日本新聞: その通知、偽物ですだまされないために

その通知つうち、偽物にせものですだまされないために

Mar 15, 2023 13:03 1

Furigana

宅配たくはい便びんの不在ふざい通知つうちをかたった短みじかいショートメッセージ。

思おもわず開ひらいてしまった人ひと、いませんか。

それ、「スミッシング」と呼よばれる詐欺さぎの入り口いりくちの可能かのう性せいが高たかいんです。

次々つぎつぎに生うまれる身近みぢかなサービスをかたった新あたらしい手口てぐち。

だまされないために、できることは。

（デジタルでだまされない取材しゅざい班はん / 絹川きぬかわ千晴ちはる）

スミッシング開ひらいて調しらべてみた

（※取材しゅざいのため安全あんぜんを確認かくにんした上うえで行おこなっています）

冒頭ぼうとうで紹介しょうかいしたのは、記者きしゃのiPhoneに届とどいた1通つうのショートメッセージです。

「お客様おきゃくさまが不在ふざいのためお荷物にもつを持ち帰もちかえりました。こちらにてご確認かくにんください」。

ネット通販つうはんヘビーユーザーの私わたし。心当こころあたりは山やまほどあります。

記載きさいされたURLをタップすると…

（※取材しゅざいのため安全あんぜんを確認かくにんした上うえで行おこなっています。決けっして同おなじようにURLをタップしないでください）

ブラウザが起動きどうし、アカウントに“安全あんぜん異常いじょうがある”としてログインを求もとめる通知つうちが出でました。

「APP Store」の文字もじに、ふだんアプリのダウンロードに使つかっているAppleのサービスが頭あたまをよぎります。

通知つうちを閉とじると…

IDとパスワードの入力にゅうりょくを求もとめるホームページが開ひらきました。

セキュリティーに異常いじょうが起おきているならアプリが使つかえなくなるかも！確認かくにんしなければ！と焦あせってログインしてはいけません。

実じつはこれ。情報じょうほうをだましとるための偽にせのサイト、「フィッシングサイト」なんです。SMSを通つうじたフィッシングの被害ひがいなので、組み合くみあわせて「スミッシング」と呼よばれています。

本物ほんもののホームページと同おなじ文言もんごんや問い合といあわせ先さきが記載きさいされ、デザインも似にせています。本物ほんものだと思い込おもいこんでしまいかねない作つくりですが、うっかりIDとパスワードなど個人こじん情報じょうほうを入力にゅうりょくしてしまうと、犯罪はんざいグループにだましとられてしまいます。

だましとられた情報じょうほうは、アカウントへの不正ふせいアクセスや決済けっさいサービスの不正ふせい利用りようなどさらなる犯罪はんざいに使つかわれるおそれがあります。

この日ひ私わたしが受け取うけとったのは「宅配たくはい便びんの不在ふざい通知つうち」でしたが、ほかにも「アカウントが不正ふせいログインされた」、「料金りょうきん未納みのうのお知おしらせ」、「サービス利用りよう停止ていし」など、受け取うけとった人ひとの不安ふあんをあおる文面ぶんめんはさまざまです。

またAndroidのスマートフォンを狙ねらったものの中なかには、必要ひつような手続てつづきに見みせかけて不正ふせいアプリをダウンロードさせるものもあります。

不正ふせいアプリを入いれた結果けっか、スマートフォンの中なかの個人こじん情報じょうほうを抜き取ぬきとられるほか、自分じぶんのスマートフォンからＳＭＳを大量たいりょうに送おくられ、スミッシングに加担かたんさせる被害ひがいも起おきているということです。

去年きょねんは件数けんすうが倍増ばいぞう

スミッシングは増加ぞうか傾向けいこうにあります。

詐欺さぎのおそれがある迷惑めいわく電話でんわやSMSの対策たいさくソフトを提供ていきょうしている「トビラシステムズ」では、利用りよう者しゃが受け取うけとったSMSや警察庁けいさつちょうなどからの情報じょうほう提供ていきょうをもとに、スミッシングの件数けんすうを独自どくじに集計しゅうけいしています。

