精神せいしん疾患しっかんで休職きゅうしょくの教員きょういん過去かこ最多さいた 初はつの6000人にん超ちょう 20代だいが高たかい増加ぞうか率りつ

こうした現状げんじょうを踏ふまえ、新卒しんそつ教員きょういんを対象たいしょうに担任たんにん業務ぎょうむの負担ふたんを軽減けいげんする取り組とりくみを始はじめた県けんもあります。

過去かこ最多さいたとなった精神せいしん疾患しっかんで休職きゅうしょくした教員きょういん

文部もんぶ科学かがく省しょうによりますと、昨年度さくねんどうつ病うつびょうなどの精神せいしん疾患しっかんで休職きゅうしょくした公立こうりつ学校がっこうの教員きょういんは、

▽小学校しょうがっこうで3202人にん、

▽中学校ちゅうがっこうで1576人にん、

▽高校こうこうで849人にん、

▽特別とくべつ支援しえん学校がっこうで872人にんなどで、

合あわせて6539人にんとなり前まえの年度ねんどより642人にん、11％増ふえて過去かこ最多さいたとなりました。

6000人にんを上回うわまわるのは、調査ちょうさを始はじめた1979年ねん以降いこう初はじめてです。

このうち1270人にんはことし4月つき時点じてんで退職たいしょくしています。

年代ねんだい別べつでは、

▽20代だいが1288人にん、

▽30代だいが1867人にん、

▽40代だいが1598人にん、

▽50代だい以上いじょうが1786人にんとなっていて、

中なかでも20代だいはこの5年ねんで1.6倍ばい以上いじょうに増ふえ、人数にんずうに占しめる割合わりあいも2018年度ねんどには0.54％でしたが、0.84％に増ふえています。

このほかにも、精神せいしん疾患しっかんで有給ゆうきゅう休暇きゅうかを使つかって1か月かげつ以上いじょう休やすんでいる教員きょういんも全体ぜんたいで5653人にんいて、休職きゅうしょく中ちゅうの教員きょういんと合あわせると1万まん2192人にんに上のぼっています。

要因よういんについて文部もんぶ科学かがく省しょうは…

要因よういんについて文部もんぶ科学かがく省しょうが各かく教育きょういく委員いいん会かいに聞きいたところ、

▽教員きょういん間かんでの業務ぎょうむ量りょうや内容ないようのばらつき、

▽保護ほご者しゃからの過度かどな要望ようぼうや苦情くじょうへの対応たいおうのほか、

▽コロナ禍かで児童じどう生徒せいとや教職きょうしょく員いん間かんでのコミュニケーションの取とりづらさがあったことなどが挙あげられたということです。

文部もんぶ科学かがく省しょう 初等しょとう中等ちゅうとう教育きょういく企画きかく課か 堀野ほりの晶あきら三さん 課長かちょう

「教員きょういんの職場しょくば環境かんきょうは非常ひじょうに深刻しんこくで、教員きょういん不足ふそくもある中なかで若手わかてをどうサポートしていくかが課題かだいであり、要因よういんを分析ぶんせきしていきたい」

働はたらけなくなった教員きょういん「体からだにどんどん石いしがのせられていくよう」

長時間ちょうじかん労働ろうどうなどによりうつ病うつびょうと診断しんだんされて働はたらけなくなった20代だいの教員きょういんは、相談そうだんしやすい環境かんきょうの整備せいびを訴うったえています。

東北とうほく地方ちほうの20代だいの若手わかて教員きょういんは、子こどもとふれあう仕事しごとに就つきたいと考かんがえて教員きょういんになり、数すう年ねん前まえに新人しんじんで赴任ふにんした小学校しょうがっこうで1年ねん目めから学級がっきゅう担任たんにんを任まかされました。

