日本新聞: トランプ政権の人員削減方針災害支援の遅れに懸念も

2005にせんご年ねん、アメリカ南部なんぶルイジアナ州しゅうなどで1800せんはっぴゃく人にん以上いじょうが犠牲ぎせいになったハリケーン「カトリーナ」から20にじゅう年ねんとなり、被災ひさい地ちの人ひとたちが犠牲ぎせい者しゃを追悼ついとうするとともに、復興ふっこうへの決意けついを新あらたにしました。
一方いっぽう、トランプ政権せいけんはFEMA＝連邦れんぽう緊急きんきゅう事態じたい管理かんり庁ちょうを効率こうりつ化かするとして人員じんいんの削減さくげんなどを進すすめる方針ほうしんですが、災害さいがい支援しえんの遅おくれにつながりかねないと懸念けねんの声こえもあがっています。

ハリケーン「カトリーナ」から20にじゅう年ねん
2005にせんご年ねん8はち月がつにアメリカ南部なんぶを襲おそったハリケーン「カトリーナ」は、強風きょうふうや洪水こうずいで1800せんはっぴゃく人にん以上いじょうが犠牲ぎせいになりました。

20にじゅう年ねん前まえ、「カトリーナ」が上陸じょうりくした日ひにあたる29にじゅうきゅう日にち、被害ひがいの大おおきかったルイジアナ州しゅうのニューオーリンズでは犠牲ぎせい者しゃを追悼ついとうする式典しきてんが行おこなわれました。
ジャズ発祥はっしょうの音楽おんがくの街まち、ニューオーリンズの中心ちゅうしん部ぶはにぎわいを取とり戻もどしているものの、堤防ていぼうが決壊けっかいして壊滅かいめつ的てきな被害ひがいが出でた地域ちいきは低てい所得しょとく者しゃ層そうが多おおく、放置ほうちされた空あき家やが目立めだち、復興ふっこうに向むけた取とり組くみが続つづいています。

災害さいがいの記憶きおくをとどめるための絵えが描えがかれた堤防ていぼうの前まえでは、集あつまった人ひとたちが、犠牲ぎせい者しゃに黙もくとうをささげたあと、音楽おんがくに合あわせて踊おどりながら地域ちいきを練ねり歩あるき、復興ふっこうへの決意けついを新あらたにしていました。
「カトリーナ」では、FEMA＝連邦れんぽう緊急きんきゅう事態じたい管理かんり庁ちょうの対応たいおうの遅おくれに批判ひはんが集あつまって行政ぎょうせいや地域ちいきの災害さいがい対応たいおうが見直みなおされるきっかけとなりました。

トランプ政権せいけんはFEMAを効率こうりつ化かするとして人員じんいんの削減さくげんなどを進すすめる方針ほうしんですが、災害さいがい支援しえんの遅おくれにつながりかねないと懸念けねんの声こえもあがっていてアメリカの災害さいがい史しに残のこる「カトリーナ」から20にじゅう年ねんの節目ふしめの年としに災害さいがい対応たいおうをめぐる議論ぎろんが改あらためて活発かっぱつになっています。
トランプ政権せいけん FEMAの人員じんいん削減さくげん方針ほうしん
アメリカで災害さいがい時じの支援しえんの調整ちょうせいや生活せいかつ再建さいけんなどの対応たいおうにあたるFEMA＝連邦れんぽう緊急きんきゅう事態じたい管理かんり庁ちょうは、ハリケーン「カトリーナ」で対応たいおうが遅おくれたとして批判ひはんを受うけました。

一方いっぽう、トランプ政権せいけんはFEMAについて、「国民こくみんが最もっとも必要ひつようなときに支援しえんを受うけられていない」などとしてことし1いち月がつ、これまでの災害さいがい対応たいおうなどを検証けんしょうするための評議ひょうぎ会かいを立たち上あげました。

