日本新闻: FRB議長ジャクソンホール講演へ利下げに関する発信に注目

アメリカの大統領だいとうりょうと金融きんゆう政策せいさくをめぐり対立たいりつしてきたFRB＝連邦れんぽう準備じゅんび制度せいど理事りじ会かいのパウエル議長ぎちょうがアメリカ西部せいぶのジャクソンホールで日本にっぽん時間じかんの22日にじゅうににち夜よる、講演こうえんを行おこないます。FRBが9月くがつ、利下りさげに踏ふみ切きるとの見方みかたが金融きんゆう市場しじょうで強つよまる中なか、トランプ政権せいけんの関税かんぜい措置そちの影響えいきょうや最新さいしんの経済けいざい指標しひょうを踏ふまえながら今後こんごの利下りさげの方針ほうしんについてどのようなメッセージを発信はっしんするかが注目ちゅうもくされています。
FRBのパウエル議長ぎちょうは、アメリカ西部せいぶワイオミング州しゅうの高原こうげんリゾート地ちとして知しられるジャクソンホールで開ひらかれているシンポジウムで、日本にっぽん時間じかんの22日にじゅうににち午後ごご11時じゅういちじから講演こうえんを行おこないます。
パウエル議長ぎちょうはこれまで、トランプ大統領だいとうりょうから繰くり返かえし利下りさげを求もとめられているのに対たいし、アメリカ経済けいざいが堅調けんちょうなことやトランプ政権せいけんによる関税かんぜい措置そちでインフレが再ふたたび進すすむリスクなどを踏ふまえ、利下りさげを急いそぐことに慎重しんちょうな考かんがえを示しめして対立たいりつしてきました。
一方いっぽう、8月はちがつ、発表はっぴょうされたアメリカの7月しちがつの雇用こよう統計とうけいは農業のうぎょう分野ぶんや以外いがいの就業しゅうぎょう者しゃ数すうの伸のびが市場しじょう予想よそうを下回したまわったほか過去かこのデータも大おおきく下方かほう修正しゅうせいされ、金融きんゆう市場しじょうではFRBが来月らいげつの会合かいごうで利下りさげに踏ふみ切きるとの見方みかたが強つよまっています。
今後こんごの金融きんゆう政策せいさくの方向ほうこう性せいを占うらなう場ばとなってきた歴史れきしあるシンポジウムで、パウエル議長ぎちょうが今後こんごの利下りさげの方針ほうしんや景気けいきの見通みとおしについてどのようなメッセージを発信はっしんするかが注目ちゅうもくされています。
二人ふたりの対立たいりつが深ふかまった背景はいけい
アメリカのトランプ大統領だいとうりょうとFRBのパウエル議長ぎちょうの対立たいりつが深ふかまった背景はいけいには、トランプ大統領だいとうりょうが経済けいざいを成長せいちょうさせるための利下りさげを求もとめてきたのに対たいし、パウエル議長ぎちょうが利下りさげを急いそぐことに慎重しんちょうだったことがあります。
対立たいりつはパウエル議長ぎちょうが任命にんめいされたトランプ政権せいけんの1期いっき目めから始はじまり、トランプ大統領だいとうりょうはパウエル議長ぎちょうに対たいして「FRBの対応たいおうが遅おそい」などと、利下りさげを求もとめて圧力あつりょくをかけました。
トランプ大統領だいとうりょうは2期にき目めのことし1月いちがつ以降いこうもパウエル議長ぎちょうを“遅おそすぎる男おとこ”と呼よんで繰くり返かえし利下りさげを求もとめましたが、パウエル議長ぎちょうはトランプ政権せいけんの関税かんぜい措置そちの影響えいきょうでインフレが再ふたたび進すすむリスクなどを踏ふまえて利下りさげを急いそぐことに慎重しんちょうで、両者りょうしゃの対立たいりつは一段いちだんと激はげしくなりました。
7月しちがつ13日じゅうさんにちにはトランプ大統領だいとうりょうが記者きしゃ団だんに対たいし「アメリカは地球ちきゅう上じょうで最もっとも低ひくい金利きんりであるべきなのに、そうなっていない。彼かれがそれを拒否きょひしているだけだ」と発言はつげんし、「パウエル氏しが辞任じにんすればそれはすばらしいことだ。彼かれが辞任じにんすることを望のぞんでいる」と述のべました。
