ドイツ議会ぎかい選挙せんきょはまれにみる混戦こんせん メルケル首相しゅしょうの後任こうにんは誰だれ？

世論せろん調査ちょうさでの主要しゅよう各党かくとうの支持しじ率りつは次つぎのとおりです。

▼社会しゃかい民主みんしゅ党とう（SPD） 26％

▼キリスト教きょう民主みんしゅ・社会しゃかい同盟どうめい（CDU・CSU） 22％

▼緑の党みどりのとう 15％

▼ドイツのための選択肢せんたくし（AfD） 11％

▼自由じゆう民主みんしゅ党とう（FDP） 11％

▼左派さは党とう 6％

（公共こうきょう放送ほうそうARD 9月つき16日にち）

選挙せんきょ戦せんは、メルケル首相しゅしょうのもとで連立れんりつ政権せいけんを担になう二に大だい政党せいとうの「社会しゃかい民主党みんしゅとう」と「キリスト教きょう民主みんしゅ・社会しゃかい同盟どうめい」に加くわえて、野党やとうの「緑の党みどりのとう」が首位しゅいをめぐって争あらそってきました。

前回ぜんかい2017年ねんの選挙せんきょのあと、長ながい間ま、支持しじ率りつトップを保たもっていたのが「キリスト教きょう民主みんしゅ・社会しゃかい同盟どうめい」です。

これに対にたいして、連立れんりつパートナーの「社会しゃかい民主党みんしゅとう」の支持しじ率りつは低迷ていめいしていました。

一方いっぽうで「緑の党みどりのとう」は、環境かんきょう意識いしきの高たかまりを背景はいけいに政治せいじの刷新さっしんを掲かかげて支持しじを広ひろげ、ことし春はるには一時いちじ、支持しじ率りつで第だい1位いにもなりました。

このときの世論せろん調査ちょうさでの支持しじ率りつは、

▼緑の党みどりのとう 26％、

▼キリスト教きょう民主みんしゅ・社会しゃかい同盟どうめい（CDU・CSU） 23％、

▼社会しゃかい民主みんしゅ党とう（SPD） 14％

となっていました。

（ARD 5月つき6日にち）

それに対にたいして、「社会しゃかい民主党みんしゅとう」は、首相しゅしょう候補こうほのショルツ財務ざいむ相しょうが実務じつむ能力のうりょくの高たかさと安定あんてい感かんで人気にんきを集あつめ、支持しじ率りつが急きゅう上昇じょうしょうし、選挙せんきょを目前もくぜんに控ひかえて第だい1党とうの座ざをうかがう勢いきおいです。

ただ、いずれの政党せいとうも単独たんどくで過半数かはんすうの議席ぎせきを獲得かくとくできず、連立れんりつが必要ひつようになる見通みとおしです。

政策せいさくの違ちがいなどから連立れんりつ協議きょうぎの難航なんこうも予想よそうされています。

2011年ねんから北部ほくぶハンブルクで市長しちょうを務つとめたあと、2018年ねんからはメルケル首相しゅしょうのもとでの大だい連立れんりつ政権せいけんで、財務ざいむ相しょうと副ふく首相しゅしょうを兼任けんにんしています。

ことし7月つきにドイツ西部せいぶを襲おそった大だい洪水こうずいを受うけて、被災ひさい地ちへの緊急きんきゅう援助えんじょを行おこなう方針ほうしんを速すみやかに発表はっぴょうしたほか、新型しんがたコロナウイルスによる経済けいざいへの影響えいきょうを抑おさえるため、大だい規模きぼな景気けいき対策たいさくを行おこなってきました。

選挙せんきょ戦せんでは、社会しゃかい格差かくさの是正ぜせいを訴うったえ、最低さいてい賃金ちんぎんを12ユーロ、日本にっぽん円えんで1500円えん余あまりに引き上ひきあげることや、富裕ふゆう層そうへの増税ぞうぜいなどを掲かかげ、雇用こようを確保かくほしながら気候きこう変動へんどう対策たいさくも進すすめるとしています。

