トヨタ自動車は、国の型式指定の申請に伴う認証試験で不正を行っていたことが発覚し、国土交通省からの出荷停止の指示を受けてことし6月から、子会社の「トヨタ自動車東日本」の「宮城大衡工場」と「岩手工場」で製造する3つの車種の生産を停止していました。
その後、国の安全基準などに適合していることが確認されて、7月末付けで出荷停止の指示が解除されたことから、対象となっていた「カローラ フィールダー」、「カローラ アクシオ」、「ヤリス クロス」の3車種の生産を2日夜から再開します。
この問題をめぐって、トヨタでは新たな不正が7月に発覚し、会社側は認証業務に対する内部監査の充実や法令順守の徹底などの再発防止策をとりまとめて、先月、国土交通省に提出しました。
今後は再発防止策を着実に実行できるかが問われることになります。
一方、トヨタ自動車は、台風10号の影響で宮城県と岩手県の工場を含めた国内13工場の稼働を停止していましたが、2日夕方以降、再開することを決めました。
東京 羽村市にある子会社の工場の一部のラインは2日朝から稼働しています。
トヨタは先月28日の夕方から従業員の安全確保や物流への影響を考慮して各地の工場の稼働を停止していました。
トヨタグループで相次いだ認証試験不正とは
トヨタ自動車のグループでは、おととし以降、国の認証試験での不正が相次いでいて、再発防止はグループ全体の課題です。
▽日野自動車では、おととし3月、エンジンの排出ガスなどの不正な検査データを国に提出していたことが発覚。
国の立ち入り検査で新たな不正が見つかり、国土交通省は不正行為は極めて悪質だとして「是正命令」を初めて適用しました。
一部の車種で2年以上にわたって出荷を停止しています。
さらに去年3月には、
▽豊田自動織機でもフォークリフト用のエンジンなどで法規違反が明らかになり、その後、自動車用のエンジンでも出力試験のデータの不正が判明しました。
国土交通省は対象機種のエンジンの出荷停止を指示し、供給を受けていたトヨタの生産にも影響が出ました。
▽ダイハツ工業でも去年4月に海外向けの一部の車種で認証に必要な衝突試験の際に不正を行っていたことが発覚。
その後、国内向けの車種でも不正が発覚するなど問題が拡大し、一時、国内すべての自動車工場で稼働を停止する事態となりました。
▽グループ各社で次々と不正が明らかになる中、トヨタ自動車は親会社として、再発防止の徹底に関与していく考えを示していましたが、ことし6月には、そのトヨタでも認証試験での不正が発覚。
不正が明らかになった7車種のうち、出荷停止の指示を受けた「ヤリス クロス」などの3車種が6月上旬から生産を停止しました。
トヨタは内部調査を行い、新たな不正は見つからなかったとしていましたが、国土交通省が立ち入り検査などで詳しく調べたところ、新たに7車種で不正が確認されました。
結果を重く見た国土交通省は、グループの3社に続き、トヨタにも7月末に道路運送車両法に基づく「是正命令」を出しました。
トヨタの再発防止策は
「是正命令」を受けたトヨタ自動車は再発防止策をまとめ、先月9日、国土交通省に提出しました。
この中で、一連の問題の原因は経営と現場の両面にあったとして、経営層や幹部職員に認証業務に関する教育を行うほか、経営層に適正な情報を報告できる体制を確保するとしています。
また、認証の社内審査を行う担当者を置くなど認証試験のモニタリング体制の構築などを進めていくとしています。
そして、再発防止に向けた認証部門の体制強化として、人員を今の400人の体制から1割ほど増やす方針です。
専門家「ルールを守ることよりも効率化を優先させた」
自動車業界に詳しい、東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストは、不正が起きた背景について、「トヨタがグローバル化し、成長していく中で、ルールを守ることよりも効率化を優先させたというシンプルな理解をしている」と述べたうえで、「ルールを守っていないことは事実だと思うし、弁解の余地はないと思う」と指摘しました。
一方で、会社側がまとめた再発防止策で、認証試験のチェック体制を強化する方針を示したことについては、「新型車や販売している車の改良などでスケジュールの大幅な見直しを伴うので、自動車メーカーとして厳しい内容で、反省の度合いもよくわかると思う」と評価しました。
そのうえで、「いかに現場で徹底できるかにかかっていると思う」と述べ、再発防止策の着実な実行が重要だという考えを示しました。
また、認証試験での不正がマツダやホンダなど、トヨタグループ以外の自動車メーカーでも相次いだことを踏まえて、「トヨタに限らず慣習となってきた、あるいはそれをくぐり抜けることがノウハウとなってきたものをもう1回見直して、真っ正面からルールを守るということに取り組むべきだと思います」と述べ、各社とも再発防止に向けて、法令順守の意識を浸透させていくことが重要だと指摘しました。