日本新聞: 制裁受けているはずが…“ロシア産小麦輸出量増” 米農務省

制裁せいさい受うけているはずが…“ロシア産さん小麦こむぎ輸出ゆしゅつ量りょう増ぞう” 米べい農務のうむ省しょう

Jul 18, 2023 13:07

Furigana

ロシアは、欧米おうべい側がわの制裁せいさいによって農産物のうさんぶつの輸出ゆしゅつが滞とどこおっていると主張しゅちょうしていますが、アメリカ農務のうむ省しょうは、ロシアの小麦こむぎの輸出ゆしゅつ量りょうはむしろ増加ぞうかしているとする報告ほうこく書しょを発表はっぴょうしています。現状げんじょうについてロシアの「友好国ゆうこうこく」のイランなどで取材しゅざいしました。

アメリカ農務のうむ省しょうがことし5月つきにまとめた報告ほうこく書しょによりますと、輸出ゆしゅつ先さきの国くにからのデータなどをもとに調しらべたところ、去年きょねんからことしにかけての1年間ねんかんではロシアの小麦こむぎの輸出ゆしゅつ量りょうは、前まえの年としに比くらべて36％増ふえて4500万まんトンとなり、過去かこ最多さいたを記録きろくすることが予想よそうされるとしています。

また輸出ゆしゅつ先さきとしては、トルコやエジプト、イラン、サウジアラビアのほか、スーダンやアルジェリアといった中東ちゅうとうやアフリカの国々くにぐにが上位じょういを占しめているということです。

さらに、ロシアが主導しゅどうする「ユーラシア経済けいざい同盟どうめい」の加盟かめい国こくにも陸上りくじょう輸送ゆそうで小麦こむぎが輸出ゆしゅつされ、なかでもカザフスタンへの輸出ゆしゅつ量りょうが多おおいということです。

一方いっぽう、ロシアのインターファクス通信つうしんは、先月せんげつ、ロシアのパトルシェフ農業のうぎょう相しょうが「ことしの農産物のうさんぶつの輸出ゆしゅつ額がくはおよそ15％から20％、前まえの同おなじ時期じきを上回うわまわっている」と述のべたと伝つたえています。

国営こくえいのタス通信たすつうしんも今月こんげつ7日にち、パトルシェフ農業のうぎょう相しょうの話はなしとして「今月こんげつから来年らいねん6月つきにかけての1年間ねんかんで、最大さいだいで5500万まんトンの穀物こくもつを輸出ゆしゅつする計画けいかくだ」という見通みとおしを伝つたえ、輸出ゆしゅつ先さきとしては、ロシアに友好ゆうこう的てきな国くにが9割わり近ちかくを占しめるとしています。

ロシア“友好国ゆうこうこく”のイランロシアからの穀物こくもつ輸入ゆにゅう量りょう増加ぞうか

イラン税関ぜいかんの統計とうけいによりますと、ロシアから輸入ゆにゅうした穀物こくもつの量りょうは、先月せんげつまでの3か月かげつ間かんでおよそ74万まんトンと、前まえの年としの同おなじ時期じきと比くらべておよそ1.5倍ばい、侵攻しんこう前まえのおととしと比くらべておよそ2.5倍ばいに増ふえています。

イラン港湾こうわん海事かいじ局きょくでアンザリ港こうを担当たんとうするナザリ氏しは「ことしはロシアから輸入ゆにゅうするトウモロコシの量りょうが増ふえている。大事だいじなのは取り引とりひき先さきの国くにの要望ようぼうに沿そうことなので、私わたしたちは、ロシア側がわの求もとめにもっと応こたえる用意よういがある」と話はなしていました。

ロシアとしては、カスピ海かすぴかい航路こうろでイランを経由けいゆして、その先さきの中東ちゅうとうの湾岸わんがん地域ちいきへ穀物こくもつなどを輸出ゆしゅつしたい思惑おもわくもあるとみられます。

