処理しょり水すいの海洋かいよう放出ほうしゅつ 方法ほうほうは？影響えいきょうは？【Q＆Aで詳くわしく】8/22版はん

処理しょり水すいとは？どうやって海うみに放出ほうしゅつするの？人ひとや環境かんきょうへの影響えいきょうは大丈夫だいじょうぶ？気きになる点てんをまとめました。（8/22更新こうしん版ばん）

処理しょり水すいってそもそもどんな水みず？

A.「汚染おせん水すい」を文字通もじどおり“処理しょり”した水みずのことです。

2011年ねんの事故じこで「メルトダウン」を起おこした福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつ1号機ごうき、2号機ごうき、3号機ごうきでは、溶とけ落おちた核かく燃料ねんりょうを冷ひやすために今いまも水みずを入いれ続つづけていて、これに加くわえて地下ちか水すいや雨水あまみずが原子げんし炉ろ建屋たきのや内ないに流れ込ながれこんでいるため、1日にちおよそ90トンのペースで「汚染おせん水すい」が発生はっせいしています。

汚染おせん水すいに含ふくまれている放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつの大半たいはんはALPS（多核たかく種しゅ除去じょきょ設備せつび）と呼よばれる専用せんようの設備せつびで除去じょきょされますが、取り除とりのぞくことが難むずかしい「トリチウム」など一部いちぶの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつを含ふくんでいる水みずを「処理しょり水すい」と呼よんできました。

処理しょり水すいは6月つき29日にち現在げんざいでおよそ134万まんトンあり、敷地しきち内ないに設置せっちされている約やく1000基きのタンクで保管ほかんされています。

タンクの容量ようりょうは約やく137万まんトンで、今いまは保管ほかんできる容量ようりょうの98％まで使つかっていて、東京とうきょう電力でんりょくは今いまのペースで汚染おせん水すいが発生はっせいし続つづけると来年らいねん（2024年ねん）の2月つきから6月つきごろに満杯まんぱいになるとしています。

東京とうきょう電力でんりょくは福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの敷地しきち内ないには森林しんりんなどを伐採ばっさいすればスペースがあり、処理しょり水すいを保管ほかんするタンクを増ふやすことは不可能ふかのうではないとしていますが、こうしたスペースについては、今後こんご、取り出とりだしを予定よていしている核かく燃料ねんりょうデブリや廃はい炉ろ作業さぎょうで出でる放射ほうしゃ性せい廃棄はいき物ぶつを保管ほかんすることに使つかう方針ほうしんを示しめしていて、限かぎられた敷地しきちのなかで廃はい炉ろ作業さぎょうを進すすめていくためにも、タンクを増ふやし続つづけるわけにはいかないとしています。

※政府せいふは放出ほうしゅつ方針ほうしん決定けってい後ごの2021年ねん4月つきに、タンクの水みずを再ふたたび処理しょりしてトリチウム以外いがいの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつはすべて基準きじゅん以下いかにした状態じょうたいの水みずを「ALPS処理しょり水すい」と呼よぶとしました。

トリチウムって何なに？

A. 処理しょり水すいに含ふくまれるトリチウムという放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつは、日本にっぽん語ごでは「三重みえ水素すいそ」と呼よばれる水素すいその仲間なかまです。

水みずの一部いちぶとして存在そんざいしているため、ろ過ろかしたり、吸着きゅうちゃくさせたりして水みずから取り除とりのぞくことが難むずかしいのが特徴とくちょうです。

トリチウムは通常つうじょうの原子力げんしりょく施設しせつでも発生はっせいし、日本にっぽんを含ふくむ世界せかい各地かくちで現地げんちの基準きじゅんを満みたすようにして、海うみや大気たいきに放出ほうしゅつされています。

自然しぜん界かいにも広ひろく存在そんざいし、雨水あまみずや海水かいすい、それに水道すいどう水すいや私わたしたちの体内たいないにも微量びりょうのトリチウムが含ふくまれています。

トリチウムはほとんどが水みずの状態じょうたいになっていて、人ひとや魚介ぎょかい類るいなどの生物せいぶつに取り込とりこまれたとしても、水みずと一緒いっしょに比較的ひかくてき速すみやかに排出はいしゅつされ、蓄積ちくせきしないとされています。

