JLPT N1 – Reading Exercise 33

#260
Furigana

ぼくらは、自由じゆうという言葉ことばにあるおもさをかんじる。自由じゆう勝手かってとはなるもので、自由じゆうあたえられると、そのとうさゆえにどうあつかっていいかと緊張きんちょうするのである。そのようにおしえられたわけではないのだが、その解釈かいしゃくする感性かんせいすくなくともそなわっていたということだろう。日常にちじょう仕事しごとのことでもいい、ちょっとおもかえすと、「いちそれが実感じっかんできる
自由じゆうにおやりくださいとわれると無邪気むじゃきに、あるいは無責任むせきにんに、これはらくだとおもえるだろう。
自由じゆうにおやりくださいの自由じゆうは、あなたのおもうままおきな世界せかい構築こうちくして結構けっこうですという、全幅ぜんぷく信頼しんらいかみのごとき好意こういではないのである。
もっとつきはなしている。お手並てな拝見はいけんという底意地そこいじわるさもある。だから、われたがわ本心ほんしんとしては、自由じゆうにやらせていただけるのですかと、感動かんどうのリアクションをしめしながら、じつたいして期待きたいしていないな、ようするにあてにされていないなとおもったりするのである。
それもこれも、自由じゆうという言葉ことばおもさと、それを使つかいこなす困難こんなんさをっているからである。だから、ぼくらはわかとき自由じゆういてください、自由じゆう解釈かいしゃくしてください、自由じゆうきてくださいとわれると、てられたような戦慄せんりつおぼえたものである。自由じゆう善玉ぜんだま制約せいやく悪玉あくだまだとつたえられているが、制約せいやくしめされたほうひと安心あんしんしてきられることころもあるのである。
中略ちゅうりゃく
ぼくは、自由じゆう理解りかいし、自由じゆう享受きょうじゅし、自由じゆう主張しゅちょうするためには、無免許むめんきょであってはならないとおもっている。すくなくともゆるされることと、ゆるされざることの判別はんべつ可能かのうひとだけに交付こうふされるべきなのである。
阿久悠あくゆうきよらかな厭世えんせい言葉ことばくした日本人にほんじんへ』による)

Vocabulary (44)
Try It Out!
1
「1」それが実感できるとあるが、何が実感できるのか。
1. 自由という言葉の重さ
2. 自由という言葉のあいまいさ
3. 自由という言葉の解釈の違い
4. 自由という言葉の使い方の難しさ
2
「2」自由におやりくださいと言われると、どのように感じると筆者は述べているか。
1. 失敗すると思われている。
2. 責任を押しつけられている。
3. 思いどおりにやらせてもらえる。
4. あまり頼りにならないと思われている。
3
この文章で筆者が最も言いたいことは何か。
1. 自由を定義できなければ、自由を主張するべきではない。
2. 自由の本当の意味がわからなければ、自由を与えられるべきではない。
3. 自由に伴う責任を感じられなければ、自由という言葉を使うべきではない。
4. 自由と不自由の違いがわからなければ、自由に生きることを許されるべきではない。