さらに、7月しちがつ24日にじゅうよっかにはFRBの本部ほんぶに異例いれいの訪問ほうもんを行おこない、パウエル議長ぎちょうの目めの前まえで「彼かれには金利きんりを引ひき下さげてほしい」と改あらためて利下りさげを要求ようきゅうしました。
一方いっぽう、パウエル議長ぎちょうは7月しちがつ30日さんじゅうにちの記者きしゃ会見かいけんで、トランプ大統領だいとうりょうの発言はつげんがFRBの独立どくりつ性せいに及およぼす影響えいきょうについて問とわれたのに対たいし「先進せんしん国こくの政府せいふは中央ちゅうおう銀行ぎんこうの決定けっていとの間まに距離きょりを置おいてきた。もし、そのような距離きょりがなかったら例たとえば、金利きんりを操作そうさして選挙せんきょに影響えいきょうを与あたえるといった大おおきな誘惑ゆうわくが生しょうじるだろう。それは私わたしたちが望のぞんでいないことだ」と独立どくりつ性せいの重要じゅうよう性せいを強調きょうちょうしていました。
ジャクソンホールでのシンポジウムとは
このシンポジウムは1982年せんきゅうひゃくはちじゅうにねんからアメリカ西部せいぶワイオミング州しゅうのロッキー山脈さんみゃくを一望いちぼうできる高原こうげんリゾート地ち、ジャクソンホールのホテルで開ひらかれていることから「ジャクソンホール会議かいぎ」とも呼よばれています。
FRBの地区ちく連銀れんぎんの1いちつ、カンザスシティ連銀れんぎんが主催しゅさいしてアメリカやユーロ圏けん、イギリス、カナダ、日本にっぽんなど主要しゅような国くにの中央ちゅうおう銀行ぎんこうの幹部かんぶや経済けいざい学者がくしゃ、著名ちょめいなエコノミストが参加さんかし、雄大ゆうだいな自然しぜんの中なか、リラックスした雰囲気ふんいきで世界せかい経済けいざいや金融きんゆう政策せいさくの課題かだいについて意見いけんを交かわすもので、ことしも21日にじゅういちにちから労働ろうどう市場しじょうなどを主おもな議題ぎだいとして開ひらかれています。
注目ちゅうもくされるようになったのは、過去かこにこの場ばで今後こんごの金融きんゆう政策せいさくを方向ほうこうづける重要じゅうようなメッセージが発信はっしんされたことが何度なんどもあったためです。
2010年にせんじゅうねん8月はちがつの会合かいごうでは、当時とうじのFRBのバーナンキ議長ぎちょうが追加ついかの金融きんゆう緩和かんわを示唆しさする発言はつげんをしたほか、2014年にせんじゅうよねん8月はちがつには、ヨーロッパ中央ちゅうおう銀行ぎんこうのドラギ総裁そうさいが追加ついかの金融きんゆう緩和かんわを示唆しさしました。
FRBのパウエル議長ぎちょうもこの場ばで金融きんゆう政策せいさくの方向ほうこう性せいをたびたび示唆しさしていて、3年さんねん前まえには記録きろく的てきなインフレを抑おさえ込こむための金融きんゆう引ひき締しめについて「やり遂とげるまでやり続つづけなければならない」と利上りあげの継続けいぞくを示唆しさしたほか、去年きょねんの講演こうえんでは「金融きんゆう政策せいさくについて調整ちょうせいする時ときが来きた」と発言はつげんし、その翌月よくげつの会合かいごうで4年よねん半はんぶりの利下りさげに踏ふみ切きりました。
パウエル議長ぎちょうの任期にんきは来年らいねん5月ごがつまでで、議長ぎちょうとしてこの場ばで講演こうえんするのは今回こんかいが最後さいごになる可能かのう性せいが高たかいとみられていることもあって講演こうえんの内容ないように関心かんしんが高たかまっています。
雇用こよう情勢じょうせい悪化あっかへの懸念けねん
アメリカでは新規しんき採用さいようの伸のびが落おち込こみ、雇用こよう情勢じょうせいが悪化あっかすることへの懸念けねんが広ひろがっています。
労働省ろうどうしょうが8月はちがつ1日ついたちに発表はっぴょうした農業のうぎょう分野ぶんや以外いがいの就業しゅうぎょう者しゃ数すうの伸のびは、ことし5月ごがつから7月しちがつまでの3か月さんかげつの平均へいきんで、およそ3万さんまん5000人ごせんにんにとどまりコロナ禍かの2020年にせんにじゅうねん春はる以降いこうで最もっとも低ひくい水準すいじゅんとなりました。
