アメリカの
トランプ政権は、
中国がアメリカの
知的財産権を
侵害しているとして
中国製品に
関税を
上乗せして
輸入を
制限する
制裁措置を
発動しました。
中国も
直ちにアメリカからの
輸入品に
報復の
関税を
かける方針で、
米中間でエスカレートする
貿易摩擦が
日本経済に
及ぼす影響が
懸念されます。
トランプ政権は、
中国が
アメリカ企業のハイテク
技術などを
不当に
手に
入れて
知的財産権を
侵害しているとして、
通商法301
条に
基づいて、
中国製品に25%の
関税を
上乗せして
輸入を
制限する
制裁措置を
日本時間の
午後1時すぎに
発動しました。
対象になるのは、航空・宇宙や産業用ロボットといった、中国が力を入れているハイテク分野の製品など818品目におよび、金額では340億ドル規模(日本円にして3兆7000億円余り)の輸入品に関税を上乗せします。
トランプ大統領は5日の演説で、中国との貿易について、「これは問題だ。自由貿易ではない」と述べ、改めて強い不満を示しました。
一方、中国も同じ規模で直ちに報復措置を発動し、アメリカの大豆や自動車などに25%の関税を上乗せする方針で、米中がともに一歩も引かず、対立は一段と激しくなります。
これによって中国に大量の電子部品や工作機械などを輸出している日本企業に影響が及ぶことも予想され、エスカレートする貿易摩擦に懸念が広がっています。
中国「貿易戦争」と強く批判
アメリカのトランプ政権が中国製品に関税を上乗せする制裁措置を発動したことについて、中国商務省が談話を発表し「アメリカは経済史上最大の貿易戦争を発動した。これは典型的な貿易覇権主義であり、世界経済の回復を妨げ、グローバルな市場に動揺をもたらすものだ」と強く批判しました。
そのうえで「国家と国民の利益を守るためには、必要な反撃をとらざるをえない」として、中国側も速やかに報復措置を発動する方針を示しました。
「貿易摩擦」激化へ 揺らぐ自由貿易体制
世界第1位と第2位の経済規模を誇る巨大な国どうしが高い関税の引き上げに踏み切ったことで、米中の貿易摩擦は新たな段階に入りました。
すでにトランプ政権は、鉄鋼やアルミニウム製品に高い関税をかけて、日本企業にも一部、影響が及んでいます。
トランプ政権は、さらに日本やヨーロッパなどからの輸入車にも高い関税を課すかどうか調査を進めていて、トランプ大統領は今月中に調査を終えるという見通しを示しています。
仮に発動されることになれば、各国から対抗措置が相次ぐ事態になりかねません。
第2次世界大戦後、世界的な経済成長をけん引してきた自由貿易体制は、根幹から揺らぎ始めています。
世界 日本への影響は
今回のアメリカと中国との間での関税の引き上げの応酬で、世界経済や日本経済への影響が心配されています。
アメリカが関税をかけるのは、半導体や産業用ロボット、自動車などの工業製品が中心です。一方、中国はアメリカの農産品や自動車などに関税を上乗せします。
これに関連して、民間のシンクタンク「大和総研」では、お互いに輸出が減るなどの影響が出るおそれがあるとして、GDP=国内総生産を中国で0.1%、アメリカで0.06%、それぞれ押し下げると試算しています。
一方、アメリカ向けの中国製品には日本企業の製品が使われていて、財務省の貿易統計によりますと「半導体などの電子部品」や「プラスチック」などが中国に多く輸出されています。
「大和総研」は、今後、日本から中国に輸出するICチップや半導体の製造装置などの輸出が減るおそれがあると指摘しています。
そのうえで、トランプ政権がさらに追加の関税引き上げを行い、500億ドル規模の制裁を実施すれば、日本企業の製品に334億円分の関税が上乗せされるのと同じ状況になるということで、日本のGDPを0.01%押し下げると試算しています。
日本政府の対応
日本はアメリカに対し、中国の知的財産権の侵害について、あくまでWTO=世界貿易機関のルールに沿って対応するよう求め、EU=ヨーロッパ連合とも連携しながらWTOへの提訴などを検討していました。
にもかかわらず、国際的なルールを無視した一方的な制裁措置の発動に対して、政府関係者からは「どの国の利益にもならず、残念だ」という声が出ています。
政府としては、これまでTPP=環太平洋パートナーシップ協定や日EU・EPA=経済連携協定などの交渉をまとめた実績を生かし、現在交渉中のRCEP=東アジア地域包括的経済連携を進展させることで、保護主義の動きを抑え、自由貿易体制の求心力を取り戻したい考えです。