“トランスジェンダー職員しょくいんの女性じょせいトイレ利用りよう制限せいげん”最高裁さいこうさい判決はんけつへ

訴うったえを起おこした経済けいざい産業さんぎょう省しょうの50代だいの職員しょくいんは、戸籍こせき上じょうは男性だんせいですが、性せい同一どういつ性せい障害しょうがいと診断しんだんされていることを2009年ねんに上司じょうしに打ち明うちあけ、女性じょせいとして働はたらきたいと要望ようぼうしました。

経済けいざい産業さんぎょう省しょうは、ほかの職員しょくいんにも説明せつめいしたうえで、女性じょせい用ようの休憩きゅうけい室しつや更衣こうい室しつの使用しようは認みとめましたが、女性じょせい用ようトイレに関にかんしては、トラブルを避さけるためとして執務しつむ室しつがあるフロアから2階かい以上いじょう離はなれたところしか認みとめませんでした。

この対応たいおうを不服ふふくとして、職員しょくいんは処遇しょぐうの改善かいぜんを勧告かんこくするよう人事じんじ院いんに求もとめましたが、2015年ねん、「要求ようきゅうを認みとめない」と判定はんていされました。

裁判さいばんでは、トイレの使用しようを制限せいげんした経済けいざい産業さんぎょう省しょうの対応たいおうに問題もんだいはないとした人事じんじ院いんの判断はんだんが、不当ふとうかどうかが争あらそわれています。

1審しんは、「自認じにんする性別せいべつに即そくした社会しゃかい生活せいかつを送おくることは重要じゅうような法的ほうてきな利益りえきだ」と指摘してきしたうえで、国くにの対応たいおうは違法いほうだと判断はんだんし、人事じんじ院いんの判定はんていを取り消とりけしました。

一方いっぽう、2審しんは、「経済けいざい産業さんぎょう省しょうは、ほかの職員しょくいんが持もつ不安ふあんなどもあわせて考慮こうりょし、適切てきせつな職場しょくば環境かんきょうを構築こうちくする責任せきにんがある」と指摘してきして、職員しょくいん側がわの主張しゅちょうを退しりぞけました。

最高裁さいこうさいの判決はんけつは、性的せいてきマイノリティーの人ひとたちの職場しょくば環境かんきょうに大おおきな影響えいきょうを及およぼす可能かのう性せいがあります。

原告げんこくの職員しょくいんは「当時とうじの経済けいざい産業さんぎょう省しょうの対応たいおうや、人事じんじ院いんの判定はんていのいいかげんさを最高裁さいこうさいがしっかりと指摘してきしてくれることを願ねがっています」と話はなしています。

金沢かなざわ大学だいがくと民間みんかん企業きぎょうで作つくる「トイレのオールジェンダー利用りように関にかんする研究けんきゅう会かい」では、職場しょくばや公共こうきょう施設しせつのトイレ使用しように関にかんするインターネット調査ちょうさを、去年きょねん11月つき、トランスジェンダー325人にんを含ふくむ、1325人にんを対象たいしょうに行おこない、ことし6月つきに公表こうひょうしました。

トランスジェンダーの人ひとが自認じにんする性別せいべつに沿そったトイレを使つかうことをどう思おもうかについて、トランスジェンダーではない人ひとに尋たずねたところ、

◇「抵抗ていこうはない」「どちらかといえば抵抗ていこうはない」という回答かいとうが、

▽「職場しょくばのトイレ」に関にかんしては合あわせて71.5％

▽「公共こうきょう施設しせつのトイレ」は66.9％で、

「抵抗ていこうがある」「どちらかといえば抵抗ていこうがある」と答こたえた人ひとの割合わりあいを、大おおきく上回うわまわりました。

2017年ねんに公表こうひょうされた調査ちょうさ結果けっかに比くらべ、「職場しょくばのトイレ」に関にかんしては、使用しように理解りかいを示しめす回答かいとうがおよそ6ポイント高たかく、研究けんきゅう会かいでは「性せい自認じにんに沿そったトイレの利用りように理解りかいが進すすんでいることがうかがえる」と分析ぶんせきしています。

一方いっぽう、トランスジェンダーの人ひとで、実際じっさいに利用りようしているトイレと利用りようしたいトイレが一致いっちしていない割合わりあいは、

▽「職場しょくばのトイレ」が42.2％と

▽「公共こうきょう施設しせつ」の29.5％に比くらべて多おおくなっていて、

顔見知かおみしりがいる職場しょくばのほうが、周囲しゅういの目めを気きにして利用りようしづらい状況じょうきょうがうかがえるということです。

トランスジェンダーの人ひとたちが、職場しょくばや公共こうきょう施設しせつで利用りようしたいトイレとして回答かいとうしたのは、

◇「男女だんじょ別べつ」が、

▽職場しょくばで52％

▽公共こうきょう施設しせつで55％

◇「性別せいべつ問とわず使つかえるトイレ」が、

▽職場しょくばで46％

▽公共こうきょう施設しせつで42％と、

ほぼ半々はんはんで、研究けんきゅう会かいは「多様たような選択せんたく肢しを設もうけることが重要じゅうようだ」としています。

調査ちょうさを行おこなった金沢かなざわ大学だいがくの岩本いわもと健けん良りょう准じゅん教授きょうじゅは「トランスジェンダーの人ひとが自認じにんする性別せいべつに沿そったトイレを使つかう場合ばあい、人事じんじや上司じょうしの了解りょうかいが必要ひつようとなるケースがほとんどだが、職場しょくばでカミングアウトすることは難むずかしく、できたとしても理解りかいや許可きょかがなかなか得えられない実情じつじょうもある。さまざまな人ひとがいるからこそ、会社かいしゃも社会しゃかい全体ぜんたいも力ちからを発揮はっきできることを改あらためて考かんがえてほしい」と話はなしています。