ただ、生物せいぶつの体内たいないでは一部いちぶのトリチウムがたんぱく質たんぱくしつなどの有機物ゆうきぶつと結合けつごうしていて、この場合ばあいは、体からだの外そとへの排出はいしゅつが遅おそくなることが知しられています。

体からだへの影響えいきょうを考かんがえる上うえでのもうひとつのポイントが、トリチウムが出だす放射線ほうしゃせんのエネルギーの弱よわさです。

空気くうき中ちゅうではおよそ5ミリ、水中すいちゅうでは最大さいだいでも0.006ミリしか進すすむことができません。

世界せかいの放射線ほうしゃせんの専門せんもん家かで作つくる「ICRP＝国際こくさい放射線ほうしゃせん防護ぼうご委員いいん会かい」が公表こうひょうしている放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつの種類しゅるいごとの影響えいきょう度合どあいの比較ひかくでは、原発げんぱつ事故じこで主おもな汚染おせん源げんとなったセシウム137と比くらべて、水みずの一部いちぶとなっている場合ばあいはおよそ700分ぶんの1、たんぱく質たんぱくしつなどと結合けつごうしている場合ばあいはおよそ300分ぶんの1と低ひくくなっています。※いずれも成人せいじんの場合ばあい

放射線ほうしゃせんによる生物せいぶつへの影響えいきょうに詳くわしい茨城いばらき大学だいがくの田内たうち広ひろ教授きょうじゅは、低ひくい濃度のうどを適切てきせつに管理かんりできていればリスクは低ひくいと指摘してきしています。

「トリチウムが体内たいないに取り込とりこまれてDNAを傷きずつけるメカニズムは確たしかにあるが、DNAには修復しゅうふくする機能きのうがあり紫外線しがいせんやストレスでも壊こわれては修復しゅうふくしているのが日常にちじょう。一番いちばん大事だいじなことは濃度のうどを低ひくく保たもつことで、今回こんかいのように1リットルあたり1500ベクレルという低ひくい基準きじゅんよりもさらに薄うすまるのであれば、生物せいぶつに対にたいする影響えいきょうは考かんがえられず極きわめてリスクは低ひくい」。

処理しょり水すいはどうやって海うみに放出ほうしゅつする？

A. 放出ほうしゅつは、処理しょりする、測はかる、薄うすめる、流ながすという手順てじゅんで行おこなわれます。

現在げんざい、福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの敷地しきち内ないのタンクに保管ほかんされている処理しょり水すいのうち、およそ7割わりは、トリチウム以外いがいの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつを除去じょきょしきれておらず、放出ほうしゅつするための基準きじゅんを満みたしていません。

このため、放出ほうしゅつする前まえにはトリチウム以外いがいの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつの濃度のうどが国くにの基準きじゅんを下回したまわる濃度のうどになるまで処理しょりを続つづけます（二に次じ処理しょり）。

二に次じ処理しょりした水みずはタンクに入いれてかき混かきまぜ、均質きんしつにした上うえで、基準きじゅんを満みたしているか実際じっさいに測定そくていして確認かくにんします。

この作業さぎょうには1回かいあたり2か月かげつ程度ていどかかることから、作業さぎょうは3つのタンク群ぐんに分わけて行おこなわれ、連続れんぞくして放出ほうしゅつできるようにするとしています。

基準きじゅんを満みたしていることが確認かくにんできた水みずは、残のこるトリチウムの濃度のうどが放出ほうしゅつの条件じょうけんとしている国くにの規制きせい基準きじゅんの40分ぶんの1を下回したまわるように、処理しょり水すいの100倍ばい以上いじょうの量りょうの海水かいすいと混ぜ合まぜあわせて薄うすめます。

この水みずは、福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの岸壁がんぺき付近ふきんに作つくられた「放水ほうすい立だて坑あな」と呼よばれる設備せつびにためられ、一定いっていの量りょうを超こえると海底かいていトンネルに流ながれだし、沖合おきあい1キロ先さきにある放出ほうしゅつ口ぐちから海うみに放出ほうしゅつされます。

東京とうきょう電力でんりょくは、大量たいりょうの海水かいすいで薄うすめることで、確実かくじつに放出ほうしゅつの条件じょうけんとする濃度のうどを下回したまわるとしていますが、念ねんのためしばらくは、立たて坑あなにためた水みずに含ふくまれるトリチウムの濃度のうどをあらためて測定そくていしてから放出ほうしゅつすることにしています。

放出ほうしゅつされるトリチウムの総量そうりょうは?