カリスマ性せいや派手はでさはないものの、政治せいじ経験けいけんが豊富ほうふで、実務じつむ能力のうりょくが高たかいと評価ひょうかされ、冷静れいせいで落ち着おちついた対応たいおうはメルケル首相しゅしょうに似にているとも指摘してきされています。

8月つきには、両手りょうての指先ゆびさきを腹はらの前まえで組み合くみあわせてひし形ひしがたを作つくる、メルケル首相しゅしょうが好このんでとるポーズをまねた写真しゃしんが地元じもとメディアに掲載けいさいされ、メルケル首相しゅしょうの安定あんてい感かんを引き継ひきつぐ存在そんざいだとしてアピールを強つよめています。

ただ、2017年ねんにハンブルクでG20サミットが開ひらかれた際さい、当時とうじ市長しちょうだったショルツ氏しは、サミット開催かいさいに抗議こうぎするデモの参加さんか者しゃが暴徒ぼうと化かし、放火ほうかや略奪りゃくだつを行おこなうのを防ふせぐことができず、危機きき管理かんり能力のうりょくを問とわれたこともあります。

労働ろうどう者しゃ階級かいきゅうを支持しじ基盤きばんとした中道ちゅうどう左派さはの政党せいとうで、戦後せんご、3人にんが首相しゅしょうに就任しゅうにんするなど二に大だい政党せいとうの1つとしてドイツ政治せいじを担になってきました。

社会しゃかい民主みんしゅ党とうは、労働ろうどう者しゃの権利けんりを守まもる党とうとして社会しゃかい保障ほしょうの充実じゅうじつなどに取り組とりくんできましたが、1998年ねんから2005年ねんのシュレーダー政権せいけん期きには、低迷ていめいする経済けいざいを立て直たてなおすため国民こくみんに痛いたみを強しいる労働ろうどう市場しじょう改革かいかくを断行だんこうしました。

この改革かいかくのおかげでドイツ経済けいざいは上向うわむいたと評価ひょうかする見方みかたもありますが、格差かくさの拡大かくだいにつながったなどとして党とうの伝統でんとう的てきな支持しじ層そうは離はなれていきました。

前回ぜんかい、2017年ねんの連邦れんぽう議会ぎかい選挙せんきょでは第だい2党とうの座ざを維持いじしたものの得票とくひょう率りつを落おとし、大敗たいはいを喫きっします。

党内とうないからは中道ちゅうどう右派うはの「キリスト教きょう民主みんしゅ・社会しゃかい同盟どうめい」と大だい連立れんりつを組くんでメルケル政権せいけんを支ささえてきたことで独自どくじ性せいを打ち出うちだせなくなっているとして、政権せいけん参加さんかに反対はんたいする声こえも根強ねづよくありましたが、連立れんりつ交渉こうしょうの末すえ、メルケル政権せいけんの4期き目めでも連立れんりつ与党よとうに加くわわりました。

去年きょねん8月つき、首相しゅしょう候補こうほに財務ざいむ相しょうのショルツ氏しを選出せんしゅつし、選挙せんきょ戦せんでは人気にんきが上昇じょうしょうするショルツ氏しを前面ぜんめんに押し出おしだしながら、第だい1党とうの座ざをねらっています。

ドイツ連邦れんぽう議会ぎかいやヨーロッパ議会ぎかいで議員ぎいんとして活動かつどうしたあと、2017年ねんから最もっとも人口じんこうの多おおい西部せいぶノルトライン・ウェストファーレン州しゅうの州しゅう首相しゅしょうを務つとめています。

メルケル首相しゅしょうが進すすめてきた中道ちゅうどう路線ろせんの継続けいぞくを訴うったえ、ことし1月つき「キリスト教きょう民主みんしゅ同盟どうめい」の党首とうしゅに就任しゅうにんしました。

