児童じどう養護ようご施設しせつの子こどもたちの間まの性せい暴力ぼうりょくなど １いち年ねんで700件けん近ちかく

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは、全国ぜんこくの児童じどう養護ようご施設しせつなどを対象たいしょうに初はじめての実態じったい調査ちょうさをアンケート形式けいしきで行おこない、ことし２月にがつまでに全体ぜんたいの73％に当にあたる763施設しせつから回答かいとうを得えました。

それによりますと、子こどもたちの間まで起おきた性せい暴力ぼうりょくや、服ふくを脱ぬがしたりするなどの性的せいてきな問題もんだい行動こうどうを施設しせつ側がわが把握はあくしたケースは、去年きょねん３月さんがつまでの１いち年間ねんかんに687件けんに上のぼりました。

このうち８はち割わり近ちかくが児童じどう養護ようご施設しせつで起おきていて、加害かがい者しゃや被害ひがい者しゃなど問題もんだいに関係かんけいした子こどもを年齢ねんれい別べつに見みると、10歳さい未満みまんが35.9％、10歳さいから13歳さいが29.9％、14歳さいから17歳さいが28.5％、18歳さい以上いじょうが5.5％と幅広はばひろい年代ねんだいで問題もんだいが起おきていました。

一方いっぽう、調査ちょうさに回答かいとうした児童じどう養護ようご施設しせつの３さん割わりが、こうした問題もんだいを防ふせぐための予防よぼうや対応たいおうのマニュアルを持もっていないことが分わかり、厚生こうせい労働ろうどう省しょうは問題もんだい行動こうどうを分析ぶんせきしたうえで、今年度こんねんど中ちゅうにマニュアルを作成さくせいすることにしています。

調査ちょうさを行おこなった愛育あいいく研究所けんきゅうじょの山本やまもと恒雄つねお客員きゃくいん研究けんきゅう員いんは「仲なかのよい相手あいてとの遊あそびの延長えんちょうで性的せいてきな問題もんだい行動こうどうに発展はってんするケースが目立めだつが、被害ひがいを受うけた子こどもが心こころの傷きずを抱かかえることもある。実際じっさいに問題もんだいが起おきた施設しせつの教訓きょうくんを広ひろく共有きょうゆうし、対策たいさくに取り組とりくむ必要ひつようがある」と話はなしています。

きっかけは被害ひがい女児じょじの母ははの訴うったえ

今回こんかい、厚生こうせい労働ろうどう省しょうが調査ちょうさを行おこなうきっかけとなったのは、施設しせつで性せい暴力ぼうりょくを受うけた女の子おんなのこの母親ははおやの訴うったえでした。

８はち年ねん前まえ、三重みえ県けん名張なばり市しで母親ははおやが体調たいちょうを崩くずしたために児童じどう養護ようご施設しせつに一時いちじ的てきに預あづけられた７なな歳さいの女の子おんなのこが、男子だんし中学生ちゅうがくせいから下着したぎを脱ぬがされ、わいせつな行為こういを受うけました。

被害ひがいを知しった母親ははおやは、損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめる裁判さいばんを起おこし、裁判所さいばんしょはおととし、性せい暴力ぼうりょくがあったことを認みとめ、中学生ちゅうがくせいの親おやに180万まん円えんの支払しはらいを命めいじました。

この裁判さいばんでは、三重みえ県けん側がわが県内けんないの児童じどう養護ようご施設しせつで子こどもの間まの性せい暴力ぼうりょくが過去かこ５ご年間ねんかんに51件けん起おきていたことを明あきらかにしました。

これを受うけて母親ははおやは、性せい暴力ぼうりょくの根絶こんぜつを目指めざす団体だんたいを立たち上あげて国くにに対策たいさくを求もとめ、厚生こうせい労働ろうどう省しょうは去年きょねん４月しがつ、施設しせつを所管しょかんする自治体じちたいに対にたいし、対策たいさくの徹底てっていを求もとめる通知つうちを出だすとともに、実態じったい調査ちょうさを行おこなうことにしました。

専門せんもん家か「どの施設しせつでも起おきうる」

児童じどう養護ようご施設しせつの元もと施設しせつ長ちょうで、性せい暴力ぼうりょくの問題もんだいを研究けんきゅうするグループの会長かいちょうも務つとめる東京とうきょう経営けいえい短期たんき大学だいがくの小木曽こぎそ宏ひろし教授きょうじゅは「施設しせつには親おやから性的せいてきな虐待ぎゃくたいを受うけたために、性的せいてきな行為こういがタブーではなくなってしまった子こどももいる。また、インターネットにあふれる性せいの情報じょうほうの刺激しげきにもさらされていて、どの施設しせつでも起おきうる問題もんだいだ」と指摘してきしています。

そのうえで「被害ひがいを受うけてしまうと精神せいしん的てきに回復かいふくすることが難むずかしいため、まずは自分じぶんの体からだと同おなじように、他人たにんの体からだも大事だいじにするというプライバシーの基本きほんを施設しせつの生活せいかつの中なかで学まなび直なおしてもらうことが重要じゅうようだ。しかし、職員しょくいんの入れ代いれかわりが激はげしく、性せい教育きょういくを担になえない若手わかてばかりの施設しせつもあり、ベテランの職員しょくいんをどう確保かくほするのかも同時どうじに考かんがえなければならない」と訴うったえています。