しかし、現場げんばの業務ぎょうむは想像そうぞう以上いじょうに過酷かこくだったといいます。

「やらないといけない仕事しごとに追おわれるばかりで睡眠すいみん時間じかんも短みじかくなり、無理むりやり学校がっこうに行いくものの授業じゅぎょう準備じゅんびもままならず、保護ほご者しゃ対応たいおうや子こどもへの対応たいおうに明け暮あけくれて、まるで自分じぶんの体からだにどんどん石いしがのせられていくようで、学校がっこうに行いくことがとてもつらかったです」

忙いそがしいときは土日どにちを含ふくめ3週間しゅうかん連続れんぞくで勤務きんむし、平日へいじつも午前ごぜん7時じ前まえから午後ごご9時じごろまで残業ざんぎょうして、終おわらない業務ぎょうむは家いえに持ち帰もちかえって対応たいおうするなど長時間ちょうじかん労働ろうどうが続つづいた結果けっか、うつ病うつびょうや適応てきおう障害しょうがいの診断しんだんを受うけ休職きゅうしょくしました。

特とくに担任たんにんの業務ぎょうむは、保護ほご者しゃ対応たいおうも含ふくめ精神せいしん的てきにも大おおきな負担ふたんだったといいます。

「知識ちしきや技量ぎりょうがないまま飛び込とびこむので、授業じゅぎょうや保護ほご者しゃ対応たいおうに加くわえ事務じむ作業さぎょうなども1人にんで行おこなうのは難むずかしかったです。周まわりの先生せんせいも忙いそがしそうでなかなか声こえをかけられず、悩なやんでも自力じりきで解決かいけつしなければと考かんがえていました」

それでも、子こどもたちと接せっすることにはやりがいを感かんじ、いずれは学校がっこう現場げんばに戻もどりたいと準備じゅんびを進すすめています。

「若手わかてからしたら、教員きょういんの仕事しごとは試練しれんの連続れんぞくでいきなり高たかい壁かべがそびえ立そびえたってなんとかのぼらないといけないという感覚かんかくです。悩なやんだときに話はなしを聞きいてもらえる環境かんきょうや、ふだんの授業じゅぎょうなどを複数ふくすうの目めで見みるような体制たいせいを築きずいてもらえれば、若手わかても働はたらきやすくなると思おもいます」

新卒しんそつ教員きょういんを対象たいしょうに担任たんにん業務ぎょうむの負担ふたん軽減けいげんの取り組とりくみも

学校がっこう現場げんばでの若手わかての早期そうき離職りしょくを防ふせごうと、新卒しんそつ教員きょういんを対象たいしょうに担任たんにん業務ぎょうむの負担ふたんを軽減けいげんする取り組とりくみを始はじめた県けんもあります。

山形やまがた県けんでは、2021年度ねんどに精神せいしん疾患しっかんが理由りゆうで退職たいしょくした採用さいよう5年ねん目めまでの若手わかて教員きょういんが7人にんと、過去かこ5年ねんで最もっとも多おおくなるなど近年きんねん、若手わかての早期そうき退職たいしょくが増加ぞうか傾向けいこうにあり課題かだいとなっています。

このため、県けん教育きょういく委員いいん会かいでは、今年度こんねんどから新卒しんそつの教員きょういんを対象たいしょうに担任たんにん業務ぎょうむの負担ふたんを軽減けいげんしています。

具体ぐたい的てきには、新人しんじんには「担任たんにん」を持もたせず、教科きょうか担任たんにんと副ふく担任たんにんを兼務けんむして専門せんもんの教科きょうかの授業じゅぎょうを行おこないながら先輩せんぱい教員きょういんのもとで学級がっきゅう経営けいえいを学まなぶ形かたちと、「担任たんにん」を持もたせるものの定年ていねん退職たいしょくした元もと教員きょういんなどが支援しえん員いんとして授業じゅぎょうの一部いちぶをサポートする形かたちを取とっています。

このうち、今年度こんねんど村山むらやま市立しりつ楯岡たておか小学校しょうがっこうに着任ちゃくにんした鹿野かの真しん依よさん（23）は担任たんにんを持もたず、複数ふくすうのクラスで週しゅう18コマ程度ていど理科りかの授業じゅぎょうを担当たんとうしながら、3年生ねんせいのクラスで副ふく担任たんにんを務つとめています。

