当初は、建物を改修するなどして2023年3月下旬から順次、入居できる予定で、すでに一部の940戸が販売されましたが、大会の延期を受けて、その後の販売を休止するなどスケジュールの見通しが立たない状況が続いていました。
大手不動産会社などで作る企業グループによりますと、今月に入って、東京都から引き続き選手村として使用するという連絡があったということで、3年後・2023年3月に予定していた入居時期を延期する方針を決めたということです。すでに購入した人たちに対しては、先週末から電話や書面での説明を始めていて、それによりますと、延期は1年程度だということです。
あくまでオリンピック・パラリンピックが延期されたことを受けての対応ですが、契約者は1年遅れの入居を受け入れるか、解約するかなどの対応を迫られることになります。
「娘の小学校入学に合わせ引っ越す予定が…」
東京オリンピック・パラリンピックの建物を活用するマンションの、3LDKの部屋を去年8月に契約したという30代の会社員の男性は、NHKの取材に対し、「娘の小学校入学に合わせて引っ越す予定が狂い、引き渡しの遅れを受け入れるか決められないでいる」と、不安な思いを打ち明けました。
男性によりますと、東京大会の延期が決まってからおよそ3か月たった20日になって、デベロッパーから『オリンピックの選手村として使われることが決まったので引き渡しの日程が1年程度遅れる』と電話で連絡があったということです。
デベロッパーの説明では、1年遅れの入居を受け入れるか、解約して手付金の返還を受けるか年末までに判断するように言われたということで、男性は、今後の対応を検討しているということです。
男性は、「魅力的な物件なので、遅れてでも入居したいですが、選手村の食堂を改修して作られる小学校に次女がちょうど1年生で入学する予定だったので計画が狂ってしまいました。今の学区に入学して、1年間で転校になるのは申し訳ないですし、妻も不安を感じていて、新居を構えるという明るい話がネガティブなことになってしまいました。去年の今頃は、内見をして、どの物件にしようか家族4人で楽しく検討していたのに、信じられません。また、遅れる分の補償についてもまだ説明がないので、しっかり検討してほしい」と話していました。
専門家「まちづくりにも影響大」
入居の延期の方針が決められたことについて不動産コンサルタントの長嶋修さんは、マンションの購入は、子どもの学校への入学など、人生のイベントに合わせることが多く、入居時期が延期することは人生プランが変わってしまうような大きな影響があるとしています。
そのうえで長嶋さんは、「入居者は戸惑っていると思う。今後、契約者が納得して選択ができるよう、販売側もできるだけこまめに情報開示していくことが重要だと思う」と話していました。
一方、影響はマンションだけにとどまらないと指摘したうえで、長嶋さんは、「この地区では1万人以上人口が増える前提で自治体がまちづくりを進め、商業的な計画も進んでいる。すべて後ろ倒しになることで、まちづくり全体にも大きな影響を与えてしまうのではないか」と話していました。
三井不動産レジデンシャル「丁寧に説明」
開発を手がける企業グループの代表、三井不動産レジデンシャルは「今月に入って、東京都から引き続き選手村として使用するという連絡があり、予定していた入居時期を延期する方針を決めた。すでに購入した人たちに対しては、営業担当者から引き続き丁寧に説明を行って対応していきたい」としています。