

オミクロン株が派生? BA.2とは
現在、世界中で感染が広がっているオミクロン株「BA.1」ではウイルスの表面にある突起部分「スパイクたんぱく質」の一部に欠けている部分がありますが、「BA.2」では、この欠けている部分がないことが分かっています。
ヨーロッパでは、この部分を目印にしてオミクロン株を検出しているということで、見つけられないこともあると指摘されています。
(日本で行われている検査では検出できるとされています)
また、1月26日の厚生労働省の専門家会合では、このウイルスが広がっているデンマークのデータを分析した結果として、1人が何人に感染を広げるかを示す実効再生産数が「BA.1」に比べて18%上昇している可能性があると報告されました。 デンマークの保健当局のもとにある研究所によりますと、「BA.2」は2021年の年末の1週間ではデンマーク国内で検出される新型コロナウイルスの20%ほどだったのが、2022年1月中旬の1週間では45%ほどになったとしています。 ただ、デンマーク政府のもとにある感染症の研究所は、1月20日に出した声明で、「BA.1」と「BA.2」で入院に至るリスクは差がなく、感染性の高さやワクチンの効きに違いがあるかどうかは調査中だとしています。 イギリスの保健当局は1月21日、国内外で増加していることから、「調査中の変異ウイルス」に位置づけたことを公表しました。イギリスでは従来のオミクロン株「BA.1」が優勢で、「BA.2」が占める割合は少ないとしています。ただ、ウイルスの遺伝子の違いにどのような意味があるか分からないところもあり、さらに分析を続けるとしています。
国立感染症研究所の暫定報告によりますと、オミクロン株に感染し発症した113人について分析した結果、平均的な潜伏期間は3日余りでした。 ウイルスにさらされたあと、3日後までに半数が発症。 6日後までにはおよそ90%が発症し、9日後までだと98%を超える人が発症していました。 そして、「ある人が感染してからほかの人に感染させるまでの期間」=「世代時間」も短くなっています。 厚生労働省の専門家会合の資料によりますと、世代時間はデルタ株ではおよそ5日だったのに対し、オミクロン株ではおよそ2日だと考えられています。 短い期間のうちに次々と感染させるため、急速に感染が広がっているのではないかと考えられています。
日本国内ではまだ急増が続いていますが、ピークをできるだけ低くして、少しでも影響を減らすことが大事だと専門家は指摘しています。
ポイントは、オミクロン株でも、感染経路はこれまでの新型コロナウイルスと変わらない点です。 飛まつや「マイクロ飛まつ」と呼ばれる密閉された室内を漂う小さな飛まつが主で、ウイルスがついた手で鼻や口などを触ることによる接触感染もあります。 国立感染症研究所が1月13日に出したオミクロン株に感染したケースの疫学調査の結果では、オミクロン株でも、飲食店での職場同僚との忘年会や、自宅での親族との会食など、飲食を通じた感染が見られていて、飛まつ感染が多くなっています。 職場での密な環境での作業を通じて感染するケースも報告されています。 これまでも続けてきた「マスクを着用する」、「換気を行う」といった対策を徹底することが重要になっています。
マスクをとった会話や飲食の場面で感染するリスクが高く、厚生労働省の専門家会合は、ワクチン接種者も含め、マスクの正しい着用、手指衛生、換気などの徹底を継続することが必要で、「1つの密でもできるだけ避けた方がよい」としています。
ファイザーやモデルナの「mRNAワクチン」の2回目の接種から6か月以上たった場合、入院を防ぐ効果は、デルタ株が優勢だった時期に81%だった一方、オミクロン株が優勢になった時期には57%でした。 しかし、3回目の接種のあとではデルタ株の時期は94%、オミクロン株の時期は90%に上昇したということです。 また、ワクチンの追加接種を受けた人と比べ、受けていない人は入院する割合が大幅に高くなり、50歳から64歳で44倍、65歳以上で49倍になるという分析もあわせて公表しました。 CDCは、症状の悪化を防ぐためには3回目の接種が重要で、未接種者はできるだけ早くワクチンを接種する必要があるとしています。
