夜間におけるいちご狩りの普及
従来、いちご狩りといえば冬から春にかけて日中に行われる定番のレジャーであったが、近年、日本国内ではその常識を覆す「夜のいちご狩り」が静かに広がりを見せている。温室内を幻想的な照明で彩る夜間のいちご狩りは、昼間とは異なる雰囲気を演出し、非日常的な体験を求める利用者から高い支持を得ているという。
この新らな取り組みの背景には、農家が抱える経営上の課題がある。電気代や肥料代、人件費などの経費が年々上昇しているにもかかわらず、昼間だけの営業では十分な収益を確保しきれない農園が増加しているのが現状である。さらに、冬季にはいちごの生育を維持するため、夜間もハウス内の暖房や照明を稼働させざるを得ない。こうした状況を踏まえ、農家は「夜間も電力を消費するのであれば、その時間帯を活用して観光客を受け入れよう」と発想を転換したのである。追加のコストがほとんど発生しない上、収益向上も期待できることから、合理的な経営判断と言える。
また、現代社会における人々のライフスタイルの変化も、夜間いちご狩りの普及を後押ししている。共働き世帯の増加や、平日・週末を問わず多忙な生活を送る人々が増えたことにより、日中にレジャーの時間を確保することが難しくなっている。
そのため、仕事帰りや週末の夜に気軽に楽しめる「夜のいちご狩り」は、静かな雰囲気の中で過ごしたい層やデートを目的とする利用者にも好評を博している。
このような動きは、従来の農業観光の枠を超えた新しいモデルの創出に繋がっている。観光客は夕食後の時間を有効に活用でき、農家側も既存設備を最大限に利用して収益性を高めることが可能となるため、まさに「一石二鳥」の取り組みであると言える。
現在、この夜間営業の流れはいちごにとどまらず、将来的にはぶどうやみかんなど他の果物でも「夜の収穫体験」が導入される可能性が指摘されている。農業と観光が連携し、柔軟かつ創意工夫に富んだ新らなトレンドが今後も日本各地で拡大していくことが期待されている。