新入社員だった
女性が
過労のため
自殺した
大手広告会社の
電通が、
複数の
社員に対して
違法な
長時間労働をさせていた
疑いが
強まったとして、
厚生労働省は、
7日午前、
労働基準法違反の
疑いで
電通の
捜索に
入り、
強制捜査に
乗り出しました。
東京・
港区にある
電通の
本社には、
7日午前9時20分すぎ、
東京労働局の
過重労働撲滅特別対策班などの
労働基準監督官およそ
30人が
捜索に
入りました。また、
大阪の
関西支社や、
京都支社、それに
名古屋の
中部支社の
3つの
支社にも
捜索が
入りました。
厚生労働省によりますと、電通は、本社や関西支社など3つの支社の複数の社員に対し、労働組合と取り決めた協定の上限を超えた違法な長時間の残業をさせていたとして、労働基準法違反の疑いが持たれています。
厚生労働省は、電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が去年12月、過労のため自殺し、労災が認められたことを受けて先月から電通を調査してきました。この調査で、本社ビルのゲートを通る際などに記録される出退勤の時間を基に勤務の実態を調べたところ、複数の社員の残業時間が労働組合との協定の上限を大きく上回っていた疑いが強まったということです。
このため厚生労働省は、強制捜査に乗り出したもので、勤務記録などの資料を押収して、労務管理の実態を詳しく調べることにしています。
今後の捜査では、違法な長時間労働が組織全体で広く行われていなかったが焦点となり、違反があれば刑事事件として書類送検する方針です。
電通は「捜索が入ったことは事実です。調査には全面的に協力してまいります」とコメントしています。また、電通は7日、働き方についての今後の取り組みなどをすべての社員に説明することを予定していて、予定どおり午後1時から石井直社長が社員を集めてメッセージを出すということです。
一連の問題の経緯は
電通の働き方をめぐる一連の問題、最初に明らかになったのは新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が去年自殺し、ことし9月に過労が原因の労災と認められたことでした。
先月7日、母親の幸美さんが記者会見し、「労災認定されても娘は戻ってきません。娘が生きているうちに会社はどうして対策をしてくれなかったのか」と訴えました。
高橋さんの過労自殺を受けて先月14日、東京労働局の過重労働撲滅特別対策班、通称「かとく」などが電通の立ち入り調査に乗り出します。さらに電通の主な子会社にも調査が入りました。電通では3年前に当時30歳で亡くなった男性社員もことしに入り過労による労災が認められていたことが分かりました。また、おととしには大阪の関西支社が、去年は東京の本社が社員に違法な長時間の残業をさせていたとして、それぞれ是正勧告を受けていたことも明らかになりました。
電通では一連の問題を受けて先月24日から深夜勤務を原則、禁止することにして、本社や支社のビルを夜10時に一斉に消灯しています。また、組合と取り決めた残業時間の上限も今月から月5時間減らし、職場の環境を改善するとして社長や執行役員8人で作る「電通労働環境改革本部」を発足させていました。
過労自殺した高橋まつりさん
高橋さんは、静岡県の高校を卒業後、平成22年に東京大学に入学しました。
大学では文学部で哲学を学び、中国にも留学したということです。
当時を知る大学の後輩の女性は、「本当に努力家で、1字1句ノートをしっかり書いていてまじめだった。
一方で、留学やアルバイトなどいろんなことにチャレンジしていた」と話します。
メディア関係の仕事に興味を持ち、大学1年生のときから週刊朝日でアルバイトとしてインターネットに配信する動画に出演していました。
動画では雑誌の最新号の宣伝をするほか、ときにはみずから国会議員やジャーナリストにインタビュー取材することもあったということです。就職先に選んだのは大手広告会社の電通でした。
去年4月に入社し、インターネットの広告を担当する部署に配属されます。しかし、本採用となった10月以降、連日、長時間の残業が続き、ツイッターで「死にたいと思いながらこんなストレスフルな毎日を乗り越えた先に何が残るんだろうか」とか、「なんなら死んだほうがよっぽど幸福なんじゃないか」などとつづっていました。
そして、去年12月25日、クリスマスの朝に静岡に住む母親の幸美さんに、「今までありがとう」とメールを送り、その後、住んでいた社員寮から飛び降りて命を絶ちました。
大学の後輩の女性は高橋さんについて、「人の話を聞くのがうまくてアドバイスもたくさんしてくれる心の優しい人でした。彼女の思いとか夢とかがもう、かなえられないと思うのがつらい。これ以上、同じような悲劇は起きてほしくない」と話していました。