WHO=世界保健機関は1月25日の週報で、「オミクロン株は各国で感染者数が急増しているにもかかわらず、重症化や死亡のリスクは低いようだ」としています。 また、オミクロン株では、鼻やのどといった上気道の炎症を引き起こしやすいものの、ほかの変異ウイルスと比べて肺まで達して重症化するリスクは低いとしています。 ただ、感染者数が非常に多いため、多くの国で入院者数は急増していて、医療体制がひっ迫しているとして、警戒を呼びかけています。
ただ、イギリスでは3回目の追加接種を受けた人が2022年1月25日の時点で64.4%に上っていて(12歳以上)、1月27日時点で全人口の2.5%にとどまっている日本とは状況が異なるため、注意が必要です。 国内でも各地から軽症者が多いという報告が相次いでいますが、国内で最も早い時期に感染が広がった沖縄県では重症化リスクのある高齢者に感染が広がってきています。 沖縄県で感染者に占める60代以上の割合は、1月23日までの1週間でおよそ16%と徐々に上昇してきています。 病床の使用率は日に日に上がってきていて、1月26日時点で沖縄県では63.8%、大阪府では53.9%、東京都では42.8%などとなっています。 国内では死者数が少ない状態が続いていますが、海外では感染者数が減っても死者数が増加したところがあります。 イギリスでは、1月18日までの1週間での新規感染者数はおよそ67万4000人と、前の1週間と比べておよそ40%減少したあと、ほぼ横ばいとなっています。 死者数は、感染者数がピークアウトしたとみられた1月18日までの1週間で1900人余りとおよそ15%増加、その後の1週間でも1800人余りと多い状態が続いています。 日本でも、感染が広がり続けると、重症患者や亡くなる人の数が増えるおそれがあります。
厚生労働省のウェブサイトによりますと、10歳未満の新規感染者数は、2021年12月28日までの1週間では149人でしたが、2022年1月4日まででは353人、1月11日まででは2238人、1月18日まででは1万2947人と急増しています。
アメリカ小児科学会は、子どもで症状が重くなり入院に至る率は0.1から1.5%、死亡率は0から0.02%と報告しています。 日本国内では、ワクチンの接種対象年齢が5歳までに引き下げられました。 ファイザーの臨床試験では、5歳から11歳での発症を防ぐ効果は90.7%で、接種後に出た症状もおおむね軽度から中程度だったとしています。
「どの子が重症化するか事前に特定できず、ワクチン接種で備えるのは大切なことだ。オミクロン株は、上気道、鼻やのどで増えると言われていて、子どもはたんを出しにくかったり、気道が小さかったりして、激しくせきこんだり呼吸困難になったりすることも考えられる。子どもにとっての上気道の感染症は侮ってはいけない。あらかじめ親子でワクチンについて理解して、メリットとデメリット、副反応をよく考えて、子どもも親子も納得して進めなければいけない」 と話しています。
『アルファ株』(2020年12月 イギリスで最初に報告) 『ベータ株』(2020年12月 南アフリカで最初に報告) 『ガンマ株』(2021年1月報告 ブラジルで拡大) 『デルタ株』(2020年10月 インドで同じ系統が最初に報告) 『オミクロン株』(2021年11月 南アフリカが最初に報告)
『ベータ株』↑ 『ガンマ株』↑ 『デルタ株』↑↑ 『オミクロン株』↑↑↑ オミクロン株の感染スピードの速さを示すデータが、各国から報告されています。 WHOの週報では、家庭内での「2次感染率」はデルタ株の21%に対し、オミクロン株は31%だったとする、2021年12月のデンマークでの分析結果を紹介しています。 アメリカのCDC=疾病対策センターは、オミクロン株の感染力は最大でデルタ株の3倍とするデータがあるとしています。
『ベータ株』 入院のリスク・入院時の死亡率高い可能性 『ガンマ株』 入院・重症化のリスク高い可能性 『デルタ株』 入院のリスク高い可能性 『オミクロン株』 入院・重症化リスク低い オミクロン株では、入院に至るリスクや重症化リスクがデルタ株に比べて低いとされています。 一方、イギリスの保健当局は、オミクロン株は重症化リスクが低いといっても、感染拡大のスピードの速さや免疫から逃れる性質があり、必ずしも医療機関への負荷が減ることを意味しない、と強調しています。
