日本新聞: 井上靖が1969年のノーベル文学賞候補に川端康成受賞の翌年

井上いのうえ靖やすしが1969年ねんのノーベル文学ぶんがく賞しょう候補こうほに川端かわばた康成やすなり受賞じゅしょうの翌年よくねん

Jan 3, 2020 00:01

Furigana

シルクロードを題材だいざいにした歴史れきし小説しょうせつなどを多おおく残のこしたことで知しられる小説しょうせつ家かの井上いのうえ靖やすしが、川端かわばた康成やすなりが受賞じゅしょうした翌年よくねんにあたる1969年ねんのノーベル文学ぶんがく賞しょうの選考せんこうで初はじめて候補こうほとなっていたことが明あきらかになりました。ノーベル文学ぶんがく賞しょうの選考せんこう資料しりょうは、スウェーデン・アカデミーが50年ねんたったあと情報じょうほう公開こうかい請求せいきゅうに応おうじて開示かいじし、川端かわばた康成やすなりが日本人にっぽんじんとして初はじめて受賞じゅしょうした翌年よくねんにあたる1969年ねんの選考せんこうの議事ぎじ録ろくが、２に日にち、初はじめて公開こうかいされました。

それによりますと、この年としの候補こうほ者しゃは103人にんに上のぼり、この中なかに小説しょうせつ家かの井上いのうえ靖やすしの名前なまえがあり、この年とし初はじめて候補こうほとなっていたことが分わかりました。

井上いのうえはドイツの文学ぶんがく研究けんきゅう者しゃの推薦すいせんを受うけていましたが、議事ぎじ録ろくには「ことし、また新あらたに日本にっぽんに賞しょうを与あたえることは考かんがえられないため、この候補こうほ者しゃについては調査ちょうさを行おこなわない」とだけ記しるされ、川端かわばたの翌年よくねんに日本人にっぽんじん作家さっかへの授賞じゅしょうを再ふたたび議論ぎろんする状況じょうきょうではなかったことがうかがえます。

井上いのうえ靖やすしはシルクロードを題材だいざいにした歴史れきし小説しょうせつなどを多おおく残のこしたことで知しられ、国内こくないではこの時ときまでに、『あすなろ物語ものがたり』や『氷壁ひょうへき』、『敦煌とんこう』などの代表だいひょう作さくを発表はっぴょうしていました。

この年としの議事ぎじ録ろくに載のっていた日本人にっぽんじんは井上いのうえだけで、1963年ねんと67年ねんに最終さいしゅう候補こうほに残のこるなど高たかい評価ひょうかを受うけてきた三島みしま由紀夫ゆきおの名前なまえはありませんでした。この年としのノーベル文学ぶんがく賞しょうはアイルランド出身しゅっしんの劇げき作家さっか、サミュエル・ベケットが受賞じゅしょうしています。

専門せんもん家か「候補こうほのうわさ裏付うらづけされた」

ノーベル文学ぶんがく賞しょうの選考せんこうの歴史れきしを調しらべている日本にっぽん大学だいがく大学院だいがくいんの秋草あきくさ俊一郎しゅんいちろう准じゅん教授きょうじゅは「井上いのうえ靖やすしは1980年代ねんだい初頭しょとうに国内こくないの新聞しんぶん報道ほうどうで“ノーベル賞しょう候補こうほ”として取り沙汰とりざたされたことがあったが、今回こんかいの資料しりょうで、実際じっさいに候補こうほ者しゃであったことが初はじめて裏付うらづけされた。井上いのうえの作品さくひんは1950年代ねんだいの後半こうはんから英訳えいやくが出で始はじめ、60年代ねんだいにかけてはイタリア語ごやドイツ語ごなどヨーロッパの言語げんごへも翻訳ほんやくが増ふえていた。その後そのご、80年代ねんだいには世界せかいの文学ぶんがく者しゃで組織そしきする国際こくさいペンクラブの副ふく会長かいちょうを務つとめていて、アカデミーの井上いのうえへの評価ひょうかが、このあとどのように変かわっていったのかも興味深きょうみぶかい」と話はなしています。