A. 処理しょり水すいの海洋かいよう放出ほうしゅつによって1年間ねんかんに放出ほうしゅつされるトリチウムの量りょうについて、東京とうきょう電力でんりょくは、事故じこの前まえ、福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつが通常つうじょうの運転うんてんをしていた時ときの目安めやすだった22兆ちょうベクレルを下回したまわる水準すいじゅんにする方針ほうしんです。

この値ねについて、経済けいざい産業さんぎょう省しょうは、国内外こくないがいの多おおくの原子力げんしりょく施設しせつからの年間ねんかんの放出ほうしゅつ量りょうと比くらべても低ひくい水準すいじゅんだとしています。トリチウムの放出ほうしゅつ量りょうは、原発げんぱつのタイプや施設しせつの種類しゅるいによって違ちがいがあり、経済けいざい産業さんぎょう省しょうは2008年ねんから2010年ねんの国内こくないの各かく原発げんぱつの平均へいきん値ちを算出さんしゅつし、最小さいしょう値ちと最大さいだい値ちを公表こうひょうしています。

それによりますと、福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつと同おなじ沸騰水ふっとうすい型がたと呼よばれるタイプの原発げんぱつでは、およそ316億おくから1.9兆ちょうベクレル、加圧水かあつすい型がたと呼よばれるタイプの原発げんぱつでは、およそ18兆ちょうから83兆ちょうベクレルとなっています。

一方いっぽう、海外かいがいの原発げんぱつついても経済けいざい産業さんぎょう省しょうがまとめていて、2021年ねんに韓国かんこくの古里ふるさと原子力げんしりょく発電はつでん所しょで49兆ちょうベクレル、中国ちゅうごくの陽ひ江こう原子力げんしりょく発電はつでん所しょで112兆ちょうベクレル、カナダのダーリントン原子力げんしりょく発電はつでん所しょで190兆ちょうベクレルが、液体えきたいとして放出ほうしゅつされたということです。

また、使用しよう済ずみ核かく燃料ねんりょうの再さい処理しょり施設しせつではさらに放出ほうしゅつ量りょうが多おおく、フランスのラ・アーグ再さい処理しょり施設しせつで2021年ねんに1京きょうベクレル、イギリスのセラフィールド再さい処理しょり施設しせつで2020年ねんに186兆ちょうベクレルが液体えきたいとして放出ほうしゅつされています。

人ひとや環境かんきょうへの影響えいきょうは大丈夫だいじょうぶ？

A. 福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの処理しょり水すいを政府せいふの方針ほうしんどおりに海うみに放出ほうしゅつした場合ばあいの、放射線ほうしゃせんによる人ひとや環境かんきょうへの影響えいきょうについて、東京とうきょう電力でんりょくは国際こくさい的てきなガイドラインに沿そって評価ひょうかしてもいずれも極きわめて軽微けいびだと説明せつめいし、原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かいやIAEA＝国際こくさい原子力げんしりょく機関きかんもこの評価ひょうかを妥当だとうだとしています。

東京とうきょう電力でんりょくは処理しょり水すいを海うみに放出ほうしゅつした場合ばあいにどのように拡散かくさんするか、2019年ねんの気象きしょうデータを使つかってシミュレーションし、最もっとも影響えいきょうを受うけるケースとして原発げんぱつ周辺しゅうへんで漁業ぎょぎょうに携たずさわる人ひとが船ふねの上うえで作業さぎょうをしたり、海産物かいさんぶつを食たべたりすることなどによってどの程度ていど被ひばくするか評価ひょうかしました。その結果けっか、一般いっぱんの人ひとの被ひばく限度げんどが年間ねんかん1ミリシーベルトなのに対にたいし、処理しょり水すいの放出ほうしゅつによる影響えいきょうは、海産物かいさんぶつを食たべる量りょうなどに応おうじて1ミリシーベルトのおよそ50万まん分ぶんの1から3万まん分ぶんの1になったということです。