メルケル首相しゅしょうは先月せんげつ、ラシェット氏しについて、常つねに人々ひとびとの心こころをつなぐことを大切たいせつにしてきたなどとたたえ、「将来しょうらいのドイツの首相しゅしょうだ」と支持しじを表明ひょうめいしています。

ラシェット氏しは政治せいじ経験けいけんが豊富ほうふで、協調きょうちょうを重視じゅうしする調整ちょうせい型がたとして知しられる反面はんめん、カリスマ性せいや強つよい指導しどう力りょくに欠かけるとも指摘してきされています。

ことし7月つきには、地元じもとのノルトライン・ウェストファーレン州しゅうなどを襲おそった大だい洪水こうずいの被災ひさい地ちを訪おとずれた際さい、楽たのしげに笑わらう姿すがたが報ほうじられて強つよい批判ひはんを浴あび、謝罪しゃざいに追い込おいこまれました。

南部なんぶバイエルン州しゅうのみを基盤きばんとする姉妹しまい政党せいとうの「キリスト教きょう社会しゃかい同盟どうめい」と連邦れんぽう議会ぎかいで統一とういつ会派かいは「キリスト教きょう民主みんしゅ・社会しゃかい同盟どうめい」を組くみ、戦後せんごのドイツ政治せいじをけん引けんいんしてきた主要しゅよう政党せいとうです。

西ドイツにしどいつの初代しょだい首相しゅしょうを務つとめたアデナウアー元もと首相しゅしょうや、1982年ねんから16年ねんにわたって首相しゅしょうを務つとめたコール元もと首相しゅしょうも「キリスト教きょう民主みんしゅ同盟どうめい」を代表だいひょうする政治せいじ家かです。

「キリスト教きょう民主みんしゅ・社会しゃかい同盟どうめい」は伝統でんとう的てきに、高齢こうれい者しゃやキリスト教会きょうかい、自営業じえいぎょう者しゃや農村のうそんを支持しじ基盤きばんにドイツの安定あんていを支ささえる党とうとして、支持しじを集あつめてきました。

ただ、メルケル首相しゅしょうのもとでは、寛容かんような難民なんみんの受け入うけいれや、同性どうせい婚こんの容認ようにんなど、リベラル寄よりの政策せいさくが進すすめられたことで、既存きそんの支持しじ者しゃからは批判ひはんも出でていました。

連邦れんぽう議会ぎかい選挙せんきょに向むけては、メルケル首相しゅしょうが進すすめてきた中道ちゅうどう路線ろせんの継続けいぞくを訴うったえる「キリスト教きょう民主みんしゅ同盟どうめい」のラシェット党首とうしゅを首相しゅしょう候補こうほに選えらび、選挙せんきょ戦せんを進すすめています。

北部ほくぶのハンブルク大学だいがくで政治せいじ学がくや法学ほうがくを学まなび、イギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクスにも留学りゅうがくし、2013年ねんからドイツ連邦れんぽう議会ぎかいの議員ぎいんとして活動かつどうしています。

2018年ねんから作家さっかとしても知しられるロベルト・ハーベック氏しとともに2人にんで「緑の党みどりのとう」の党首とうしゅを務つとめています。

これまで州しゅう政府せいふや連邦れんぽう政府せいふで政権せいけん運営うんえいを担になった経験けいけんはないものの、脱だつ石炭せきたんの前倒まえだおしなどの環境かんきょう政策せいさくをはじめ、2人にんの娘むすめを育そだてる母親ははおやとして教育きょういく政策せいさくにも熱心ねっしんに取り組とりくむとしています。

また、トランポリンの選手せんしゅとして国内こくないの選手権せんしゅけんに出場しゅつじょうし、3度ど、銅メダルどうめだるを獲得かくとくしたことでも知しられ、「スポーツを通をつうじて、新あたらしいことに思い切おもいきって挑戦ちょうせんし自分じぶんに打ち勝うちかつ勇気ゆうきをもつことができるようになった」と語かたっています。

