後こんごは？

なぜ青ヶ島あおがしま？回収かいしゅう方法ほうほうは？そして商業しょうぎょう化かの可能かのう性せいは？

詳くわしく解説かいせつします。

水深すいしん700メートルの深海しんかいで…

東京とうきょう・青ヶ島あおがしま沖おきの水深すいしん700メートルの深海しんかいでは、270度どほどの熱ねつ水すいが噴き出ふきだす熱ねつ水すい噴出ふんしゅつ孔あなが見みつかっていて、周辺しゅうへんの岩石がんせきには高こう濃度のうどの金きんが含ふくまれていることがわかっています。

海洋かいよう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこうと大手おおて機械きかいメーカーIHIの研究けんきゅうグループは、この熱ねつ水すいから金きんを回収かいしゅうしようと金きんを吸着きゅうちゃくする特殊とくしゅな藻もを加工かこうしたシートを開発かいはつしました。

研究けんきゅうグループはおととし（2021年ねん）8月つき、青ヶ島あおがしま沖おきの熱ねつ水すい噴出ふんしゅつ孔あなの周辺しゅうへんにこのシートを設置せっちし、2年ねん近ちかく経過けいかしたことし6月つきに引き揚ひきあげました。

世界せかいでも高こう濃度のうどの金きん！さらに銀ぎんも吸着きゅうちゃく

分析ぶんせきの結果けっか、シートには最大さいだいでおよそ20ppm＝1トンあたり20グラム相当そうとうの「金きん」が吸着きゅうちゃくしていて、ということです。

さらに金きんだけでなく「銀ぎん」も最大さいだいでおよそ7000ppmとことが明あきらかになりました。

研究けんきゅうグループによりますと、深海しんかいの熱ねつ水すいに含ふくまれる「金きん」を藻ものシートに吸着きゅうちゃくさせて回収かいしゅうに成功せいこうしたのは世界せかいで初はじめてだということです。

海洋かいよう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこうの野崎のさき達生たつお主任しゅにん研究けんきゅう員いんは、こう話はなします。

野崎のさき達生たつお主任しゅにん研究けんきゅう員いん

「想定そうてい以上いじょうの金きんを吸着きゅうちゃくさせることに成功せいこうし安心あんしんした一方いっぽうで、銀ぎんがこれほど吸着きゅうちゃくしていたのは予想よそう外がいで驚おどろきだ。深海しんかいというハードルからすぐに商業しょうぎょう化かに結び付むすびつく話はなしではないが、この技術ぎじゅつは温泉おんせんや下水げすいなど、熱ねつ水すい以外いがいでも応用おうようでき、新あらたな金きんの採取さいしゅ方法ほうほうとなる可能かのう性せいがある」

なぜ青ヶ島あおがしまで？

2015年ねん、東京とうきょう大学だいがくの研究けんきゅうチームが東京とうきょうの都心としんから南みなみへ400キロにある青ヶ島あおがしま沖おきの水深すいしん700メートルの海底かいていから、高温こうおんの熱ねつ水すいが噴き出ふきだす「熱ねつ水すい噴出ふんしゅつ孔あな」を発見はっけんしました。

熱ねつ水すい噴出ふんしゅつ孔あなは国内こくないではほかにも伊豆いず諸島しょとうや沖縄おきなわ周辺しゅうへんの深海しんかいでいくつも確認かくにんされていますが、青ヶ島あおがしま沖おきの熱ねつ水すい噴出ふんしゅつ孔あなの周辺しゅうへんで採取さいしゅされた岩石がんせきからは平均へいきんで17ppm＝1トンあたり17グラム相当そうとうと世界せかいでもトップクラスの高こう濃度のうどの金きんが含ふくまれていることが大おおきな特徴とくちょうです。

金きんの濃度のうどが高たかい理由りゆうについて、海洋かいよう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこうの野崎のさき達生たつお主任しゅにん研究けんきゅう員いんは「」と推測すいそくしていますが、それだけでは説明せつめいがつかないほど濃度のうどが高たかく、まだ詳くわしい理由りゆうはわかっていないということです。

研究けんきゅうグループは熱ねつ水すいに高こう濃度のうどの金きんが含ふくまれていることに加くわえて、都心としんから400キロとアクセスが比較的ひかくてきよいことから青ヶ島あおがしま沖おきの深海しんかいで金きんの回収かいしゅう実験じっけんを行おこなうことにしました。

どうやって回収かいしゅう？カギは温泉おんせん地ちの「藻も」だった

研究けんきゅうグループが金きんを回収かいしゅうするために注目ちゅうもくしたのが「ラン藻も」と呼よばれる原始げんし的てきな藻もの一種いっしゅで、東北とうほく地方ちほうの限かぎられた温泉おんせん地ちでしか見みつかっていないものです。

開発かいはつに携たずさわったIHIの福島ふくしま康之やすゆき主任しゅにん研究けんきゅう員いんによりますと、熱ねつ水すいに溶け込とけこんでいるが、この「ラン藻も」を使つかうことで、まず「金きん」と「塩化えんか物ぶつイオン」の結合けつごうがはずれるといいます。

「金きん」はプラスの電気でんきを帯おびていて、「藻も」はマイナスの電気でんきを帯おびているのでお互おたがいに強つよく引き寄ひきよせ合あうことになります。

この状態じょうたいで1000度どの高温こうおんで加熱かねつすると「藻も」が燃え尽もえつきて、「金きん」だけを取り出とりだせるようになるということです。

さらに藻もを化学かがく処理しょりしてシート状じょうに加工かこうしたり、光ひかりを当あてたりすることで金きんの吸着きゅうちゃく効率こうりつが上あがることも明あきらかになっています。

福島ふくしまさんによりますと今回こんかいは「銀ぎん」も高こう濃度のうどで吸着きゅうちゃくしていますが、メカニズムは基本きほん的てきには金きんと同おなじとみられるということです。

商業しょうぎょう化かの可能かのう性せいは？

国内こくないの金きんの小売こうり価格かかくはことし8月つきに1グラムあたり1万まん円えんを超こえ最さい高値たかねを更新こうしんするなど、高騰こうとうし続つづけています。

研究けんきゅうグループによりますと今回こんかいの方法ほうほうを使つかって水深すいしん700メートルを超こえる深海しんかいから金きんを回収かいしゅうするためにはと考かんがえています。

一方いっぽう、研究けんきゅうグループはすでに陸上りくじょうの温泉おんせんからも同おなじ方法ほうほうで「金きん」を回収かいしゅうすることに成功せいこうしたほか、今後こんごは都市とし部ぶの下水げすいや廃鉱はいこうとなった鉱山こうざんの廃水はいすいなどでも金きむが回収かいしゅうできないか試験しけんを行おこなう予定よていで、将来しょうらい的てきには藻ものシートを使つかった方法ほうほうが有効ゆうこうな金きんの回収かいしゅう方法ほうほうになる可能かのう性せいがあるとしています。

また金きんの採掘さいくつに、海外かいがいでは水銀すいぎんなど有毒ゆうどくな化学かがく物質ぶっしつを使つかっている地域ちいきもあり周辺しゅうへんの環境かんきょう汚染おせんや人体じんたいへの影響えいきょうが深刻しんこくな問題もんだいとなっていますが、研究けんきゅうグループは藻ものシートを使つかった手法しゅほうはこうした課題かだいの解決かいけつにもつながるのではないかとしています。