《政府 与党は》
石破首相 “日米首脳会談 それほど時間かからずに決まる”
アメリカのトランプ新大統領の就任を受けて石破総理大臣は21日午前、総理大臣官邸で記者団に対し、早期の日米首脳会談の実施に改めて意欲を示した上で、両国の国益を踏まえながら世界の平和に貢献できるよう、信頼関係を確立したいという考えを示しました。
この中で、石破総理大臣は、トランプ新大統領の就任演説について「『メイク・アメリカ・グレート・アゲイン』そのものだったと思う。歴代大統領の就任演説は、高まいな理想を語るのが定番だったが、南部国境に部隊を派遣することや、エネルギー政策の転換など、今まで選挙戦でトランプ氏が語ってきたことがそのまま演説になったという印象だ」と述べました。
その上で、トランプ氏との日米首脳会談について「岩屋外務大臣が就任式に参加し、地ならしを行っている。日程は最終的に両方の都合が合う日にちを決定することになり、それほど時間はかからずに決まるかと思うが、国会審議に影響が出ないよう、各党の理解も得ながら決定する」と述べ、早期の実施に改めて意欲を示しました。
そして「トランプ氏は多国間の枠組みよりも、2国間の協議を優先すると今のところ考えている。わが国とアメリカの国益の両方を生かしながら、世界平和や世界経済に2国間の関係をどう生かすことができるかを中心に真摯(しんし)な議論を行い、信頼関係を確立したい」と述べました。
石破首相 深夜には「X」でもメッセージ
アメリカのトランプ新大統領の就任を受けて、石破総理大臣は21日午前2時、旧ツイッターの「X」にお祝いのメッセージを投稿しました。
この中では、「トランプ合衆国大統領の御就任に、心からお祝い申し上げます。日米協力関係を強化し、自由で開かれたインド太平洋という共通の目標の実現を共に追求していくために、トランプ大統領と連携していきたいと思います。」と日本語と英語でつづっています。
林官房長官 米「パリ協定」離脱めぐり “協力方法を探求”
林官房長官は閣議のあとの記者会見で「日米同盟は、引き続きわが国の外交・安全保障政策の基軸だ。石破総理大臣とトランプ大統領との間をはじめトランプ新政権との間でできるだけ早期に会談を実施して率直に議論を行い、強固な信頼協力関係を構築し、日米関係と日米同盟をさらなる高みに引き上げていきたい」と述べました。
一方、ホワイトハウスが地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱すると発表したことについて「気候変動は人類共通の待ったなしの課題で世界の気候変動対策へのアメリカの関与は引き続き重要だ。アメリカと協力していく方法を探求しつつ気候変動問題に積極的に取り組んでいく」と述べました。
また、トランプ氏が就任演説で外国に関税を課すと主張したことについては「現時点で具体的な内容は明らかではなく、今後明らかになる措置の具体的な内容やわが国への影響を十分に精査した上で適切に対応していく」と述べました。
中谷防衛大臣 “密接に意思疎通”
中谷防衛大臣は、閣議のあとの記者会見で「新国防長官を含めトランプ政権との間でも強固な信頼、協力関係を構築し、引き続き、日米同盟の抑止力や対処力のいっそうの強化を図るため、密接に意思疎通をしていく。新国防長官の就任のあと、早い時期に会談の機会を持ちたい」と述べました。
自民 森山幹事長 “日米首脳会談の早期実現を”
自民党の森山幹事長は記者会見で「就任をお祝い申し上げる。石破総理大臣とトランプ大統領との日米首脳会談を早期に実現して率直な意見交換を重ね、日米両国のより強固な信頼関係を構築することが重要だ。両国の協力は東南アジア地域のみならず、世界の平和と安定につながるという意識をトランプ大統領と共有し、厳しさを増す国際情勢にしっかりと取り組みたい」と述べました。
《経済界は》