評議ひょうぎ会かいでは連邦れんぽう政府せいふから各州かくしゅうに災害さいがい時じの権限けんげんを移行いこうすることや人員じんいんの削減さくげんや組織そしきの効率こうりつ化かを目指めざしていて、ことし11じゅういち月がつ16じゅうろく日にちまでに提言ていげんをまとめる方針ほうしんです。
FEMA一部いちぶ職員しょくいん「トランプ政権せいけん災害さいがい対応たいおうで失敗しっぱい招まねくおそれ」
FEMAの一部いちぶの職員しょくいんは「カトリーナ」から20にじゅう年ねんの節目ふしめを前まえに、8はち月がつ25にじゅうご日にち、声明せいめいを発表はっぴょうし、「カトリーナ」での失敗しっぱいを2に度どと繰くり返かえさないと宣言せんげんした上うえで、トランプ政権せいけんの方針ほうしんは今後こんごの災害さいがい対応たいおうでむしろさらなる失敗しっぱいを招まねくおそれがあるとして、人員じんいんの削減さくげんや減げん災わざわいのためのプログラムの打うち切きりなどに抗議こうぎする書面しょめんを議会ぎかい下院かいんに提出ていしゅつしました。

このなかでは、トランプ政権せいけんのもとでFEMAの経験けいけん豊富ほうふな職員しょくいんが解雇かいこされたり、職員しょくいんの辞職じしょくが促うながされたりしていてことしに入はいって常勤じょうきんの職員しょくいんの3さん分ぶんの1いちが離職りしょくしたとし、その結果けっか、組織そしき内ないで培つちかわれてきた技能ぎのうや他たの政府せいふ機関きかんとの関係かんけい性せいが失うしなわれたと警告けいこくしています。

これについて、アメリカのメディアは、FEMAから去さった職員しょくいんはおよそ2000にせん人にんにのぼると伝つたえています。

また、書面しょめんでは、7しち月がつ、南部なんぶテキサス州しゅうで130ひゃくさんじゅう人にん以上いじょうが犠牲ぎせいになった洪水こうずいでは「FEMAの存在そんざい意義いぎを疑うたがい、根拠こんきょなく経費けいひ削減さくげんを優先ゆうせんする指導しどう層そうによって支援しえんが妨さまたげられた」として、災害さいがい対応たいおうにすでに悪あく影響えいきょうが出でているとして懸念けねんを表明ひょうめいしています。
NHKのインタビューに応おうじたFEMAの緊急きんきゅう管理かんりスペシャリストのデクラン・クロウさんは、署名しょめいしたあと、停職ていしょく処分しょぶんを受うけたということで、「トランプ政権せいけんは職員しょくいんの多おおくがFEMAに残のこることを難むずかしくする政策せいさくを打うち出だし、被災ひさい者しゃを支援しえんする能力のうりょくに影響えいきょうを与あたえている。大だい規模きぼな災害さいがいが発生はっせいしてもFEMAは効果こうか的てきな対応たいおうをとることはできないだろう」と危機きき感かんを訴うったえました。

アメリカ主要しゅようメディアは、こうしたFEMAをめぐる混乱こんらんや態勢たいせいの縮小しゅくしょうが、災害さいがい対応たいおうの遅おくれにつながりかねないと懸念けねんする声こえを伝つたえています。
復興ふっこう進すすんでいない地区ちくも
ハリケーン「カトリーナ」で南部なんぶルイジアナ州しゅうのニューオーリンズは市街しがい地ちの80はちじゅっ％が浸水しんすいの被害ひがいを受うけました。

中なかでも特とくに大おおきな被害ひがいが出でたのは、ミシシッピ川がわや運河うんがに囲かこまれ、堤防ていぼうが決壊けっかいしたロウワーナインス地区ちくです。

災害さいがい後ごに再建さいけんされた堤防ていぼうには地元じもとの若者わかものたちが、水没すいぼつした住宅じゅうたくの屋根やねの上うえで救助きゅうじょを待まつ人ひとたちや避難ひなん所しょで身みを寄よせ合あう人ひとたちの姿すがたなど、カトリーナの記憶きおくをとどめるためのアート作品さくひんを描えがきました。

今月こんげつ23にじゅうさん日にちに行おこなわれた完成かんせいを祝いわう式典しきてんでは、市しの担当たんとう者しゃが「この街まちが今いまから20にじゅう年ねん後ごにより強つよくなり続つづけるのだと心こころに刻きざんでおこう」と呼よびかけました。