『ベータ株』 ウイルスを抑える抗体の働きは減る、ウイルスを攻撃する細胞の働きは維持 『ガンマ株』 ウイルスを抑える抗体の働きはやや減る 『デルタ株』 ウイルスを抑える抗体の働きは減る 『オミクロン株』 再感染のリスク上がる WHOでは、ワクチンや過去の感染によって免疫を持つ人でも再感染しやすくなる変異があるとしています。 イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンは、オミクロン株の再感染のリスクは、デルタ株に比べて5.41倍と高くなっているとする報告を出しています。
『ベータ株』 発症予防・重症化予防ともに変わらず 『ガンマ株』 感染予防・発症予防・重症化予防ともに変わらず 『デルタ株』 感染予防・発症予防・重症化予防ともに変わらず(感染予防・発症予防は下がるという報告も) 『オミクロン株』 発症予防効果低下・重症化予防効果はあるという報告も 3回目接種で発症予防効果・重症化予防効果も上がる報告も オミクロン株は、2回のワクチン接種を完了した人でも感染するケースが報告されています。 発症予防効果は接種から時間を経るごとに下がるものの、重症化を予防する効果は一定程度保たれるというデータが出てきています。
イギリスの保健当局のデータでは、オミクロン株に対しては、ファイザーやモデルナのmRNAワクチンで、2回の接種から2週間から4週間後には発症を防ぐ効果が65~70%でしたが、20週を超えると10%程度に下がっていました。 ファイザーのワクチンを2回接種した人が3回目にファイザーかモデルナの追加接種をすると、2週間から4週間後には発症を防ぐ効果は65%~75%に上がりました。 ただ、5週間から9週間後では55~70%に、10週を超えると40~50%に下がりました。 重症化して入院するリスクを下げる効果は、発症を防ぐ効果より高くなっています。 ファイザーやモデルナ、それにアストラゼネカのワクチンを接種した人で分析すると、入院に至るのを防ぐ効果は、2回の接種後2週間から24週間では72%、25週を超えても52%、3回目の追加接種をしたあと、2週以降だと88%となっていました。
厚生労働省はオミクロン株に感染した患者には、投与を推奨しないとしています。
東京大学などの研究グループは、軽症患者用の飲み薬「ラゲブリオ(一般名モルヌピラビル)」を投与した時に体内に出る物質や、中等症以上の患者に投与される「レムデシビル」の作用を調べたところ、オミクロン株に対して、デルタ株と同じ程度の効果が得られたとする実験結果を紹介しています。 また、WHOは、重症患者に使われる免疫の過剰反応を防ぐ薬やステロイド剤は、引き続き効果が期待されるとしています。
「オミクロン株は『BA.1』であっても『BA.2』であっても感染力が強いことは変わらず、一般の国民にとってとるべき対策は変わらない。オミクロン株が急速に拡大する現状でとっている対策を徹底し続けることが何より重要だ。 一方で、感染のしかたや、症状に変化が無いかなどを監視することは最適な対策をとっていく上で大切なことなので、引き続き注視していく必要がある」と話しています。
不織布マスクで鼻まで覆い、“鼻マスク”を避けること、密にならないようにして、マスクを外すときにはより注意すること。 とくに飲食の場面での対策が重要です。 厚生労働省の専門家会合も、ワクチン接種に加えて、特に会話時などでのマスクの着用、消毒や手洗い、換気や密を避けるといった基本的な対策を続けるよう呼びかけています。
潜伏期間短く、感染広がるサイクルが短い
飲食などで感染 “鼻マスク”避けて
ワクチン追加接種で入院リスク大幅↓
重症化リスク↓も 病床使用率↑に
子どもの感染拡大 各国で懸念
これまでの変異ウイルスとの比較
▼感染力
▼病原性
▼再感染のリスク
▼ワクチンの効果(ファイザー・モデルナのmRNAワクチン)
▼治療薬の効果
専門家は
対策は変わらない