経団連の十倉会長は「アメリカの力強い経済とリーダーシップは、世界経済の安定と発展に欠かせない。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持するために、アメリカが引き続き日本と連携し、主導的な役割を果たすことを強く希望する」というコメントを発表しました。
そのうえで、「今後も両国間の貿易・投資の促進を通じて、強固な日米経済関係が一層発展していくことを期待する。アメリカ政府においては、予見可能性が高く、企業が安心して投資できる環境の整備を望む。経団連は、日本企業の継続的な投資や雇用創出を通じたアメリカの経済成長への貢献を推進し、日米経済関係の一層の強化を図っていきたい」としています。
《被団協 拉致被害者は》
広島県被団協理事長“核廃絶に向けて核軍縮を”
広島県被団協の佐久間理事長は去年12月ノルウェーの首都オスロで開かれたノーベル平和賞の授賞式にあわせて現地に赴くなど、国内外で核兵器の廃絶を訴えてきました。
佐久間理事長は、トランプ氏がアメリカの大統領に就任したのにあわせてNHKの取材に応じ、「事前の声明などでもアメリカ第一主義を掲げ、他国と友好を深める様子を感じ取ることができない」と不安を示しました。
その上で「トランプ大統領には核兵器の廃絶に向けて核軍縮をするよう訴えたい」と述べたうえ、広島に来て被爆の実相に触れるよう求めました。
22日で発効から4年となる核兵器禁止条約をアメリカも日本の政府も批准せず、締約国会議へのオブザーバー参加もしていないことについては、「アメリカ国民だけでなく世界各国で核兵器廃絶への運動が盛り上がるよう、被爆者が訴えていくことが必要だ」と語りました。
拉致被害者“なんとか助け出して”
史上初の米朝首脳会談に臨み、北朝鮮のキム・ジョンウン総書記に直接、拉致問題解決の必要性を提起したトランプ氏が再びアメリカの大統領に就任したことについて、中学1年のときに拉致された横田めぐみさんの弟で拉致被害者の家族会代表の横田拓也さんと母親の早紀江さんがそれぞれコメントを出しました。
横田拓也さんと母親の早紀江さんは、トランプ大統領が1期目の2017年と2019年に日本を訪れた際、いずれも東京の迎賓館で面会しています。
横田拓也さんはコメントの中で、「全拉致被害者の即時一括帰国を強く求める。北朝鮮は拉致問題の解決、そして家族会の親世代が健在なうちに全拉致被害者との再会を実現させなければ、日朝両国に明るい未来がないことを認識する必要がある。そのことを米国政府に改めて強く働きかけ、日米連携で北朝鮮に対して強く迫ってほしい。日本は米国との信頼関係を構築し、言葉に熱量を込めて首脳どうしの絆を深めてほしい」と述べました。
また、早紀江さんは(さきえ/88)「私たちの娘めぐみも含めて、たくさんの日本の若者たちが北朝鮮に拉致されたままでいます。何度も日本の歴代の総理とお会いしてお願いしてきましたが※蓮池さんら5人がお帰りになった後は全く動かない。こんなに大変な問題なのに、なんでこんなに動かないんだろうと疑問のままでいます。私も年を取ってしまい、早くしないと会えないという思いで、非常に焦っております。トランプさんはジョンウン氏との対話ができる方ですので、お互いが平和になれるように願っておりますので、ぜひトランプ大統領に、拉致被害者の救出、帰国を訴えていただき、なんとか助け出していただきたい」とコメントしました。
トランプ大統領と拉致被害者家族 これまでに2回面会
トランプ大統領はこれまで、2017年と2019年の2回、いずれも東京の迎賓館で拉致被害者の家族と面会しています。
2017年11月、トランプ大統領は就任後、初めて日本を訪れ、家族会の当時の代表で田口八重子さんの兄の飯塚繁雄さんや中学1年の時に拉致された横田めぐみさんの母親の早紀江さんなど家族17人と面会しました。