背景はいけいにあるとみられているのが、トランプ政権せいけんの関税かんぜい措置そちの影響えいきょうで景気けいきの先行さきゆきが不透明ふとうめいになっていることです。
シカゴを拠点きょてんにコーヒーチェーンを展開てんかいする企業きぎょうでは、関税かんぜい措置そちの影響えいきょうで新規しんき採用さいようを絞しぼりました。
エチオピアやコロンビアなどから輸入ゆにゅうするコーヒー豆まめの仕入しいれコストが15％じゅうごパーセントから20％にじゅっパーセント上昇じょうしょうしたのを始はじめ、輸入ゆにゅうしているコーヒーカップやホルダーも仕入しいれコストが値上ねあがりして経営けいえいを圧迫あっぱくしています。
低てい価格かかくを売うりにしてきただけに値上ねあげは数すう％程度ていどにとどめる一方いっぽう、夏なつを前まえに行おこなっている新規しんき採用さいようを当初とうしょの計画けいかくより5ご人にん程度ていど、絞しぼり、人件じんけん費ひを削減さくげんすることでコストの上昇じょうしょう分ぶんを吸収きゅうしゅうしようとしています。
オーナーのニッキー・ブラボーさんは、コストの上昇じょうしょうだけでなく景気けいきの先行さきゆきが見通みとおせなくなっていることが新規しんき採用さいようの絞しぼり込こみに繋つながっているとしていて、「飲食いんしょく業界ぎょうかいは気分きぶんや雰囲気ふんいきが来客らいきゃく数すうに影響えいきょうする。景気けいきの先行さきゆきの不透明ふとうめいさが経営けいえいにとって大おおきな懸念けねんになっている」と話はなしています。
FRB元もと副ふく議長ぎちょう「政治せいじの金融きんゆう政策せいさくへの介入かいにゅうは悪わるい結果けっかを招まねく」
ジャクソンホールのシンポジウムに出席しゅっせきしている、FRBの元もと副ふく議長ぎちょう、アラン・ブラインダー氏しは21日にじゅういちにち、現地げんちで、NHKのインタビューに応おうじました。
この中なかで、ブラインダー氏しは、初日しょにちの夕食ゆうしょく会かいの雰囲気ふんいきについて、「多おおくの人ひとがFRBの将来しょうらいについて心配しんぱいしていた。トランプ大統領だいとうりょうがFRBを攻撃こうげき続つづけているからだ」と述のべました。
そのうえで、パウエル議長ぎちょうはトランプ大統領だいとうりょうと対立たいりつするつもりはないとして、「任期にんきが終おわるまで金融きんゆう政策せいさくを指揮しきする職務しょくむを全まっとうするだろう」との見方みかたを示しめしました。
アメリカ経済けいざいの現状げんじょうについては、「雇用こよう市場しじょうや経済けいざい成長せいちょうの減速げんそくがみられ、物価ぶっか上昇じょうしょう率りつもいくぶん上あがる傾向けいこうだ。これは誤あやまった方向ほうこうであり、関税かんぜいによる影響えいきょうが徐々じょじょにあらわれてきている」と指摘してきしました。
一方いっぽうで、アメリカ経済けいざいはよく持もちこたえていて、FRBは急いそいでいないとして、来月らいげつの会合かいごうでは利下りさげを行おこなうかどうか真剣しんけんな議論ぎろんが行おこなわれるものの、利下りさげが見送みおくられる可能かのう性せいもあるとの認識にんしきを示しめしました。
FRBに対たいしてトランプ大統領だいとうりょうが圧力あつりょくをかけていることについて、ブラインダー氏しは、「どの国くにの指導しどう者しゃも、ほぼ常つねに、金利きんりを低ひくくしたいと考かんがえる。だからこそ賢明けんめいな政治せいじ家かたちは長期ちょうき的てきに見みれば、自分じぶんたちや国くににとって、金融きんゆう政策せいさくの権限けんげんを独立どくりつした官僚かんりょうに委ゆだねる方ほうがよいと理解りかいしていた。政治せいじの金融きんゆう政策せいさくへの介入かいにゅうはインフレを引ひき起おこすなど悪わるい結果けっかを招まねくことになる」と述のべ、FRBの独立どくりつ性せいが脅おびやかされていることに強つよい危機きき感かんを示しめしました。

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