この地区ちくでは大勢たいせいの住民じゅうみんが長期ちょうきの避難ひなんを余儀よぎなくされました。

かつて住宅じゅうたくが建たっていた場所ばしょの多おおくが今いまも空あき地ちとなっていて、外壁がいへきや屋根やねが壊こわれたまま放置ほうちされた住宅じゅうたくも目立めだつなど、復興ふっこうが進すすんでいない様子ようすがうかがえます。

地元じもとの非ひ営利えいり団体だんたいによりますと、災害さいがい時じにおよそ1いち万まん4000よんせん人にんいた住民じゅうみんは2023にせんにじゅうさん年ねんの時点じてんで5000ごせん人にんあまりにとどまっています。
被災ひさい地ちで住民じゅうみん支援しえんするボランティア
ハリケーン「カトリーナ」の被災ひさい地ちでは、住民じゅうみんを支援しえんするボランティアが活動かつどうを続つづけてきました。

ニューオーリンズのロウワーナインス地区ちくで2007にせんなな年ねんから住宅じゅうたくの再建さいけんを支援しえんする団体だんたい「ロウワーナイン・ドット・オーグ」によりますと、住宅じゅうたくの修理しゅうりのための行政ぎょうせいの支援しえん額がくは災害さいがい前まえの資産しさん価値かちに基もとづいて算出さんしゅつされたため、低てい所得しょとく者しゃ層そうの多おおいこの地区ちくでは多おおくの住民じゅうみんが修理しゅうり費用ひようを工面くめんできなかったということです。

団体だんたいはこれまでに住宅じゅうたくおよそ100ひゃく棟むねを建設けんせつ、400よんひゃく棟むね以上いじょうの修理しゅうりを手てがけてきました。

なんとか住すめるだけの最低さいてい限げんの修理しゅうりで済すませた住民じゅうみんも多おおく、団体だんたいには今いまも依頼いらいが相次あいついでいるということです。

このうち80はちじゅう歳さいの女性じょせいは、自宅じたくの床ゆかに空あいた穴あなを修理しゅうりするための経済けいざい的てきな余裕よゆうがなく、団体だんたいが直なおしてくれるまで、3さん週間しゅうかん、放置ほうちせざるを得えなかったということです。

今月こんげつ23にじゅうさん日にちには、ボランティアたちが住宅じゅうたくの塗装とそうをきれいにはいでラベンダー色しょくに塗ぬり直なおすための作業さぎょうを進すすめていて、女性じょせいは「彼かれらの活動かつどうには本当ほんとうに感謝かんしゃしています」と話はなしていました。

ローラ・ポール代表だいひょうは「災害さいがい支援しえんの世界せかいには、『災害さいがいは差別さべつをしない』ということばがあります。ただ、私わたしたちが常つねに言いうのは『災害さいがいは差別さべつをしないが、復興ふっこうは確実かくじつに差別さべつをする』ということです。この地域ちいきは、残念ざんねんながらその典型てんけい例れいです」と説明せつめいした上うえで、「空あき地ちとなっている土地とちに元もとの住民じゅうみんたちが戻もどってくる姿すがたを見みたいのです」と話はなしていました。
ボランティアの役割やくわり増ぞう
トランプ政権せいけんがFEMAの人員じんいんや資金しきんを削減さくげんする方針ほうしんを検討けんとうする中なかで復興ふっこうだけでなく初期しょきの災害さいがい対応たいおうでもボランティア団体だんたいの果はたす役割やくわりが増ましつつあります。

そのひとつが、ルイジアナ州しゅうのトッド・テレルさんがハリケーン「カトリーナ」で被災ひさいしたあとに設立せつりつしたボランティア団体だんたい「ユナイテッド・ケイジャン・ネイビー」です。

テレルさんは、漁業ぎょぎょう関係かんけい者しゃや教会きょうかいに通かよう人ひとたちなどを束たばねて自主じしゅ的てきに救助きゅうじょや捜索そうさく、避難ひなんした人ひとたちの支援しえんにあたり、団体だんたいは広ひろく名なを知しられるようになりました。

