具体的には、これらの企業の売り上げの10%を超える利益のうち25%については、サービスの利用者がいる国に課税の対象として配分するとしています。
合意内容は、一部を除いて再来年(2023年)には実施することを目標としています。
今回の合意によって、製造業中心の考え方に基づき、およそ100年前に整備された今のルールが転換されることになります。
最終合意には、低い税率で企業を呼び込んできたアイルランドやハンガリーが加わった一方、スリランカやケニアなど4か国は加わりませんでした。
日本としては、新たな国際課税ルールの実効性をより高めるため、こうした国への働きかけを続ける方針です。
今回の最終合意で大企業は法人税率が低い国や地域に子会社や工場などの拠点を置いても、少なくとも15%分の税負担を求められることになります。 低い税率の国に子会社を作った企業はこれまで利益を移すことで税率の差の分の課税を逃れることができましたが親会社がある国は差額分の法人税を親会社に上乗せすることができるようになります。 例えばある企業が税率が10%の国に子会社などを設立した場合、親会社がある国は最低税率との差にあたる5%を上乗せして課税できるのです。 ただ、いわゆるペーパーカンパニーではなく、工場があって従業員がいるなど現地で操業している子会社については、税負担が大幅に増えないようにする特例的な措置も設けられました。 具体的には、税率が低い国にある子会社については税額を計算する際に対象となる所得から、工場など有形資産や従業員に支払っている給与に相当する金額の一部を差し引くことを認めます。 OECD=経済協力開発機構の推計によりますと、最低税率が15%となったことで、世界全体で年間およそ1500億ドル、日本円で16兆円余りの税収が新たに得られる見込みです。 【日本や日本企業への影響】 各国はこれまで企業誘致を目的に法人税を引き下げてきました。
今回の合意で、法人税の引き下げ競争に歯止めがかかることが期待されています。 また、企業が海外の進出先を選ぶ際は、インフラの整備や労働者の教育水準など税負担以外の条件を重視するようになることなども期待されています。 さらに、日本企業の競争力の引き上げにつながるという指摘もあります。 低い税率の国に設けた子会社に利益を移して課税を逃れることで利益を蓄えてきた海外の巨大グローバル企業も今後は少なくとも15%分の法人税を負担することになります。 日本ではこうした形で税負担を軽減してきた企業が比較的少なく、競争上不利だとされてきましたが、今回の合意で状況が是正されると考えられるためです。
「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業に代表されるグローバル企業への課税の強化についても最終的な合意に至りました。 これまでのルールでは、国や地域が企業に法人税を課税するには工場などの拠点を構えていることが条件となっています。 このため、拠点は持たず、国境を越え、インターネットを通じて動画や音楽などのコンテンツを提供している企業に対しては、法人税を課税することができませんでした。 今回の合意は、このルールを改めてサービスの利用者がいる国や地域も課税できるようにするというものです。 課税の対象となる企業の基準は、売り上げが200億ユーロ、日本円でおよそ2兆6000億円で利益率が10%を超える巨大企業で、世界で100社程度が該当するとしています。 これらの企業の売り上げの10%を超えた税引き前利益の25%を課税の対象として売り上げに応じてサービスの利用者がいる国に配分するということです。 OECD=経済協力開発機構によりますと利用者がいる国や地域には毎年、合計1250億ドル、日本円で14兆円を超える利益が課税の対象として配分されると推計しています。
日本は、インターネットを通じて海外企業のサービスを比較的多く利用していることから税収が増える可能性があると専門家は指摘しています。 一方、日本企業にとっては影響は限定的とみられています。 合意された基準に日本企業を単純にあてはめると、数社が課税の対象になる可能性がありますが、海外で得ている利益が多くはないためです。
その上で、それぞれの国や地域は合意されたルールを実際に適用するための法整備を進めることになります。 このうち、最低税率については、法人税法などを改正することになります。 一方、グローバル企業への課税については、合意に加わった国どうしで、租税条約を結ぶ必要があります。 今回の合意では、来年中(2022年)に法改正や租税条約を策定し、合意内容の一部を除いて再来年(2023年)には実施することを目標としています。
そのうえで、日本への影響について、「税収もプラスになる面が大きいと考えてよいのではないか。企業の視点から見ても、グローバル企業との間で競争条件が公平になることにつながり、日本企業にとってプラスの面が大きい」と指摘しています。
バイデン大統領は、各国に法人税の引き下げ競争をやめるよう訴えるとともに、自国でも法人税率を引き上げて大規模な経済対策の財源にあてる計画を打ち出しましたが、野党・共和党などの反対に直面していて、その行方が注目されています。
国際課税のルールづくりをめぐっては、ことし発足したアメリカのバイデン政権が前政権の消極的な姿勢を転換したことが合意に向けた転機となり、イエレン財務長官が法人税の引き下げ競争を止めるため、各国に対して最低税率の導入を働きかけていました。
声明では「国際的な課税システムをより公正にするための大きな一歩だ。大企業に適正な税の支払いを求めることは、財政だけでなく、基本的な公正さの問題だ」と意義を強調したうえで、「合意は履行されることが必要だ。EUが一丸となって前に進むよう、われわれは加盟国と密に連携していく」としています。
ただ、ハンガリーが提案した10年間の移行期間などが認められたとして、「現在の法人税率9%は変わらない。交渉は成功し、ハンガリーが勝利した」としています。
最低税率の合意内容と影響は…
グローバル企業への課税は…
今後のスケジュールは…
鈴木財務相コメント「高く評価」
専門家「合意は日本にとってはプラスに」
米バイデン大統領「働く世帯に恩恵」
米 イエレン財務長官「一世一代の快挙」
OECD事務総長「大勝利だ」
欧州委員長「より公正にするための大きな一歩」
ハンガリー財務相「現在の法人税率の9%は変わらない」
フェイスブック「より多くの税払う可能性
アマゾン「今回の進展を支持」