宿題しゅくだいの丸まる付づけなど担任たんにんの業務ぎょうむがない分ぶん、空あいた時間じかんで教材きょうざい研究けんきゅうを行おこなったりほかの教員きょういんの授業じゅぎょうを見学けんがくしたりすることができ、余裕よゆうをもって働はたらけているといいます。

鹿野かの真しん依よさん

「教員きょういんの仕事しごとが多岐たきにわたる中なか、少すこしずつじっくり覚おぼえていくことができていると実感じっかんしています。周まわりの先生せんせいたちから学まなんだ上うえで来年らいねん担任たんにんになれるのは強つよみだと思おもいます」

県けん教育きょういく委員いいん会かいによりますと、今年度こんねんどは精神せいしん的てきな病気びょうきで休職きゅうしょくした新卒しんそつ教員きょういんはまだおらず、対象たいしょう者しゃへのアンケート調査ちょうさでも肯定こうてい的てきな意見いけんが多おおいということです。

この取り組とりくみを知しり、他た県けんから採用さいよう試験しけんを受うけた人ひともいるということです。

山形やまがた県けん教育きょういく委員いいん会かい教職きょうしょく員いん課か 森山もりやま謙一けんいち 課長かちょう補佐ほさ

「昔むかしは担任たんにんをしながら若手わかてを『鍛きたえていく』というイメージがあったが、若手わかてを『守まもる』という視点してんを新あらたに加くわえた。育そだてる側がわも成長せいちょうし学校がっこう全体ぜんたいで若手わかてを盛り上もりあげ、生き生いきいきと働はたらける環境かんきょうをつくれるよう進すすめたい」

専門せんもん家か「国くにや自治体じちたいによる人材じんざいや予算よさんの確保かくほ必要ひつよう」

精神せいしん疾患しっかんで休職きゅうしょくした教員きょういんが過去かこ最多さいたとなったことについて、教員きょういんの精神せいしん疾患しっかんに詳くわしい、三楽さんらく病院びょういん精神せいしん神経しんけい科かの真金まがね薫子かおるこ部長ぶちょうは次つぎのように指摘してきします。

三楽さんらく病院びょういん 精神せいしん神経しんけい科か 真金まがね薫子かおるこ 部長ぶちょう

「近年きんねんはさまざまな仕事しごとが加速度かそくど的てきに増ふえている印象いんしょうだがそれに対にたいして教員きょういんの数かずは全まったく足たりていない。国くにや自治体じちたいによる人材じんざいや予算よさんの確保かくほがもっと必要ひつようで、教員きょういんが子こどもたちとしっかり向き合むきあえるような環境かんきょうを整備せいびすべきだ」

多おおくの教員きょういんを診みてきた中なかで、従来じゅうらいは少すくなかった20代だいなど若手わかて教員きょういんの受診じゅしんも近年きんねん増ふえているということです。

「『教育きょういく現場げんばは忙いそがしい』とか『ブラックだ』と聞きいたうえで覚悟かくごを持もって教員きょういんになった人ひとが多おおいが、実際じっさいに働はたらき始はじめたら『予想よそう以上いじょうだった』という声こえがよく聞きかれる。若手わかてであってもベテランの先生せんせいと同おなじような指導しどう力りょくを求もとめられる中なかで、これまで以上いじょうに多おおくの仕事しごとをこなさなければならず、先輩せんぱい教員きょういんから学まなぶ時間じかんも取とれなくなっている」

「本来ほんらいは管理かんり職しょくが教員きょういんの健康けんこう状態じょうたいなどに気配きくばりをすることが非常ひじょうに大切たいせつだ。教育きょういく現場げんばでは3年ねん目めでベテラン扱あつかいされてしまう学校がっこうも多おおいが、5年ねんぐらいは若手わかてとして捉とらえて育成いくせいしていけるといいと思おもう」