ベアボック氏しがことし4月つき、緑の党みどりのとうの首相しゅしょう候補こうほに選えらばれた直後ちょくごには、新鮮しんせんなイメージもあって世論せろん調査ちょうさでの党とうの支持しじ率りつは急きゅう上昇じょうしょうしました。

しかし、その後そのご、ベアボック氏しが一部いちぶの収入しゅうにゅうを議会ぎかいに適切てきせつに申告しんこくしていなかったり、公表こうひょうしていた経歴けいれきに不ふ正確せいかくな点てんが見みつかり修正しゅうせいしたりするなどの問題もんだいが相次あいついだほか、ことし6月つきに出版しゅっぱんした著作ちょさくでも盗作とうさく疑惑ぎわくが発覚はっかくし、人気にんきは急落きゅうらくしました。

1998年ねんから2005年ねんまでは、中道ちゅうどう左派さはの社会しゃかい民主みんしゅ党とうのシュレーダー首相しゅしょうのもとで連立れんりつ政権せいけんの一角いっかくを担にない、国民こくみんの人気にんきが高たかいフィッシャー氏しが副ふく首相しゅしょう兼けん外相がいしょうを務つとめました。

その後そのごは、野党やとうに転てんじ、2017年ねんの前回ぜんかいの連邦れんぽう議会ぎかい選挙せんきょでも得票とくひょう率りつは8.9％で第だい6党とうにとどまりました。

しかし、2018年ねんからスウェーデンの10代だいの環境かんきょう活動かつどう家か、グレタ・トゥーンベリさんが、毎週まいしゅう金曜日きんようびに学校がっこうを休やすんで気候きこう変動へんどう対策たいさくを訴うったえた活動かつどうが、「未来みらいのための金曜日きんようび」という若者わかものの運動うんどうにつながると、ドイツでも各地かくちでデモ活動かつどうが行おこなわれるなど環境かんきょう意識いしきが高たかまり、都市とし部ぶや若者わかものを中心ちゅうしんに「緑の党みどりのとう」の支持しじが広ひろがっていきました。

「緑の党みどりのとう」自身じしんも、かつては極端きょくたんな左派さはの主張しゅちょうで知しられていましたが、現実げんじつ路線ろせんを進すすめ、今いまでは州しゅうレベルで首相しゅしょうを担になうようになり、政権せいけん担当たんとう能力のうりょくがある政党せいとうと認識にんしきされるようになりました。

16年ねんに及およぶメルケル政権せいけんからの刷新さっしんを訴うったえ、環境かんきょう政策せいさくでは▼石炭せきたん火力かりょく発電はつでん所しょを全廃ぜんぱいする「脱だつ石炭せきたん」の取り組とりくみを2030年ねんまでに前倒まえだおしすることや、▼温室おんしつ効果こうかガスの排出はいしゅつ量りょうを今後こんご20年ねんで実質じっしつゼロにするなど、踏み込ふみこんだ目標もくひょうを掲かかげ、鉄道てつどう網もうや電気でんき自動車じどうしゃの充電じゅうでん設備せつびなどのインフラ整備せいびにあてるため、今後こんご10年ねんで5000億おくユーロ、日本にっぽん円えんにして60兆ちょう円えんを超こえる追加ついか投資とうしを行おこなうとしています。

また、外交がいこう面めんでは、ロシアの天然てんねんガスを直接ちょくせつドイツに運はこぶための海底かいていパイプライン「ノルドストリーム2」に反対はんたいの立場たちばをとっているほか、中国ちゅうごくに対にたいしても「新疆ウイグルしんきょうういぐる自治じち区くやチベット自治じち区く、それに香港ほんこんなどでの人権じんけん侵害しんがいを終おわらせるよう求もとめる」として厳きびしい姿勢しせいを示しめしています。