今いまでは他たの州しゅうでもハリケーンや竜巻たつまき、洪水こうずい、山やま火事かじなど災害さいがいが起おきるたびに、救助きゅうじょの経験けいけんやボートや重機じゅうきの運転うんてんなどの技能ぎのうを持もったメンバーを即座そくざに派遣はけんしています。

ことし7しち月がつに南部なんぶテキサス州しゅうで130ひゃくさんじゅう人にん以上いじょうが犠牲ぎせいになった洪水こうずいでは、団体だんたいのメンバーや現地げんちで募つのったボランティアの人ひとたちが川かわ沿ぞいにたまった水みずを抜ぬくためのポンプ車しゃやがれきを撤去てっきょするためのブルドーザーなどを使つかって、救助きゅうじょや捜索そうさくの一端いったんを担になっていました。

「カトリーナ」の際さいに行政ぎょうせいやボランティアの支援しえん拠点きょてんとなったルイジアナ州しゅうバトンルージュの空港くうこうに隣接りんせつした倉庫そうこには、水みずや食料しょくりょうからおむつ、衣服いふく、おもちゃにいたるまで企業きぎょうや個人こじんから寄付きふを受うけた支援しえん物資ぶっしが集あつめられています。

物資ぶっしは災害さいがいがないときは子こどもや高齢こうれい者しゃなどを対象たいしょうにしたチャリティーイベントで配布はいふし、足たりないもののリストを公開こうかいして寄付きふを募つのり、常時じょうじ、入いれ替かえているということです。
水難すいなん救助きゅうじょのためのボートや、ボランティアが寝泊ねとまりできるキャンピングカー、土どのうを作つくる機械きかいなどを所有しょゆうし、小型こがたの飛行機ひこうきやヘリコプター、消防しょうぼう車しゃなどを派遣はけんする態勢たいせいも整ととのえています。

有力ゆうりょく紙しニューヨーク・タイムズはこうした初期しょきの災害さいがい対応たいおうにあたるボランティア団体だんたいは増加ぞうか傾向けいこうにあるとした上うえで、今後こんご、地元じもと当局とうきょくや他たの支援しえん団体だんたいとの調整ちょうせいが課題かだいになると論ろんじています。
ボランティア団体だんたい代表だいひょう「災害さいがい対応たいおうや復興ふっこうで役割やくわり果はたす」
トッド代表だいひょうは「決けっして平へいたんな道みちではありませんでした。行政ぎょうせいから『出でて行いけ』とか、『不要ふようだ』と言いわれたことが何なん度どもあります。行政ぎょうせいには常つねに役割やくわりがありますが、私わたしたちの生活せいかつを守まもるのはボランティアと市民しみんなのです」と話はなし、行政ぎょうせいを補完ほかんするボランティアの重要じゅうよう性せいを強調きょうちょうしました。

そして「私わたしたちが利用りようできる資源しげんをほかの人々ひとびとやグループにも広ひろげていく。作つくり出だしたものを受うけ継つぎ、伝つたえ、より多おおくの人ひとに参加さんかしてもらう。それが私わたしたちの使命しめいです」と話はなしていました。

ルイジアナ州立しゅうりつ大学だいがくで災害さいがいによる地域ちいき社会しゃかいへの影響えいきょうを研究けんきゅうするケビン・スマイリー氏しは「カトリーナでは、全米ぜんべいのそれぞれの地域ちいき社会しゃかいが異常いじょう気象きしょうや災害さいがいの増加ぞうかにどう適応てきおうしていくかが浮うき彫ぼりになりました。堤防ていぼうを作つくるだけでなく、洪水こうずいに対応たいおうできる社会しゃかいを築きずく必要ひつようがあります」と強調きょうちょうしました。

そしてボランティアについて「課題かだいは存在そんざいしますが、支援しえんしたいという人間にんげんの根源こんげん的てきな感情かんじょうから、ボランティアの組織そしき化かが進すすんでいます。今後こんごも、災害さいがい対応たいおうや復興ふっこうで大おおきな役割やくわりを果はたしていくでしょう」と述のべ、今後こんごは行政ぎょうせいとの役割やくわり分担ぶんたんがいっそう重要じゅうようになると指摘してきしています。

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