加くわえて、魚さかなや藻類そうるいといった動植物どうしょくぶつへの影響えいきょうも評価ひょうかしました。

指標しひょうとしたのは、「ICRP＝国際こくさい放射線ほうしゃせん防護ぼうご委員いいん会かい」が示しめしている、「何なんらかの悪影響あくえいきょうが生しょうじる可能かのう性せいがいくらかでもありそうと思おもわれる値ね」で、処理しょり水すいの放出ほうしゅつによる影響えいきょうは、この値ねのおよそ300万まん分ぶんの1から100万まん分ぶんの1になったとしています。これらの評価ひょうかはトリチウムのほか、処理しょり水すいに含ふくまれる29種類しゅるいの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつによる影響えいきょうを足たし合あわせたものになっていて、結果けっかとして、トリチウム以外いがいの影響えいきょうが大おおきくなっているということです。具体ぐたい的てきには、放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつの単位たんいである1ベクレルあたりの被ひばく影響えいきょうが比較的ひかくてき大おおきいヨウ素もと129と、除去じょきょの対象たいしょうとなっていない炭素たんそ14でおよそ8割わりの寄与きよ度どを占しめているということです。

また、海水かいすい中ちゅうのトリチウムの濃度のうどが現在げんざいよりも高たかい1リットルあたり1ベクレル以上いじょうになる範囲はんいは、原発げんぱつ周辺しゅうへんの2キロから3キロの範囲はんいにとどまるということです。

ただ、その範囲はんい内ないでもWHO＝世界せかい保健ほけん機関きかんが示しめす飲料いんりょう水すいの基準きじゅんである、1リットルあたり1万まんベクレルを超こえることはなく、大おおきく下回したまわるとしています。

安全あんぜん性せいは確保かくほできるの？

A. 安全あんぜん性せいの確保かくほは、東京とうきょう電力でんりょくが原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かいの認可にんかを受うけた計画けいかく通どおりに放出ほうしゅつを実施じっしすることが前提ぜんていとなっています。

このなかで東京とうきょう電力でんりょくは、放出ほうしゅつ設備せつびなどに異常いじょうが生しょうじた場合ばあい、処理しょり水すいの海うみへの放出ほうしゅつを即座そくざに止とめる方針ほうしんを示しめしています。

処理しょり水すいが通とおる配管はいかんの2か所かしょには「緊急きんきゅう遮断しゃだん弁べん」と呼よばれる装置そうちが設もうけられていて、海水かいすいの流量りゅうりょうが少すくなくて十分じゅうぶんに薄うすめられない場合ばあいや異常いじょうな放射ほうしゃ線せんが検出けんしゅつされた場合ばあいには、自動じどう的てきに水みずの流ながれが止とまる仕組しくみになっています。

また、震度しんど5弱じゃく以上いじょうの地震じしん、津波つなみ注意ちゅうい報ほう、高潮こうちょう警報けいほうなどが出だされた際さいには運転うんてん員いんが手動しゅどうで放出ほうしゅつを止とめることにしていて、現在げんざい、緊急きんきゅう時じを想定そうていした訓練くんれんも行おこなわれています。

加くわえて、安全あんぜん性せいの確認かくにんには処理しょり水すいが放出ほうしゅつされたあとに周辺しゅうへんの海うみで行おこなうモニタリング、放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつの濃度のうどの測定そくていも重要じゅうようです。

国くにや福島ふくしま県けん、それに東京とうきょう電力でんりょくは放出ほうしゅつ前後ぜんごで濃度のうどの比較ひかくができるよう、2022年度ねんどからモニタリングを強化きょうかしていて、放出ほうしゅつ口ぐちから10キロ圏内けんないを中心ちゅうしんにあわせて130地点ちてん程度ていどで海水かいすい中ちゅうのトリチウムを測定そくていしています。

さらに放出ほうしゅつ開始かいし直後ちょくごは、国くにが行おこなう測定そくていの頻度ひんどを増ふやすなど集中しゅうちゅう的てきなモニタリングを行おこなう方針ほうしんです。

この中なかでは通常つうじょうの詳くわしい分析ぶんせきも行おこないますが、これには1回かいで2か月かげつ程度ていどかかることから、検出けんしゅつできる濃度のうどの下限かげんの値ねを引き上ひきあげてより迅速じんそくに結果けっかが出だせる分析ぶんせき方法ほうほうも新あらたに採用さいようしています。

国くにや東京とうきょう電力でんりょくはこうしたモニタリングの結果けっかをホームページで公開こうかいし、風評ふうひょう被害ひがいの抑制よくせいにつなげたい考かんがえです。