セブン&アイの創業家側が対抗策として買収による非上場化を提案していますが、現在の7兆円規模の提案を実現する意欲を見せた形です。
クシュタール 経営トップ「敵対的な買収は検討していない」
カナダのコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」は「セブン&アイ・ホールディングス」に対し、7兆円規模の買収提案をしています。
こうした中、クシュタールの創業者であるアラン・ブシャール会長と、アレックス・ミラー社長兼CEOが21日、NHKなどのインタビューに応じました。
この中で、ブシャール会長はセブン&アイの創業家側が対抗策としてTOB=株式の公開買い付けを実施し、買収による非上場化を提案していることへの対応について、「敵対的な買収は検討していない」と述べました。
買収金額をさらに引き上げるか問われたのに対し、ミラー社長兼CEOは「われわれの提案は両社の株主や顧客、そして従業員にとってもっとも魅力的な提案だ」と述べ、現在の7兆円規模の提案を実現する意欲を見せた形です。
ブシャール会長は買収提案のねらいについて、「セブン&アイはわれわれに対して価値を提供できるし、われわれも価値を提供できる」と述べ、双方の企業価値を向上させることへの自信を見せました。
今後はクシュタール側が買収金額を含めて条件の変更を提示するかどうかが大きな焦点となりそうです。
セブン&アイ コメント発表せず 特別委員会で検討進める方針
セブン&アイ・ホールディングスは、カナダのコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」の経営トップが買収への意欲を改めて示したことについて、コメントを発表していません。
会社は、社外取締役のみで構成する特別委員会でクシュタール社の提案の内容を精査していて、今後も特別委員会の中で検討を進める方針です。
一方、セブン&アイをめぐっては、会社の創業家側が大手金融機関などからあわせて8兆円を超える資金を調達してTOB=株式の公開買い付けを行う案も出ていて、特別委員会は、それぞれの提案について慎重に判断するものとみられます。
「アリマンタシォン・クシュタール」とは
カナダに本社を置く「アリマンタシォン・クシュタール」は、北米やヨーロッパを中心におよそ30の国と地域でコンビニやガソリンスタンドを運営するグローバル企業です。
1980年にカナダのケベック州にコンビニの1号店を出店した「クシュタール」は、カナダ国内で店舗網を広げたあと、アメリカの「サークルK」の運営会社や、フランスの会社からヨーロッパのガソリンスタンド事業を買収するなど、事業規模を拡大する戦略をとってきました。
会社のホームページによりますと、「クシュタール」や「サークルK」などのブランドで1万6000あまりの店舗を運営しています。
このうち、多くの店舗はガソリンスタンドに併設されているタイプで、カー用品に加え、飲み物やサンドイッチなどの食品を中心に販売しています。
会社が発表した2024年4月期の決算では、1年間の売上高が692億ドル、日本円にしておよそ10兆円で、このうち7割余りをガソリンなどの販売が占めています。
今後、ガソリンの消費量が長期的には減っていくと見込まれる中で、会社としてはセブン&アイが持つ食品や流通のノウハウを吸収し、ガソリンスタンド併設型の店舗を中心としたビジネスモデルからの脱却を図る狙いもあるものとみられます。
また、クシュタールは、セブン&アイが持つアメリカや東南アジア、オーストラリアなどのコンビニ事業を取り込むことでグローバル展開を一段と加速させるねらいがあるとみられています。