家族は、被害者の1日も早い帰国に向けた協力を求め、トランプ大統領は面会後の記者会見で、「拉致被害者の家族の方々から悲しい話をたくさん聞いた。彼らは皆、北朝鮮によって拉致された。被害者たちは、語学の勉強やそのほかさまざまな目的で日本から拉致された。とんでもない行為だ」などと述べ、拉致問題の解決に向けて日本政府と協力していく意向を強調しました。
そして、トランプ大統領は2018年に史上初の米朝首脳会談に臨み、キム・ジョンウン総書記に直接、拉致問題解決の必要性を提起しました。
2度の米朝首脳会談のあとに行われた2019年5月の2回目の面会では、家族15人が出席し、このうち横田早紀江さんは、トランプ大統領から娘のめぐみさんに「きっと会えるよ」と言葉をかけられたということです。
面会のあと、トランプ大統領は、「拉致被害者のご家族と、お会いするのはこれが2度目です。いつも私は拉致の問題を気にかけています。我々は、ともに働きかけ、みなさんの家族を故郷に連れ戻したいと考えています。みなさんの経験はとても悲しい話なのは理解しています」などと述べ、拉致問題の解決に向けトランプ政権としても北朝鮮に働きかけていく考えを示しました。
しかし、その後も拉致問題は未解決のままで、家族会の代表を14年にわたって務めた飯塚繁雄さんは2021年に亡くなるなど被害者との再会を果たせずに亡くなる家族が相次いでいます。
安否が分からない拉致被害者は政府が認定しているだけでも12人に上っていますが、親世代でいまも健在なのは、88歳の早紀江さんと有本恵子さんの父親で96歳の明弘さんの2人だけとなっていて、高齢化が一段と進む中、先行きが見通せない現状に家族は焦りを募らせています。
《若者は》
トランプ氏がアメリカの大統領に就任し地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名したことなどについて、子どもたちへの環境教育などに取り組む日本の若者団体からは「アメリカはパリ協定を離脱するが、諦めるのは早く、環境への取り組みで今まで以上に横の連携を強化していくことだ大事だ」といった声が聞かれました。
子どもたちへの環境教育などに取り組む日本の若者団体「SWiTCH」代表の佐座槙苗さんは2024年のCOP29で日本政府団の民間のメンバーとして現地に入り世界の気候変動の問題などをめぐって各国の若者と交流しました。
トランプ氏は就任式で気候変動対策を優先課題としていたバイデン政権から方針転換して化石燃料を増産する考えを強調し、その後、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名しました。
これについて佐座さんは「パリ協定の離脱は国際関係に大きなインパクトを与え、本来であればアメリカが途上国を支援する資金がなくなると思います。ヨーロッパや日本がどれだけカバーすることができるかなど、私たちが国際社会においても重大な責任を担うことになるのではないか」と述べました。
その上で、「世界の若者たちには『地球が本当に危機的な状況だ』という認識がすでにあります。去年のCOP29でアゼルバイジャンの会場に行ったときも、予想されたアメリカのパリ協定離脱に対し『今まで以上に横の連携を強化しないといけない』という意識が本当に強かったです。実際にアメリカ国内でも『パリ協定は守らないといけない』と信じて頑張っている自治体や団体はたくさんあるので、そうした団体などとのパートナーシップをもっと促進していこうという話がわたしたちの間で上がっています」と話しました。
そして「トランプ大統領の4年の任期が終わったあとに、アメリカがまたパリ協定の中に入り直す可能性は高いと思います。その準備のためにも、今までパリ協定を支持してきた人たちをサポートし、強化していくよいタイミングだと思っています。気候危機でいちばんインパクトを受けるのは途上国や南半球の人たち、そして私たち若い世代です。アメリカはパリ協定を離脱しますが、諦めるのは早いと思っています」と話していました。