連結部分が外れた状況は?
問題の列車は東京駅を午前11時20分に出発した「はやぶさ21号」と「こまち21号」で、「はやぶさ」は新青森行きの10両編成、「こまち」は秋田行きの7両編成でした。
「はやぶさ」の車両はJR北海道が所有する「H5系」、「こまち」はJR東日本が所有する「E6系」です。
午前11時半ごろ、上野駅と大宮駅の間を走行していたところ、「はやぶさ」と「こまち」の連結部分が外れ、自動的にブレーキが作動して線路上で緊急停車しました。
在来線の西日暮里駅のすぐ近くでした。
外れたときの速度は時速およそ60キロメートル、離れた車両どうしの距離はおよそ8メートルでした。
外れる前に異常はなかった?
今回の「はやぶさ」と「こまち」は午前8時50分ごろに盛岡駅で連結したあと、上り列車として東京駅へ向かい、午前11時4分に東京駅に到着しました。
連結したときも含め、特に異常は確認されなかったということです。
乗客への影響は?
642人の乗客にけがはありませんでした。
車両はその後、大宮駅に移動して乗客を降ろしました。
この影響で東北新幹線などはおよそ3時間にわたって運転できなくなり、129本が運休したほか、148本が遅れ、15万2000人余りに影響が出ました。
連結部分はどんな仕組み?
連結させる新幹線の先頭と最後尾の車両には「連結器」があり、この「連結器」は突起とくぼみがある構造です。
そして双方の車両の突起とくぼみを互いにかみ合わせて連結し、さらにロックする仕組みになっています。
こうした作業は「分割併合装置」と呼ばれる機器で電気信号を使って制御されていて、通常、走行中にこの機器を作動させることはありません。
以前にも連結部分が外れた?
東北新幹線では、去年9月にも宮城県の古川駅と仙台駅の間で、走行中に「はやぶさ」と「こまち」の連結部分が外れ、緊急停止する問題が起きたばかりでした。
JR東日本の新幹線で走行中に連結部分が外れるのはこの時が初めてでしたが、それからわずか半年の間に再び同じような問題が起き、輸送の安全が大きく揺らぎかねない事態となっています。
このときはなにが原因だった?
「こまち」側にある連結部分を外すための非常用のスイッチが作動し、外れました。
JR東日本は、スイッチの周辺に、車両製造時に出たとみられる細かい金属片が残っていて、これらの金属片がスイッチの端子に接触して作動につながったとみられるとしています。
問題のあと、連結して運転する新幹線、全96編成の非常用のスイッチの配線を取り外し、機能を無効化する作業を去年10月末までに行っています。
JR北海道も所有する新幹線、全3編成で同じ作業を去年10月末までに行っています。
去年の問題受けて対策 なぜ再び外れた?
まだ原因はわかっていません。
一方で、JR東日本は、連結部分に破損などは確認されておらず、去年9月のあと対策を行っていたことから、今回は、前回とは異なるメカニズムで連結が外れたとみています。
そのうえで、車両の状況などから「こまち」側の電気系統に原因がある可能性が高いとしています。
「こまち」側に原因があるとみている詳しい理由は明らかにしていません。
6日の記者会見で、JR東日本新幹線統括本部の池田裕彦本部長は「再びこのような事象が発生したことについて極めて重大であり、重く受け止めています。多くのお客様にご迷惑とご心配をおかけしていることを深くおわび申し上げます。この度は本当に申し訳ありませんでした」と陳謝したうえで、「いままで考えていた中で見落としているものがあるかもしれない。いま一度、技術的な観点も含めて対策を講じていきたい」などと述べ、原因究明を急ぐ考えを示しました。
今後の対応は?
JR東日本は、原因が判明し、必要な対策が完了するまでの間、新幹線の連結運転をすべて取りやめるとしています。
調査では、連結を制御する電気信号のデータの記録を精査するほか、回路や端子に異常がないかなどを確認するということです。
また、国の運輸安全委員会も事故が発生するおそれがあると認められる重大な事態、「重大インシデント」として原因の調査を始めました。
運輸安全委員会は2回続けて起きていて特に異例と認められるとしています。
専門家はどう見る
今回の問題について、鉄道工学が専門の日本大学の綱島均特任教授に聞きました
今回の事故、どのように受け止めましたか?
「走行中の新幹線の連結が外れると重大な事故につながるおそれがあり、あってはならないことだ。それが半年もたたないうちに2度も起きるということは前回の調査結果や対策が根本的に誤っていた可能性がある。車両をつなげて走らせる連結への信頼が失われている状況だ」
なにが原因だとみていますか?
「現段階で言及するのは難しいが、映像などを見るかぎり、物理的な破損などはみられないので、連結が外れる仕組みを考えると、電気的な部分に原因があったのではないかと思われる。ただ、去年9月に問題が起きたあと、仮に電気信号が送られても走行中には連結が外れないよう対策をとったはずなので、なぜ外れてしまったのか疑問だ」
再発防止のため、どのようなことが必要だと思いますか?
「そもそも走行中の新幹線や列車の連結が外れることはめったに起きない。前回、外れたときに国の運輸安全委員会が重大インシデントとして調査を行っていれば2度目は起きなかった可能性がある。JR東日本は外部の目を入れて、本質的な原因究明と対策を行っていくべきだ」