その結果けっか、2022年ねんの1年間ねんかんに観測かんそくされたスミッシングは、2021年ねんと比くらべておよそ2倍ばいに増ふえていました。2021年ねんはさらにその前まえの年としと比くらべて3倍ばい近ちかくに増ふえていて、年々ねんねん増加ぞうか傾向けいこうが続つづいています。

多様たよう化かする手口てぐち

件数けんすうが増ふえているだけではありません。

この会社かいしゃがまとめたスミッシングの手口てぐちです。2021年ねんは宅配たくはいの不在ふざい通知つうちを示しめすものが6割わり以上いじょうを占しめましたが、2022年ねんには多様たよう化かしています。

宅配たくはいが最もっとも多おおく3割わりを超こえたものの、大手おおて通信つうしん事業じぎょう者しゃをかたるものが2割わり、公的こうてき機関きかんをかたるものも2割わり観測かんそくされました。

依然いぜんとして最もっとも多おおい宅配たくはいでも、2021年ねんにはヤマト運輸やまとうんゆや佐川さがわ急便きゅうびん、日本にっぽん郵政ゆうせいなど実在じつざいの企業きぎょうを名乗なのるものが多おおかったのに対にたいし、2022年ねんは会社かいしゃ名めいを入いれずに不在ふざい通知つうちを装よそおうものが主流しゅりゅうになったということです。

大手おおて通信つうしん会社かいしゃについては、「利用りよう料金りょうきんの未払みはらい」や「アカウント不正ふせい利用りよう」などの緊急きんきゅうを装よそおう文面ぶんめんが多おおく、自分じぶんが利用りようしているサービスになりすまされた場合ばあい、誰だれでもだまされかねない手口てぐちです。決済けっさいサービスと連携れんけいしているものも多おおく、注意ちゅういが必要ひつようです。公的こうてき機関きかんを名乗なのるものは、去年きょねん新あらたに確認かくにんされました。

去年きょねん8月つきから特とくに増ふえたのが国税庁こくぜいちょうをかたるもので、「税金ぜいきんのお支払しはらい方法ほうほうに問題もんだいがあります」とか「未払みはらい税金ぜいきんお支払しはらいのお願おねがい」などと言いってフィッシングサイトに誘導ゆうどうし、クレジットカード情報じょうほうを入力にゅうりょくさせたりプリペイドカードで支払しはらうよう指示しじしたりする手口てぐちがみられました。

また、新型しんがたコロナに関連かんれんして、去年きょねんは厚生こうせい労働ろうどう省しょうからの新型しんがたコロナ関連かんれんの助成じょせい金きんの案内あんないをかたる手口てぐちが見みられたほか、旅行りょこうなどの移動いどうが自粛じしゅくされる中なか、交通こうつう系けいサービスの退会たいかい手続てつづきを装よそおう手口てぐちも見みられました。

今後こんごも新あらたな手口てぐちの登場とうじょうが予想よそうされ、注意ちゅういが必要ひつようです。

だまされないために

警察けいさつは、どんな内容ないようであれ「SMSに記載きさいされたURLを開ひらかない」ことを呼よびかけています。

文章ぶんしょうの内容ないように不安ふあんを感かんじた時ときは、いったんSMSを閉とじ、ふだん使つかっている公式こうしきのアプリやホームページからログインして通知つうちを確認かくにんすることが大切たいせつです。

企業きぎょう各社かくしゃも注意ちゅうい喚起かんき

ヤマト運輸やまとうんゆ、佐川さがわ急便きゅうびん、日本にっぽん郵便ゆうびんは、荷物にもつの不在ふざい通知つうちをショートメッセージで送おくることはないと明言めいげんしています。ほかにも、大手おおて通信つうしん事業じぎょう者しゃをはじめ、名前なまえを使つかわれた企業きぎょうや官公庁かんこうちょうがスミッシングの被害ひがいにあわないよう注意ちゅうい喚起かんきを行おこなっています。

怪あやしいSMSが届とどいたら、まず自分じぶんで検索けんさくして調しらべてみること、その心こころがけが自分じぶんの身みを守まもることにつながります。