アメリカ野球殿堂は、選手の場合、全米野球記者協会に10年以上所属する記者による投票で、選手としての記録やチームへの貢献などを基準に75%以上の票を得た候補者が選ばれます。
21日、ことしのアメリカ野球殿堂入りが発表され、マリナーズなどで19年にわたってプレーし、2019年に引退したイチローさんが選考対象1年目で選ばれました。
イチローさんはことしの殿堂入りの候補者の中でトップとなる、99.7%の得票率で、注目されていた満票での選出には1票届きませんでしたが、日本選手で初めてアメリカ野球殿堂入りを果たしました。
プロ野球のオリックスから2001年に大リーグのマリナーズに移籍したイチローさんは最初のシーズンから10年連続で200本以上のヒットを打ち、2004年にはシーズン262安打をマークして大リーグ記録を84年ぶりに更新する快挙を果たしました。
大リーグではマリナーズとヤンキース、そしてマーリンズで通算19年プレーし、歴代24位の3089本のヒットを打ちました。
イチローさんは今月、日本の野球殿堂にも選ばれていて外国人選手も含めて初めて日米両方の野球殿堂入りとなりました。
野球殿堂の表彰式典はことし7月にニューヨーク州クーパーズタウンで行われる予定です。
イチロー氏の金字塔と功績
イチローさんが大リーグに移籍したのは2001年、27歳のときでした。
現在の日本ハムの監督、新庄剛志さんとともに日本の野手として大リーグへの初めての挑戦でした。
プロ野球ではシーズン200本安打や7年連続の首位打者など圧倒的な実績で海を渡ったイチローさんに対しても、当時はアメリカのメディアやファンから厳しい目が向けられました。
引退会見で当時を振り返ったイチローさんは「アメリカのファンの方々は最初はまあ厳しかったですよ。2001年のキャンプなんかは『日本に帰れ』ってしょっちゅう言われましたよ」と語っています。
そんなシビアな声をよそに、イチローさんは1年目からレギュラーとして活躍し、巧みなバットコントロールでヒットを量産しました。
俊足もいかして内野安打や盗塁を積み重ね、最初のシーズンでいきなり打率3割5分、56盗塁の成績で首位打者と盗塁王に輝きました。
また、ライトからの送球が「レーザービーム」と称されるほどの強肩でも、シーズン116勝を挙げたチームに大きく貢献し、当時、大リーグ史上2人目となる新人王とシーズンMVP=最優秀選手の同時受賞を果たしました。
そして、4年目の2004年にはシーズン262安打をマークして大リーグ記録を84年ぶりに更新する偉業を成し遂げました。
大リーグ新記録となった258本目のヒットはイチローさんの真骨頂とも呼べるセンター返しから生まれた1打で本拠地の観客からの祝福に一塁ベースで応える姿は日米の野球ファンの記憶に深く刻まれています。
この記録は20年がたった今も破られていません。
1年目から10年連続でシーズン200本安打とオールスターゲーム選出、それに守備の優れた選手に贈られるゴールドグラブ賞受賞を続け、マリナーズの中心選手として活躍しました。
2012年のシーズン途中にトレードで移籍したヤンキースや2015年に移籍したマーリンズでは先発出場が減って出場機会が限られる中、徹底したトレーニングと体調管理を続けてヒットを積み重ねました。
そして、2016年にはピート・ローズさんが持っていた大リーグの通算安打記録4256本を、日米通算の安打数で超え、8月には大リーグ史上30人目となる通算3000本安打に到達しました。
2018年のシーズンには6年ぶりにマリナーズに復帰し、プロ28年目の45歳で迎えた翌年、東京ドームで行われた開幕カードに2試合出場した後に現役を引退し、数々の偉業を成し遂げてきた現役生活に幕を下ろしました。
大リーグ19年で残した通算成績は、安打数が歴代24位の3089本で、打率は3割1分1厘、ホームラン117本、打点780、盗塁数は509に上ります。
選手として数々の金字塔を打ち立ててきたイチローさん。
アメリカ球界最高と言われる栄誉が加わり、名実ともにレジェンドの仲間入りを果たしました。
アメリカ野球殿堂とは
アメリカ野球殿堂は、大リーグをはじめとする野球史に大きな功績を残した選手や監督、それに関係者が選出されることになっていて、殿堂入りを果たすことはアメリカ球界最高の栄誉と言われています。
「野球の神様」と呼ばれた、ベーブ・ルースや、大リーグで初めての黒人選手、ジャッキー・ロビンソンなど伝説的な選手も含め、去年までに選手275人を含むあわせて348人が殿堂入りを果たしています。
現在の選出方法は、大リーグで10年以上プレーし、引退から5年たった選手が候補者となる「記者投票」と、監督や関係者などを16人の委員が選考する「時代委員会」の2つがあります。
このうち「記者投票」は全米野球記者協会に10年以上在籍する記者による投票で、選手としての記録のほか、チームへの貢献、さらにスポーツマンシップや“誠実さ”を基準に75%以上の得票を集めた候補者が選出されることになっています。
日本選手ではこれまで、2014年の野茂英雄さんと、2018年に松井秀喜さんの2人が候補者となりましたが、いずれも75%以上の票を集めることができず、これまで日本選手や関係者が殿堂入りしたことはありません。
殿堂入りを果たすと、毎年7月ごろに「野球発祥の地」と言われるニューヨーク州のクーパーズタウンで表彰式典が行われることになっています。