アンザリ自由じゆう貿易ぼうえき区域くいき庁ちょうのニアジ長官ちょうかんは「ロシアにとって湾岸わんがん諸国しょこくとつながることはとても重要じゅうような成果せいかとなるため、ロシアは渇望かつぼうしている」と話はなしていました。

ロシアとイランつなぐ両国りょうこく間かんに位置いちする“カスピ海かすぴかいルート”

日本にっぽんの国土こくどとほぼ同おなじ広ひろさを持もつカスピ海かすぴかいはもともと、チョウザメの卵たまごから作つくるキャビアや、豊富ほうふな埋蔵まいぞう量りょうを誇ほこる海底かいてい油田ゆでんなどで知しられます。

イラン側がわは否定ひていしているものの、イランがカスピ海かすぴかいを輸送ゆそう路ろとしてロシアへ無人むじん機きや弾薬だんやくなどの兵器へいきを供与きょうよしていると、欧米おうべいからは指摘してきされています。

さらに、ロシアとしては、軍事ぐんじ侵攻しんこうが長期ちょうき化かする中なか、ロシア経済けいざいを維持いじする上うえで、カスピ海かすぴかいは重要じゅうような貿易ぼうえきルートとなっています。

ロシアとイランの両国りょうこくは、ともに欧米おうべいから制裁せいさいを科かされる中なか、「南北なんぼく輸送ゆそう回廊かいろう」と呼よばれ、ユーラシア大陸たいりくを縦断じゅうだんする物流ぶつりゅう網もうの構築こうちくに力ちからを入いれてきました。

道路どうろや鉄道てつどうを使つかうルートではほかの国くにを通過つうかする必要ひつようがあるのに対にたいし、カスピ海かすぴかい航路こうろを利用りようすれば、両国りょうこくがどの国くにも介かいさずに直接ちょくせつ、物資ぶっしを輸送ゆそうできることになります。

イランの港みなとにはロシア国旗こっき掲かかげた多おおくの船ふねが

イランの首都しゅとテヘランから北西ほくせいにおよそ250キロ離はなれたアンザリ港こうは、カスピ海かすぴかいに臨のぞむイラン側がわの主要しゅような港みなとです。ふだんは、安全あんぜん保障ほしょう上じょうの理由りゆうなどから報道ほうどう機関きかんの立ち入たちいりが制限せいげんされていますが、先月せんげつ末まつ、NHKの取材しゅざい班はんは当局とうきょくから許可きょかを得えて港みなとでの撮影さつえいが認みとめられました。

港みなとには、確認かくにんできただけで4隻せきのロシアの貨物かもつ船せんが停泊ていはくしていて、多おおくのロシア国旗こっきがはためいていました。

このうち、取材しゅざい当日とうじつの朝あさ、イラン側がわの港みなとに到着とうちゃくしたばかりだという船ふねには大麦おおむぎが積つまれていて、港みなとではダンプカーに積み替つみかえて、港内こうないの貯蔵庫ちょぞうこに次々つぎつぎと運はこばれていました。

イラン港湾こうわん海事かいじ局きょくによりますと、ロシアとの取り引とりひき拡大かくだいに伴ともない、アンザリ港こうで去年きょねん1年間ねんかんに取り扱とりあつかったコンテナの量りょうはおととしと比くらべ、およそ40％増ふえたということです。さらに、港みなとを国内こくないの鉄道てつどう網もうと接続せつぞくする線路せんろの建設けんせつもことし9月つきの完成かんせいを目指めざして進すすめられていて、完成かんせいすれば、この港みなとからペルシャ湾ぺるしゃわんまでが鉄道てつどうでつながることになります。

この港みなとを管轄かんかつするアンザリ自由じゆう貿易ぼうえき区域くいき庁ちょうのニアジ長官ちょうかんは「周辺しゅうへん国こくの地政学ちせいがく的てきな状況じょうきょうが、この経済けいざい特区とっくの輸送ゆそう路ろとしての役割やくわりをより重要じゅうようにしている。この港みなとを回廊かいろうに組み込くみこむことでイランは制裁せいさいに立ち向たちむかうことができる」と話はなしています。