JLPT N2 – Reading Exercise 48

#181

Furigana

私わたしたちはどんな時ときに悩なやむのだろう。就職しゅうしょくを決きめる時とき、Ａ社しゃにするかＢ社しゃにするかで悩なやむ。今いま交際こうさいしている彼女かのじょと結婚けっこんするべきかどうかで悩なやむ。つまり何なにかの選択せんたく場面ばめん、決定けってい場面ばめんに立たたされた時ときに悩なやむのである。しかし、若者わかものたちは選えらぶことができない。いやその前まえにそもそも選えらぼうとしていない。選えらぶ意志いしがないのである。

ある調査ちょうさによると、今いまの若者わかもののうち「どの会杜かいしゃに就職しゅうしょくするか」を「自分じぶんで決きめる」のはわずか１８じゅうはちパーセント。約やく５割ごわりが「父ちち・母はは・友ともだちの意見いけんで決きめる」と答こたえている。「なるようになる」と答こたえた者ものも、約やく３割さんわりいるい（筒井つつい俊介しゅんすけ、修士しゅうし論文ろんぶん）。

「___１___」驚おどろきなのは「恋人こいびと」を「自分じぶんで選えらぶ」若者わかものが、わずか２９にじゅうきゅうパーセントであること。「なるようになる」が４割よんわりで一番いちばん多おおい。おそらく合コンごうこんか何なにかでたまたま隣となりにいた人ひとと、何なにとなくつきあい始はじめるケースけーすが多おおいのだろう。

「今いまつきあっている恋人こいびとと結婚けっこんするかどうか」を「自分じぶんで決きめる」若者わかものはさらに少すくない（２２にじゅうにパーセント）。約やく２割にわりが母ははの意見いけん、約やく２割にわりが友ともだちの意見いけんで決きめると答こたえている。これでは、悩なやみが生しょうじないのも当然とうぜんである。

就職しゅうしょくと結婚けっこんは、人生じんせいの二大にだいイベントいべんと。よい配偶者はいぐうしゃに恵めぐまれて、自分じぶんを生いかせる仕事しごとに就つく。これが今いまも昔むかしも、幸福こうふくの二大にだい条件じょうけんである。この二ふたつを自分じぶんで選えらばないのなら、たしかに大たいした悩なやみも葛藤かっとうも生うまれてこないだろう。しかしそれで果はたして、自分じぶんの人生じんせいを生いきていると言いえるだろうか。

けれど、「２に」それが今いまの若者わかものの「当あたり前まえ」なのである。

（諸富もろとみ祥彦よしひこ「〈むなしさ〉の心理学しんりがく—-なぜ満みたされないのか」による）